滋賀県近江八幡市を拠点に活動したアメリカ出身の建築家、教育者、実業家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)。
ヴォーリズは1905年2月2日に近江八幡市に英語教師として赴任した。2025年は来日して120年となる。
このことから、ゆかりの企業や観光事業者、行政などが、ヴォーリズが嬉しい時や上手くいった時に発していた「バンザイなこっちゃ」を冠につけた『バンザイなこっちゃ!協議会』を組織し、記念事業に取り組んでいた。
来日して120年にあたる今年2月2日に基調講演(第一回シンポジウム)を皮切りに全6回の講演会を開催。12月7日には最終回となる総括講演が、ヴォーリズ学園(近江八幡市)平和礼拝堂で行われた。
講演では、同志社大学第35代学長の小原克博氏が登壇。
今年創立150周年を迎え、来日直後のヴォーリズを支えた同志社大学の建学の精神や、ヴォーリズが生涯を通じて追い求めた「共に生きる社会」に通じる利他主義や共生の思想について考察を述べた。また、同志社大学のカレッジソングの作詞がヴォーリズであることを紹介すると、会場からは「へぇーそうなんや」などの声が聞こえた。
続く対談では、小原氏と岡村遍導氏(観音正寺管長/国際ワイズメンズクラブ西日本区次期理事)が登壇。
宗教や教育といった異なる立場から、「愛と平和に満ちた共生社会」の実現のために、現代社会にヴォーリズの精神をどう活かしていくべきかで意見が交わされた。
岡村氏からは、近江八幡におけるヴォーリズの足跡とその影響力の大きさが語られ、特に1938年(寅年)にヴォーリズが描いたとされる作品を紹介。「絵に描かれた「大我」という言葉が仏教で『利他の精神』」だとし、「寅年とタイガーを掛け合わせた面白い方だったんだと想像します」と評し、参加者はヴォーリズの精神が今なお地域に根付いていることを再認識した。
また、協議会が実施した「ヴォーリズの足跡を訪ねる北米旅考(10月23日~29日)」と「韓国のヴォーリズ建築を巡る祈りの旅(11月11日~14日)」に関する報告も行われた。
総括講演会に参加していた三日月知事も最後に登壇し、「5年前のコロナ禍の闇の中にいた時に、どこかに光を求めたいと思いヴォーリズがなぜここ近江八幡で最後を迎えようと思ったのかということを探ろうとして勉強会を始めた」とヴォーリズゆかりの企業や関西みらい銀行、大同生命と勉強会を重ねていたことを紹介し、「こういう現在の時代ですから、愛と平和に満ちた共に生きる社会を一緒に築いていけたらいいなと思う」と挨拶した。
最後は「バンザイなこっちゃ!協議会」の森嶋篤雄会長が、「来年には(来日)121年となるが、ヴォーリズの『想い』を継承するため今後も活動を続けていく」とし、会場全体でバンザイ三唱で締めくくった。
2月2日「いま、なぜヴォーリズさんなの?」
― 内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)
4月26日「乙女建築なヴォーリズさん」
― 甲斐みのり氏(文筆家)
5月31日「世界の中心でヴォーリズサミット」
― 4つのミニ講演会
7月19日「ヴォーリズさんのびっくりポン!『国会議事堂のマスターキーって?』」
― 大門耕平氏(東北学院大学准教授)
9月20日「ヴォーリズさん、満喜子さんをドラマに!」
― 玉岡かおる氏(作家)
12月7日「愛と平和に満ちた共に生きる社会を目指して」
― 小原克博氏(同志社大学第35代学長)