ゴールデンウィークが終わり、県内各地の田んぼで田植えがひと段落すると、夜の滋賀に初夏の訪れを告げる「カエルの合唱」が響き始めます。
田んぼに水が張られるこの時期、あちこちから聞こえる大合唱は、滋賀県民にとって“夏の始まり”を感じさせるおなじみの風景ではないでしょうか。静かな夜道に広がるにぎやかな鳴き声は、どこか懐かしく、滋賀の原風景そのものとも言えます。
今回は、そんな「カエルの合唱」にちなみ、滋賀に残るカエル文化や意外な豆知識など、“カエルにまつわる滋賀のアレコレ”をご紹介します。
「アマガエル」「トノサマガエル」「ウシガエル」など、名前は聞いたことがあっても、実は滋賀県内に16種類ものカエルが生息していることをご存じでしょうか。
かくいうレポーターの私も、今回調べるまで「ウシガエル」と「ヒキガエル」は呼び方が違うだけで同じものだと思っていました……。
2012年の「琵琶博だより」では、滋賀県に生息するカエルたちが写真付きで分かりやすく紹介されています。一見の価値ありです。
琵琶博だより
さらに、「毎晩聞こえてくるあの鳴き声の正体は誰なんだ!?」という方には、兵庫県立人と自然の博物館が提供する「日本のカエルの鳴き声図鑑」がおすすめ。滋賀県にも生息する多くのカエルの鳴き声を聞くことができます。
顔も声も分かれば、あの騒音……もとい“大合唱”も、少し違った気持ちで楽しめるかもしれません。
実は、「オタマジャクシ」の名前の由来は、カエルではなく、ご飯をすくう「お玉杓子」にあります。
奈良時代、多賀大社の縁起物である「お多賀杓子(おたがしゃくし)」が病気平癒のお守りとして全国に広まり、「お玉じゃくし」という呼び名になったとも言われています。そして、カエルの子どもがその形に似ていたことから、「オタマジャクシ」と呼ばれるようになったそうです。
この話をもっと詳しく知りたい方は、滋賀県文化財保護協会の「ヨミモノ
シガブンシンブン」がおすすめ。1300年前の話に、毎日使う“しゃもじ”を重ねながら読むと、少し見え方が変わるかもしれません。
「難しい話はちょっと苦手……」という方には、多賀町観光協会による紙芝居もおすすめです。1分ほどの音声で、とても分かりやすく紹介されています。なんとも言えないオタマジャクシのイラストにも注目です。
実は滋賀県は、日本における食用ガエル養殖の先進県の一つでした。
大正時代、アメリカから導入されたウシガエルが滋賀県水産試験場へ配布され、琵琶湖を活用した養殖や自然繁殖の研究が進められていました。
さらに昭和3年には、県内で「食用蛙試食デー」も開催。当時のメニューはかなり本格的で、フロッグスープ、フロッグフライ、フロッグライス、フレッシュフロッグサラダなどが振る舞われたそうです。
参加者は876人、使用されたウシガエルは266kgという記録も残っています。
ちなみに、「フレッシュ」が“フロッグ”にかかるのか、“サラダ”にかかるのかは非常に気になるところですが……。
農業の副業としても本気で検討された「養蛙(ようあ)」ですが、カエルは生きた虫を好んで食べるためエサの確保が難しかったこと、日本では魚や鶏肉など他に豊富な食材があったこと、そして何より“カエルを食べる”ことへの抵抗感も大きく、普及は限定的だったようです。
今から考えれば「そりゃそうか」と思ってしまいますが、新しいことに挑戦しようとした当時の滋賀県人のチャレンジ精神には学ぶものがありますね。
この食用ガエルの歴史について詳しく知りたい方は、滋賀県立公文書館が公開している当時の公文書をぜひご覧ください。なお、残念ながらフロッグ料理のレシピは掲載されていませんので、あしからず。
今回は、「カエル」にまつわる滋賀のアレコレをご紹介しました。
多忙でなかなか滋賀に“帰る(カエル)”ことができないオタマジャクシ……もとい、ご子息に、滋賀のことを思い出すきっかけとして、そっと今回の記事を送ってみてはいかがでしょうか。
もしかすると、懐かしい「カエルの合唱」を聞きに、ピョコっと帰ってくるかもしれません。