滋賀県には約1300の城跡があり、安土城や彦根城といった巨大城郭から、小規模な城館や砦まで、バラエティに富んでいます。また、武士以外にも僧侶や百姓など、様々な人々が城を築いており、城は、滋賀の歴史や文化の特徴を色濃く反映した、滋賀ならではの歴史・文化遺産です。滋賀の城は、滋賀の魅力を伝える地域の宝として全国の人々から関心を寄せられており、多種多様な滋賀の城の魅力を広く発信していくことが求められています。
さて、近江の戦国時代は、江北の京極氏・浅井氏と江南の六角氏を軸に展開し、織田信長と近江の諸勢力との戦いである元亀争乱を経て終息に向かいます。この元亀争乱は、江北の戦国武将浅井長政が信長に離反したのに端を発し、浅井氏の滅亡をもって終結するなど、北近江での戦いが主要なものとなりますが、比叡山延暦寺や江南の一向一揆、さらには大坂本願寺や越前の朝倉氏・甲斐の武田氏など広く近江国内外の反信長勢力との戦いを繰り広げ、信長の生涯でもっとも苦しい時期です。また、元亀争乱を経る中で信長は、それまで天下静謐を目指すパートナーであった足利義昭と最終的にたもとを分かち、自らが天下人となる新たなステップへ進むことになります。そして元亀争乱終結後の4年後、天下人の居城である安土城築城を開始します。いわば、元亀争乱を経て天下人織田信長が誕生したといっても過言ではないでしょう。
この講座では、元亀争乱の中で、織田信長と足利義昭の関係がどのように変化し、最終的に織田信長が天下人となるのか、その過程をたどり、元亀争乱の歴史的意義について考えます。北近江の戦国史の魅力を首都圏で広く発信することで、滋賀県への来訪者の拡大を図ります。