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しが水環境ビジネス推進フォーラム

琵琶湖周辺に集積する知識・技術・ノウハウ

琵琶湖周辺には、水環境ビジネスに取り組む企業や水環境保全に関する研究を進める大学等研究機関が集積しています。

また、企業の中には、行政や他の企業との連携を通じて、新たな技術やサービスを共同開発し、さらなるビジネスの展開・飛躍を進めているところもいくつかみられます。

目次

1.水環境ビジネスにつながる技術・サービスの共同開発例

リン、フッ素等の高性能吸着材を産学官で共同開発(髙橋金属((株))

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■ エコリッジ

  • 髙橋金属((株)では、(公財)滋賀県産業支援プラザが中核機関を担った国の研究開発プロジェクト※の一環として、排水中のリンやフッ素、硝酸などを高効率に吸着除去し、再資源化できる鉄を主原料とした多孔質素材「エコリッジ」を、京都大学や滋賀県との共同研究を通じて開発しました。
  • プロジェクト終了後も、企業が独自にプラントなど吸着システムを研究・開発し、販売等を進めています。

※「環境調和型産業システム構築のための基盤技術の開発」((独法)科学技術振興機構・地域結集型共同研究事業。実施年度:2003〜2007)

湖南省研修生受入を機に、国際化を独自に展開((株)日吉)

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■ 外国人の技術者研修

  • (株)日吉では、滋賀県が湖南省との姉妹都市締結後、同省からの技術研修生の受入を開始した1982年当初より、研修の受入先として、琵琶湖富栄養化問題の水質測定技術や排水処理対策など実践的な技術研修を実施してきました。その後も、「環境問題に国境は無い」の方針のもと環境エキスパートの育成に向け海外研修生を積極的に受け入れ、これまでに世界19カ国から総勢200名以上の研修生を受け入れてきました。
  • 現在では、研修生の受入に止まらず、現地での分析検査技術や環境保全の指導や環境セミナーやスピーチコンテストの実施、2010年にはインドにHiyoshi Indiaを設立。更に海外の大学との産学連携を行うなど、海外における事業活動の拠点づくりを進めています。

県の依頼により水の透明度の測定機器を開発し、水環境ビジネスに進出(オプテックス(株))

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■ 開発当時の透明度自動測定の様子。測定された結果が、県庁前で掲示された。

  • オプテックス(株)は、滋賀県からの依頼を受けて、1996年に世界初の「透明度自動測定システム」を開発したのをきっかけに、水環境ビジネスに新規参入しました。
  • 現在は、この技術を応用し、液体の色や濁りを正確に連続測定し、水環境の安全を監視する様々なセンサを開発・製造・販売しています。

2.企業および大学等研究機関の集積

  • 滋賀県内には、100社以上の水環境ビジネスを展開している企業が集積しています。また、水環境ビジネスをはじめとする環境関連の研究を実施している大学等研究機関は、6大学(計7ヶ所)、5つの公設試験研究機関等(計6ヶ所)と、計11機関(計13ヶ所)があります。(図表7)
  • 研究者中には、国プロジェクトで海外交流を展開する研究者や、研究フィールドとして海外を含む研究者もおられます。
滋賀県内で水環境ビジネスを展開してる企業

【海外を研究フィールドとした国プロジェクトの一例】

「リスク評価に基づくアジア型統合的流域管理のための研究教育拠点」JSPSアジア研究教育拠点事業(2011〜2016) 清水芳久教授(京都大学大学院工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター)

  • 海外拠点:マレーシア
  • アジアの気候特性、生活形態、文化などに重点をおいて、流域における課題を洗い出し、水文、水質、有害化学物質リスクおよびガバナンスをめぐる評価方法・知識ベースを構築するとともに、地球温暖化に伴う異常気象にも耐えうる衛生的流域環境の実現を目指す。

「アジアのメガシティの人間安全保障工学拠点」JSPSグローバルCOEプログラム(2008〜) 松岡譲教授(京都大学工学研究科)

