遺伝子診療センター

センター概要

 当院では、高度医療センターの一部門として、令和元年10月に遺伝子診療センターを開設しました。当センターでは各診療科や部門と連携し、遺伝子に関する検査や認定遺伝カウンセラーによるカウンセリングを行っています。

はじめに

遺伝子はヒトの体を構成している細胞すべてに存在しています。遺伝子はDNAと呼ばれるA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4つの化合物(塩基)が並んだ物質で、いわば体を作る設計図のような情報といえます。この4つの化合物の配列(並び方)の違いがヒトの特徴や体質の違いを生み出しています。近年、この遺伝子の情報を調べることが可能になり、診療に用いられるようになりました。遺伝子検査や検査結果の解釈、その後の対応などについては、専門的知識を有する様々な診療科や検査部門などの連携が不可欠であり、当センターでは多数の専門的スタッフの連携の元、カウンセリングや遺伝子検査、その後の診療を行っています。遺伝子診療には悪性腫瘍(がん)と先天的な神経・筋疾患、先天性難聴良性疾患などが含まれます。現在、当院ではがん診療に関する遺伝子診療のみを行っています。
がん診療で行われる遺伝子検査には2種類のタイプがあり、目的が異なりますので区別することが必要です。

1.がん細胞で生じている遺伝子変異を調べる検査(体細胞遺伝子検査)
ヒトの遺伝子が環境や加齢により変異を起こし、それによって遺伝子の配列(設計図)を基に作られるタンパク質が正常に機能しなくなることで、「がん」が生じると考えられています。このようながん細胞に起こっている変異の中には有効な治療薬が見つかっているものもあり、治療薬の適応を決めるために行われることもあります。

2.生まれつき持っている遺伝子変異を調べる検査(遺伝学的検査)
生まれつき持っている遺伝子配列の違いは、身体的特徴や体質の違いを生み出すほか、病気のなりやすさにつながるものもあります。ヒトは1つの受精卵が分裂を繰り返し、すべての細胞が同じ遺伝子配列(遺伝情報)を持っています。遺伝学的検査の目的は、がんの発症リスクに関わる遺伝子変異をもっているかどうか調べることです。遺伝学的検査は採血を行ってリンパ球と呼ばれる細胞を用います。この遺伝学的検査の結果はご本人だけでなく、ご家族にも影響する可能性があります。当院ではこの検査を受けて頂く前に、遺伝カウンセリングを受けて頂きます。 

遺伝子診療センターでの診療

1.がん遺伝子パネル検査(がん遺伝子プロファイリング検査)

がん遺伝子検査について

肺がん、大腸がん、乳がんなど、一部のがんでは必要に応じてがん遺伝子検査を行い、1つまたはいくつかの遺伝子を調べ、その検査結果をもとに薬を選択しています。例えば、乳がんではHER2遺伝子陽性患者さんにトラスツズマブを投与したり、肺がんでEGFR遺伝子変異陽性患者さんにゲフィチニブやエルロチニブを投与したりしています。しかし、今までの遺伝子検査では一つあるいは数個の遺伝子変異を調べることしかできませんでした。それが、近年では次世代シーケンサーと呼ばれる検査装置を使用して、同時に多数の遺伝子を同時に調べることが可能となり、これをがん遺伝子パネル検査(がん遺伝子プロファイリング検査)といいます。

がん遺伝子パネル検査(がん遺伝子プロファイリング検査)について

この検査では、がん組織中のがん細胞に生じた100種類以上の遺伝子変異を同時に調べます。がんは細胞中の遺伝子の変異によって引き起こされる病気ですが、同じ臓器に発生したがんでも、がん細胞に生じている遺伝子の異常は患者さんごとに異なります。また、これらの遺伝子の異常の一部は治療薬の効果にも影響することがわかっています。このがんに関連する遺伝子変異を調べることで、有効な治療薬がみつかることや、特定の遺伝子変異を持つ患者さんを対象とした治験や臨床試験に参加できるようになる可能性があります。ただし、これまでの研究データでは、治療に有効な遺伝子変異がみつかる可能性は10%程度と報告されています。

2019年4月1日より、当院は「がんゲノム医療中核拠点病院」と連携する「がんゲノム医療連携病院」に認められました。また、2019年6月より、がん組織の遺伝子(がんゲノム)の変異を調べて効果が期待できる薬の選択につなげることを目的とした「がん遺伝子パネル検査」が保険承認されました。がんができた「臓器」ではなくがんに生じた「遺伝子変異」を調べることで治療を選択するため、たとえば、肺がんに対して使用される薬剤が大腸がんに対して有効であるという結果になることも想定されます。今後のがん診療に大きな影響を与える検査手法でありますが、現状では以下に記した制約がありますのでご自身の病状に合わせて慎重にご判断いただく必要があります。

