滋賀県東北部工業技術センターはこのたび、自動車用プラスチックの1つである合わせガラスの中間膜(以下、「中間膜」)を再利用し、生活の質(QOL(※))向上に寄与する機能性材料を創出する新たなリサイクル技術の開発に成功しました。
この技術は、知る人ぞ知る素材である「中間膜」を対象とした世界初のマテリアルリサイクル手法であり、株式会社ガラステクノシナジー(大津市)・マスダ商事株式会社(野洲市)との10年以上にわたる共同研究により実現したものです。
今後は、紙おむつやマスク、ゴミ箱といった、臭いが気になる日用品への応用を念頭に、実証実験や製品化に向けた試作を進めてまいります。
(※)QOL(Quality of Life)とは、WHO(世界保健機関)が定義する「生活の質」を意味します。個人の生活における満足感や充実感の指標とされます。[出典:(公社)日本看護科学学会HP]
中間膜は、自動車のフロントガラスや建築用ガラスの間に挟み込まれ、ガラスの飛散防止や強度向上のために使用されるプラスチックフィルムで、国内では主に県内の大手メーカー工場で製造されています。これまで、製造工程で発生する端材の一部や、廃車に伴って発生する使用済み中間膜については、有効なマテリアルリサイクル技術がなく、その開発が強く求められていました。
介護施設や災害時の仮設トイレなど、臭いが問題となる場面での活用を想定し、香料入り市販消臭剤を機能性添加剤として使用した材料の効果検証を複数回実施しました。その結果、臭気の大幅な抑制が確認され、開発材料の高い性能が実証されました。詳細は別紙にてご参照いただけます。
香料、消臭剤、抗菌剤などの機能性添加剤はニーズに応じて自由に選定・組み合わせが可能です。これにより、介護・衛生・防災・住環境など多様な分野でQOL向上に資する新素材の展開が期待されます。
今後は、機能性添加剤や日用品を製造する企業の皆様と幅広く連携し、製品化や市場展開を図ってまいります。ご関心をお持ちの企業様からのご連絡を心よりお待ちしております。
現在、廃車に伴って発生する使用済み中間膜の多くは再利用されず、焼却や埋立によって処分されています。本開発技術は、中間膜を機能性材料としてマテリアルリサイクルする世界初の技術であり、自動車プラスチックリサイクルの新たな突破口となる可能性を秘めています。