無病息災を祈願する県選択無形民俗文化財「守山の火まつり」が10日、守山市の住吉神社(浮気町)と勝部神社(勝部1丁目)の両社で執り行われた。
鎌倉時代から800年以上続く壮大な伝統行事を見守ろうと、境内には多くの市民や観光客が詰めかけ、激しく燃え上がる炎と、祭りの中心を担う褌姿の若者たちの熱気に包まれた。
火まつりの由来は鎌倉時代初期に遡る。時の土御門(つちみかど)天皇を苦しめた重病の原因が、近江国に棲む巨大な大蛇(竜)であるとわかり、これを退治したところ天皇の病がたちまち癒えたという伝説が起源とされる。切られた竜の「頭」が飛んできたとされるのが住吉神社、そして「胴体」が飛んできたとされるのが勝部神社。両社は今もその伝説・伝統を引き継ぎ、竜に見立てた大松明に火を放つことで無病息災と五穀豊穣を祈り続けている。
守山駅東側、住吉神社の境内はある種の緊張感に包まれていた。聞こえるのは真っ暗な仮屋の中からの「へーよ、へーよ」という男たちの掛け声と太鼓の音。これは天皇の病気が治ることを願う「平癒(へいゆ)」が転じたものだ。
若衆が仮屋の中でうごめき奉火を奪い合う。午後7時30分頃、一番火を手にした男性が勢いよく飛び出すと、竜の頭に見立てた2基の大松明に点火。2番火以降も続々と仮屋から飛び出し炎を移すと、暗闇を切り裂くように真っ赤な火柱が立ち上がり、参拝客からは大きな歓声が上がった。
守山駅西側の勝部神社でも祭りのクライマックス(松明奉火)を迎えた。長さ約5メートル、重さ400キロを超えるという巨大な松明が褌姿の若衆たちに担がれて次々と境内へ。12基が半円を描くように並べられ、午後9時頃に一斉に奉火され、冬の夜空を黄金色に染め上げた。
燃え盛る炎の前では、若衆が「おいさー」の掛け声で肩を組んだり担がれたりしながら踊った。勝部神社の若衆は「松明組」と呼ばれる中学1年生から34歳までの地元の若者たちで構成され、一年をかけて祭の準備から本番までを担う。
令和3年に松明組の組長を担った県職員の小島慎平さんは、掛け声の「おいさー」は、元々の語源は「御悩平癒(ごのうへいゆ)」からきたもので、今では「おいさー」という「祭りを盛り上げる勇ましい掛け声」になっていると紹介し、「800年以上続くこの火を絶やさないよう次世代に受け継いでいきたい」と話した。
勝部・住吉の火祭り(守山市)・・・
褌姿の若者たちが無病息災を祈願する守山の火まつり(勝部・住吉の火祭り)は、毎年1月の第二土曜日に行われる。滋賀県選択無形民俗文化財。
住吉神社:守山市浮気町152(駅から徒歩10分)
勝部神社:守山市勝部1丁目8-8(駅から徒歩5分)
問い合わせ:守山市観光物産協会・077-582-1266