・保険診療でこの検査を受けられるのは、(1)局所進行もしくは転移があり、標準治療が終了した(終了見込みを含む)固形がん*の方、(2)原発不明がん**の方、(3)標準的な治療が確立されていない希少がん***の方で、薬物療法を希望する場合です。さらに、全身状態や臓器の機能が保たれていて、薬物療法が実施可能と医師が判断した方に限られます。

*固形がん:血液腫瘍(白血病などの血液がんや悪性リンパ腫など)以外で、臓器や組織などで塊をつくるがんの総称

**原発不明がん:がんの転移病巣がみつかり、もともとのがん発生臓器がわからないがん

***希少がん:かかる患者数が少ないまれながん

これまでに保険承認されている抗がん薬などによる治療薬の選択肢が残っている場合はこのがん遺伝子パネル検査の対象とはなりませんのでご留意ください。

・切除不能で転移や再発をきたした進行がんを対象とした検査なので、手術が可能なステージ(病期)の患者さんは対象となりません。ほとんどの臓器のがんで、ステージ4のがん疾患が対象となります。

・本検査は治療に有用な遺伝子変異が見つかる可能性は約10%、さらに遺伝子変異が見つかっても治療薬が使えないことが少なくないため実際に治療薬を投与できる可能性は1~数%と低い状況です。

・本検査でその臓器のがんに対しては保険承認されていない治療薬が見つかりその薬の投与を受けることになった場合は、その治療費は保険適用外となり全額自己負担(10割負担)となります。また一定額以上の医療費の自己負担が免除される高額療養費制度の対象ともなりません。このため、治療薬により費用は異なりますが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を全額自己負担で使用する場合、治療薬の費用は月額10~100万円程度になることがありますので御注意ください。

当院で実施しているがん遺伝子パネル検査

OncoGuide NCCオンコパネル

 がんに関連した114種類の遺伝子の変異を、がん組織と血液で調べます。

・FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル

 がんに関連した324種類の遺伝子の変異を調べます。がん組織の検査のみで、血液検査はありません。

当院のがんゲノム医療の診療体制

この検査はどこでもうけられるわけではなく、「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」「がんゲノム医療連携病院」でしか実施できません。当院は「がんゲノム医療中核拠点病院」である京都大学医学部附属病院と連携している「がんゲノム医療連携病院」であり、実施可能な施設の一つです。

当院では高度医療センターの一部門として令和元年10月に遺伝子診療センターを開設しました。本センターでは、各診療科や診療部門と連携し、医師・看護師・薬剤師・検査技師・がん相談支援員・事務担当者・医療情報担当者など、多くの職種がチームで対応いたします。

 

がんゲノムパネル検査について詳しいことを知りたい方は「がん遺伝子パネル検査リーフレット」やがんゲノム情報管理センター(C-CAT)ホームページ、国立がん研究センターがん情報サービスをご覧ください。

C-CAT ホームページのURLリンク

https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/

がん情報サービスのURLリンク

https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/index.html

検査の流れ

1,検査の説明:検査について詳しい説明を聞いてみたいと思われたら、主治医とご相談の上、がん相談支援センターで説明を受けて頂きます。

2,検査の同意:1の説明を受けた上で検査を希望される方は、がんゲノム外来または主治医からさらに詳しい説明を受けた後、検査について同意をいただきます。

3,検査に用いるがん組織の準備:手術や生検などでがんと診断された組織がある場合はそれを利用します。保存されている組織が検査に不適(組織が小さすぎる・がん細胞が少なすぎる・3年以上前に採取されたなど)の場合には、新たにがん組織の採取が必要になります。

4,検査の実施:検査会社にがん組織(検査によってはがん組織と血液)を送ります。この子の時点で費用として80,000円(3割負担の場合24,000)がかかります。

5,専門家会議:検査会社から帰ってきた結果を、がんゲノム医療の多職種で構成される専門家会議(エキスパートパネル)で検討します。専門家会議は中核拠点病院や他院を含む連携病院が参加し、遺伝子変異の解釈や適切な治療薬の有無・適応の可能性を議論します。

6,レポート作成:専門家会議で検討した内容から、中核拠点病院がこの検査の結果や今後の治療などについて、まとめのレポートを作成します。

7,結果説明:作成されたレポートに沿って、担当医から患者さんに検査の結果を説明します。結果説明時に費用として480,000円(3割負担の場合144,000円)がかかります。検査の結果、治療に結びつく遺伝子変異が見つからなかった場合でも、検査費用はお戻しできません。検査から結果説明までには約2ヶ月程度かかります。検査の混雑状況などによってはさらに時間を要することがあります。