  • 海外拠点:中国(深圳)・ベトナム(ハノイ)その他に連携拠点6ヵ所
  • アジア・メガシティを対象に、市民の生活を、非衛生・不健康・災害・環境破壊などの脅威から解放し、各人が尊厳ある生命を快適に全うできる都市群のデザイン・管理に関する技術の体系を構築することである。さらにそれらの教育・研究する拠点群の整備を行い、次世代研究者及び高度な実務者の育成を行う。

バングラデシュにおける砒素汚染等の現地調査・研究 中島淳教授(立命館大学)

  • 海外拠点:バングラデシュ
  • 現地NPOと協力し、地下水の砒素汚染の機構解明と持続可能な水供給システムについて現地調査や研究を実施。
滋賀県における水環境ビジネスに取り組む企業および大学等研究者の集積

コラム:水環境ビジネスを取り組む企業が集積している理由

滋賀県内には、膜処理や管更生の研究開発拠点や、水質分析等を行うサービス企業、その他独自の手法で水環境ビジネスに取り組む中小企業が集積しています。それらが集積した経緯や理由について、琵琶湖の水環境保全の取組に注力したキーパーソンや企業の人に聞いてみました。

繊維産業の集積が水処理技術の開発に寄与

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■ 小林泉
滋賀県琵琶湖環境部技監]富栄養化防止条例の施行当初(1980〜1982)に保健所環境公害課に在籍。水環境保全及び水質改善の最前線で業務に携わった。

水処理膜の企業が多いのは、繊維産業が集積していたことが理由の1つだったかもしれません。滋賀県は、麻・綿・ちりめんという3種の織物が集積する全国でも珍しい地域で、琵琶湖水や地下水などの豊富な水資源に恵まれ、それをもとに繊維産業が発展してきました。
また、繊維産業では、作業工程において、染色排水、精練排水、漂白排水など、さまざまな排水が生じるため、富栄養化防止条例への対応は困難を極めたようで、この対策として水処理技術の工夫・開発がより盛んになったのではないでしょうか。
実際、織物会社の中には、条例制定後より「琵琶湖の水を守らなればならない」という強い使命をもって熱心に水処理対策に取り組み、海外企業も含めて多くの視察を受け入れて、水処理対策のノウハウをご自身の失敗例とともに解説しているところもありました。

条例への対応が、水質分析等サービスの企業の集積・発展につながった

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■ 中村満氏
湖南・甲賀環境協会 顧問]湖南・甲賀環境協会の2代目代表を長らく務め(1990〜2012.6)、協会活動を牽引。現在、NPO法人びわこ環境理事長を務める。

富栄養化防止条例の制定後、企業や工場は、条例に対応するため工場排水の高度処理を導入するにあたり、まず自社の工場排水を分析するところから始まりました。全国で初めてで前例が無いことから、当時はどんな施設を設置し、どこまでの処理をすべきか、会員同士で施設をみせあって勉強したり、時には行政と企業が技術論を戦わせることもありました。現在も『びわ湖のために』という使命感のもと、各企業は自主規制を設け日々努力しております。このように、県内の企業や工場が法・条例や自主規制に対応する際に、水質分析やコンサルティング等サービスを行う企業は欠かせず、滋賀県で発展するようになったのではないでしょうか。
また、2000年にはNPOびわこ環境を設立しました。こちらは、湖南・甲賀環境協会の会員企業に永らく勤めた企業OBの集団で、企業で培った豊富な経験・知識を活用し、後世に継承していく目的で、同協会のバックアップに限らず、行政や企業、団体の指導・コンサルタントを行っています。

琵琶湖の水を日々眺める地域環境が、斬新な発想の水環境ビジネスの創出を後押ししている

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■ 青山章氏
(株)アオヤマエコシステム代表取締役

滋賀県の人は毎日、琵琶湖や琵琶湖に流れる川の水を見る機会があります。そのため、水に対する意識が高く、少しでも汚れているとすぐに気づいているように思います。他の地方の人とお話ししていると、私たちのような発想はないように思います。 
そのため、滋賀県にはいろんな発想で、独自の水環境ビジネスに取り組む企業が集積しているのではないでしょうか。 
また、官民連携で水環境ビジネスを取り組む際にも、滋賀県での「水に対する高い意識」と、技術やサービスをセットにして売り込むことができると、面白いビジネスモデルができるように思います。

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商工観光労働部 商工政策課
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