滋賀県大津市の玄関口・JR大津駅で、歴史のロマンを肌で感じる展示が始まっている。
2027年秋に開催される「滋賀デスティネーションキャンペーン(滋賀DC)」のプレキャンペーンの一環として、天台寺門宗総本山・三井寺(園城寺)が所蔵する国宝「智証大師円珍 関係文書典籍」の中から、世界最古の海外渡航証明書(パスポート)とされる「過所(かしょ)」のレプリカが展示されている。
これらの文書は、9世紀に唐へ渡った智証大師・円珍が、当時の中国・唐の官庁から発給されたものだ。
2023年5月には、日中の文化交流史を今に伝える極めて稀有な史料として、ユネスコの「世界の記憶(世界記憶遺産)」に国際登録された。
現存する「過所」の原本は、三井寺が所蔵する2通のみといわれ、保存状態の良さから「世界唯一の伝存例」として高く評価されている。
日本の平安時代前期に最澄(伝教大師)によって開創された天台宗の総本山比叡山延暦寺の僧・円珍が、当時の最高水準の仏法を学び、日本に伝えるために唐に渡航、留学した際に、唐の役所から発給されたものが通行許可書「過書」であり、この時期の唐では、大唐帝国とも称さるように東アジア全域をはじめ西欧世界にまで広範な影響を及ぼした巨大な帝国として君臨していた。
9世末期の滅亡期に多くの記録を失ったことから、影響を受けていた東アジア各国はもとより、日本の律令にとってもその原型といわれる唐律令の記録がことごとく失われてしまった。
その意味で、三井寺が所蔵する2通の「過所」は、世界に残された「世界最古のパスポート」として、世界的大帝国・唐と日本との文化交渉史上すこぶる貴重な史料とされている。
智証大師円珍関係文書典籍・ユネスコ「世界の記憶」登録
三井寺と東京国立博物館が所蔵する国宝56件からなり、日本仏教ことに天台学や密教の興隆に尽力した智証大師円珍(814~891年)が残した広範な分野にわたる史料群。9世紀に円珍が唐に留学したときの史料は、当時の日中両国にわたる文化交流を如実に物語るもので、なかには円珍が唐の役所から交付された通行許可書「過所」の原本も含まれており、唐の法制度を示す貴重な文書であるばかりか、良好な状態で伝えられた世界唯一の伝存例として知られている。