滋賀が誇る豊かな歴史・文化的価値を未来へ継承していこうと県・琵琶湖文化館が開催している連続文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回が6月17日、開催された。
本年度2回目となるこの日は「『八景』とその絵画」をテーマに、琵琶湖文化館の萬年香奈子氏が講演し、大津市の「コラボしが21」に約130人が集まり熱心に聴講した。
本講義では、中国の「瀟湘八景」の成立と日本への受容をたどり、近江八景や日本各地のご当地八景への展開、さらに絵画や工芸品への影響を通して、「近江八景」が『憧れの風景』として広く普及した理由を学ぶ。
長谷川等伯筆 瀟湘八景図屏風 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵
出典:ColBase(httpscolbase.nich.go.jp)
元祖八景は北宋の画家・宋迪が12世紀頃に確立したと伝わる「瀟湘八景」。
舞台は中国にある洞庭湖と瀟水・湘江周辺であり、世界で初めて生まれた八景と言える。
八景の内訳は山市晴嵐・漁村夕照・瀟湘夜雨・遠浦帰帆・煙寺晩鐘・洞庭秋月・平沙落雁・江天暮雪。
鎌倉期以降、幽玄で曖昧な要素を持つこれらの景物が禅思想と親和することから、禅宗の広まりとともに瀟湘八景が流行した。
室町期には、教養と権威の象徴として、時の権力者の邸宅の障壁画に採用され、東山御物※に代表されるコレクションに瀟湘八景を描く絵画作品が収蔵された。(※東山御物(ひがしやまごもつ)とは、足利義政を中心に室町将軍家によって収集された美術工芸品)
江戸期には、旅行文化・出版流通の発展と相まって、近江八景のような各地域の風景を選定したご当地八景が日本各地に増加した。
近江八景の成立は、安土桃山時代(江戸初期)。能書家としても知られる公家・近衛信尹が選定したのが始まりと考えられている。※諸説あり
近江八景の特徴
この2つの特徴は、一見全く異なるようにみえるが、「憧れの風景」というキーワードで結びつく。かつての人々にとって、近江の風景は憧れの瀟湘八景によく似た美しいものだった。さらに近江のすばらしい風景をいつも身近に置いておきたいという強い願いが、多様な美術作品を生み出す原動力となった。このような理由で、近江八景は必然的に誕生し、さらには多種多様な形に表されていったと講師は考える。
吉田元陳筆 近江八景図屏風 江戸時代・18世紀 滋賀県立琵琶湖文館
「花湖さんの打出のコヅチ」の開催は今年度は全8回、第3回目となる講座『昭和100年の書画』は7月15日、琵琶湖文化館の寺前公基氏を講師として開催される。
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