長浜市に本社を置く滋賀中央交通株式会社は、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を中心に、地域の移動を支える交通事業者です。長浜市・米原市を営業エリアとし、通院や買い物、観光など地域住民や来訪者の移動を支えてきました。
また、令和7年には一般貸切旅客自動車運送事業を開始し、貸切バス事業にも参入。学校行事や社員旅行、婚礼送迎など幅広いニーズに応えています。
今回は、同社の代表取締役である山下朋子さんに、交通・観光の仕事を志したきっかけや、コロナ禍での経営、湖北地域への思いについてお話を伺いました。
現在のお仕事を始められたきっかけと、代表取締役に御就任されるまでの経緯を教えてください。
私の実家は、長浜市内の真言宗の寺院でしたが、父は寺院の運営だけでなく、レンタカー事業や旅行業、貸切バス事業なども手掛けていました。私にとっては、お寺もバス会社も同じ「家業」で、どちらかを選ぶというより、自分が継いでいくものだと思って育ちました。
大学時代に京都の旅館でアルバイトをした際、修学旅行生や観光客の皆さんが旅を楽しむ姿を見て、交通や観光を通じて人と地域をつなぐ仕事に魅力を感じるようになりました。
卒業後は父の会社である滋賀中央観光バスに入り、バス事業や旅行業をはじめ、さまざまな事業に携わりながら経験を積みました。その後、長浜市内で営業していたタクシー会社の事業を引き継ぐことになり、令和2年に「滋賀中央交通株式会社」を立ち上げました。
会社名も自分の思いを込めて新たに付けた名前です。そして、その立ち上げと同時に代表取締役へ就任し、現在に至っています。
代表取締役に御就任されてからはどんな状況だったのでしょうか。
令和2年4月に代表取締役へ就任してすぐ、新型コロナウイルス感染症が拡大しました。観光も移動も制限され、交通事業者にとっては非常に厳しい状況でした。
ただ、今振り返ると、代表取締役になった直後だったからこそ乗り越えられた部分もあったと思っています。私は会社の好調な時期を経営者として経験していませんでしたので、「以前はこうだった」という固定観念がありませんでした。だからこそ、その時その時にできることを一つずつ積み重ねるしかありませんでした。
何より支えてくれたのは、社員やドライバーの皆さんです。仕事が減る中でも会社に残り、お客様のために走り続けてくれました。また、地域のお客様も利用を続けてくださいました。
私が会社を支えたというより、多くの方に支えていただいたから今があると感じています。
経営者として大切にしていることを教えてください。
経営の軸としているのは「人」と「安全・安心」です。
私たちは物を売る仕事ではありません。例えば家電製品であれば、お金を払えば手元に商品が残ります。しかし、タクシーやバスは移動というサービスを提供する仕事です。
一方で、私自身は全てのお客様に直接お会いすることはできません。最後にお客様と接するのはドライバーです。だからこそ、ドライバーを「最後の営業マン」だと考え、車両点検や健康管理、点呼などを徹底し、ドライバー自身が余裕を持った安全な運行を続けられること、それによってお客様に安心して利用していただける環境を整えること、それが私たちの一番大切な使命だと思っています。
湖北地域の観光や交通について、どのような課題を感じていますか。
湖北地域には、歴史や文化、食など魅力的な観光資源が数多くあります。
観光施設や事業者の皆さんも、それぞれの魅力を高めるために努力されており、地域の磨き上げは着実に進んでいると感じています。
一方で、交通事業者として私が課題だと感じているのは、「どうやってそこに行くのか」という部分です。
観光地の魅力は発信されていても、それらを結ぶ二次交通が十分とは言えません。せっかく湖北を訪れてくださっても、移動手段が分からず諦めてしまう方もおられます。
そこで、今年のゴールデンウイークには少しでも地域を周遊しやすくなるよう、ジャンボタクシーを活用したシャトル運行を実施しました。やはり湖北の魅力をより多くの方に楽しんでいただくためには、観光資源と交通を結びつける仕組みづくりが必要だと感じています。
今後の目標を教えてください。
私が貸切バス事業を始める際に決めたことがあります。それは「地元優先」です。
これまで支えてくださった地域の皆さんへの感謝を忘れず、まずは地元のお客様を大切にしたいと思っています。
そして今後は、単なる交通事業者ではなく、地域と観光客をつなぐ存在になりたいと考えています。
「どこへ行けばいいですか」「こんなことをしたいのですが」と相談していただければ、交通だけでなく地域の魅力も含めて案内できるような存在になりたいですね。
「何かあったら滋賀中央交通に聞いてみよう」
そう思っていただける、地域に根差した交通事業者であり続けたいと思っています。