認知症は「病気」です ~正しい診断と適切な治療が必要です~

認知症は病気です。‘年だから仕方がない’と放っておくのは、大変な誤りです。ここ十数年における認知症についての基礎研究や臨床研究の成果はめざましいものがあり、診断法も治療法も確実に進歩しています。不治の病と思われていた認知症も、いまや‘コントロール可能な病気’になりつつあります。しかし、認知症を良好な状態にコントロールするためには、的確な診断と定期的な管理が欠かせません。

1. 二次性の認知症は見逃されています~その認知症は治ります~

認知症のなかには、他の疾患によって起る二次性の認知症(いわゆる‘治る認知症’)が含まれています。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症といった外科的治療によって治る認知症のほかに、甲状腺機能低下症などのホルモン異常、脚気や悪性貧血などのビタミン不足や栄養バランスの異常、慢性後天性肝脳変性症、などの内科的疾患はしばしば見逃されている可能性があります。けいれん発作のない‘てんかん’がもの忘れの原因になっている場合もあります。うつ病などの精神疾患が認知症に似た症状を呈することはよく知られています。薬物が認知症の原因になることも決して稀ではありません。こうした病気は早期に適切な処置をすれば完全に治ることも期待されます。


せん妄という一時的な意識の変容も認知症と誤られることがありますが、これも適切な処置で回復します。さらに、脳卒中で起った失語症が誤って認知症と診断されている場合もあります。

2. 一次性の認知症でも身体疾患を見逃さないことが重要です

アルツハイマー病に代表される一次性認知症の患者さんの場合でも、合併する身体疾患を見逃さないことが重要です。特に二次性の認知症を引き起こす1で述べたような疾患は、一次性認知症の症状を悪化させる要因になっていることが多いのです。認知症患者さんは身体の異常を自分からはっきりと訴えることが少ないため、認知症の悪化が合併症のためであることに気付かれず、適切な治療を施されていないことがしばしばあります。

3. 一次性の認知症でも、薬物療法が有用です

以前は一次性の認知症には有効な薬物療法がないと思われていました。一次性の認知症が‘治らない認知症’と呼ばれていたのはこのためです。しかし、最近は一次性認知症でも正しい対応を行ったうえで適切な薬剤を使用することによって、かなり良い状態を維持できることが多くなりました。ただし、効果のある薬剤は副作用もある場合が多く、どのような薬をどのくらい用いるかは、専門医の判断が必要です。

4. 一次性の認知症にも種類があり、対応はそれぞれ異なります

一次性の認知症にも様々な疾患があります。疾患の種類によって、治療法や対応法が異なることは意外と知られていません。アルツハイマー病ではない他のタイプの認知症がアルツハイマー病と誤診され、間違った対応を受けている場合は決して少なくありません。一次性認知症の種類を正しく診断するために、一度は専門的な施設で診察や検査を受けることをお勧めします。

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