撮影・提供:野中俊文氏
外来種のアリ「ヒアリ」が日本国内の各地で発見され、刺されると痛いとか、人が死ぬこともあるとの報道もあり、身近なところにもすでに侵入していないかと、気がかりになってきた方も少なくないと思われます。
アリという昆虫は、もともと、身近なところにもいろいろな種類がすんでいます。しかし、その小ささのためもあって、身近にいながらも、普段の生活ではあまり気づかれない生きものです。ヒアリのニュースが飛び込んできたことで、よく似た種類のアリやアリに似た生きものに気がついて、「ヒアリではないか」と心配されている方もおられることでしょう。
この「ヒアリ」というアリは、国内ではごく最近に見つかったばかりの外来種のアリで、海外からのコンテナにまぎれてやってきたものと考えられています。これまで国内では、アリ塚をつくるような大きな巣は発見されず、発見された場所は、海外からのコンテナを取り扱う場所やその近くが中心です。その意味で、今のところ、海外からのコンテナを扱う場所が近くにないかぎり、みなさんの身近なところで見つかったアリがヒアリである可能性はかなり低いと考えられます。
しかし、ヒアリは攻撃性が強く人に危害をおよぼす外来種ですので、私たちのまわりに広がらないようにする必要があり、できるだけ早く見つけ出して駆除することがとても大切です。
ヒアリは、目で見てすぐに見分けられるような特徴はありません。しかし、よく観察してみると、明らかにヒアリではないことがわかる場合もあります。気になるアリを見かけたら、「ヒアリかどうか、気になるアリを見かけたら」をご覧いただき、「ヒアリ判別チャート(暫定版)」で、確認をお願いします。
判別に自信がない場合には、アリを殺虫剤などで殺してからセロテープに貼り付けたり、手で触らないようにして小さな容器に入れたりして、実物を下記連絡先まで送付または持参いただくか、デジタル写真を電子メールで送信いただけますと、より正確にヒアリかどうか判定できる可能性があります。
※このほか、間違えやすい種として「アリグモ」がいます。アリは足が6本ですが、クモは足が8本です。
写真提供:草津市住民
判別チャートで「もしかしたらヒアリかも?」「おそらくヒアリ」に該当する場合は、下記連絡先へお知らせください。
殺虫剤や殺虫餌(ベイト剤)による無闇な駆除は在来のアリも駆逐するため、生態系に影響を与えることがあります。緊急時以外の殺虫駆除は極力控え、まずは下記連絡先までお知らせ願います。
20〜30分程度は安静にし、体調の変化がないか注意してください。
体質によっては、重度の症状となる場合があります。容体が急変したときは救急⾞を要請するなど、すぐに医療機関を受診してください。その際、「アリに刺されたこと」「アナフィラキシーの可能性があること」を伝え、すぐに治療してもらってください。
和名 | ヒアリまたはアカヒアリ(「火蟻」の意) |
---|---|
学名 | Solenopsis invicta |
英名 | 総称として「Fire Ant」、種を特定する場合には「Red Imported Fire Ant/RIFA」 |
分類 | 昆虫綱(昆虫ではなくクモの仲間のアリグモも、アリとよく間違われます。)ハチ目(アリはハチの仲間で、ヒアリのように腹の先端の針で刺す種類も多くいます。)アリ科(日本には250種以上います。)フタフシアリ亜科(胸と腹の間の細くなった腹柄という部分が2節あります。他のアリは1節のものが多いです。)トフシアリ属(触角が10節からなります。他の多くのアリでは11~12節、まれに10節のものも。) |
原産地と分布 | 南アメリカが原産で、アメリカ合衆国南部、オーストラリア東部、中国南部、台湾等に分布。 |
侵入・拡散経路 | 分布地から発送された国際コンテナの中に潜んで日本国内へやってくると考えられます。国際コンテナは国際港湾・空港から物流拠点・末端へと運ばれる可能性があります。 |
外見の特徴 | 群れている働きアリは体長2.5~6.5mmです。群れの中にいろいろな大きさのアリがいます。(他のアリには見られない特徴)体色は濃い赤茶色でツヤがあり、腹部の色は暗め。 |
生態 | 比較的乾いて開けた場所に巣を作ります。最初は小さな巣も、時間がたつと成長し、土が盛り上がったアリ塚を作るようになります。アリ塚の表面には巣穴がありません。新しい巣ができて何年か経つと、巣の中で多くの女王アリや雄アリが育ちます。女王アリや雄アリが羽アリとして飛び立ってしまうと、分布範囲が一気に拡大するおそれがあります。 |
被害 | 攻撃性が強く、人の腕や足に上って、刺激を与えると、腹の先端の毒のある針で何度も刺します。刺されると、火傷をしたような激しい痛みを感じ、場合によっては強いアレルギー症状を引き起こします。 |