8、治療:治療に結びつく遺伝子変異が見つかった場合、治験や臨床試験に参加できるかどうかを調べます。参加できる可能性は高くはありません。保険で承認されていない治療薬が見つかり、治験や臨床試験に参加できない場合は全額自己負担となります。高額療養費制度の対象にもなりませんので、治療薬の費用は10万円~100万円程度になることがあります。

さいごに

がんゲノムパネル検査は保険診療として行えるようになり、当院でも検査可能です。ただし、検査後に治療にたどり着く患者さんは多くはなく、その後の治療も自費で行うとなると高額です。がんゲノム医療はまだまだ課題もありますが、患者さんやご家族に寄り添ってサポートしていきます。

お問い合わせ先

当院におかかりでない方でもご相談いただけます。電話やメールでも

ご相談いただけますが、来院されて相談いただくことをお勧めします。

その際には相談申込書をご利用下さい。

滋賀県立総合病院がん相談支援センター

077-582-8141(電話)

077-582-5073(FAX)

gansoudan@mdc.med.shiga-pref.jp(メール)

2.遺伝性腫瘍に関する検査(遺伝学的検査)

腫瘍の中には、親から受け継いだ遺伝子変異によっておこるものがあることがわかってきました。遺伝性腫瘍のほとんどは、がん抑制遺伝子の異常が原因です。がん抑制遺伝子は、体の細胞ががんになるのを防ぐ(抑制する)機能を持っていますが、父親から受け継いだものと母親からうけついだものと、合わせて2個入っています。2個のうちの1個に変異があるとがんになりやすいのです。
遺伝性腫瘍の原因となる遺伝子変異を親から引き継いでいるかどうかは、外見ではわかりませんので、血液を採取して検査(遺伝学的検査)を行います。遺伝子変異を引き継いでいる場合、がんにかかりやすいというだけではなく、多発がん(同じ臓器に複数回、新しくできるがん)や重複がん(異なる臓器にできるがん)が起こることがあります。また、通常よりも若い年齢でがんにかかることもしばしばです。遺伝性腫瘍のなかには、がんが発症する前に予防的に行う処置や、早期発見のための有効な検診方法が確立されているものがあります。したがって、遺伝性腫瘍が疑われる場合には、検査を受けることによって有効な対策を講じることができる可能性があります。なお、この検査を受ける前には遺伝カウンセリングを必ず受けて頂きます。

3.遺伝カウンセリング

遺伝性の病気は、染色体や遺伝子といったヒトの身体を作る設計図の生まれつきの異常(変異)が原因となり起こるものです。この情報は、一生変わらない情報であるとともに家族と共有する情報であるため、人生の様々な場面で不安や悩みが出てくることがあります。遺伝カウンセリングでは、“遺伝”について、不安や悩みを抱えている患者さんやご家族の方などに対し、遺伝カウンセラーという専門家がひとりひとりの問題を理解・判断し、必要な情報提供を行います。その上で、それぞれの検査や検査結果の解釈について説明し、最適な治療や予防などの選択ができるよう、医療面・心理面の両側面からサポートしていきます
受診は完全予約制ですので事前にご予約をお願いします。

予約方法

当院に通院中の患者さん

外来受診の際に、主治医にご相談下さい

当院に通院されていない患者さん

患者さんからの直接の予約は受け付けていません。現在、受診している施設の主治医または地域医療連携室に予約を依頼して下さい。予約依頼FAX用紙は以下よりダウンロードできます。

遺伝カウンセリング料

遺伝カウンセリングは保険診療と保険外診療とで料金が異なります。保険診療の場合10,000円(3割負担で3,000円)です。保険外診療での料金は下記の通りです。

 

遺伝カウンセリング料(保険外診療の場合)
初回 1時間以内の場合 1回あたり 6,330円
初回 1時間を超える場合 1回あたり 6,330円に30分または30分に満たない端数を増すごとに2,170円を加えた額
2回目以降 30分以内の場合 1回あたり 2,170円
2回目以降 30分を超える場合 1回あたり 2,170円に30分または30分に満たない端数を増すごとに2,170円を加えた額

医療関係者の方へ

  • 貴院の患者さんが遺伝カウンセリングを希望されましたら、予約依頼FAX用紙(上部よりダウンロード可能)を用いてご予約をお願い致します。
  • 受診される際には、診療情報提供書もご用意下さい。
  • 貴院にてすでに遺伝学的検査を受けられている場合には、検査結果報告書のコピーもご用意下さい。

相談窓口

がん相談支援センター

077-582-8141(電話)

077-582-5073(FAX)

gansoudan@mdc.med.shiga-pref.jp(メール)

※相談内容が相談員以外に伝わることはありません。ご安心ください。

※ご予約が無い場合でも対応可能ですが予約優先といたします。ご了承ください。

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