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森林病虫獣害対策

森林病害虫等被害は、ナラ枯れやマツ枯れの昆虫、線虫、菌類が原因となる被害と、ニホンジカによる剥皮被害が大部分を占めています。
これらの森林病害虫等による被害が発生することで、森林の多面的機能が低下する恐れがあるため、被害が確認された場合は、そのまん延を防止するために諸対策を実施していきます。

ナラ枯れ

被害の現状

県内のナラ枯れ被害は福井県境付近で1980年前後から発生しており、1990年頃から県北部地域で目立つようになり、その後2010年をピークに減少し終息傾向にあります。

(表)
平成23年(2011年)8月撮影近江八幡市
被害状況遠景
被害状況近景

ナラ枯れの被害を受けてから3~4年間は景観上の問題がありますが、全てのナラ類が枯れることはなく、下層にある幼齢のナラ類や常緑樹が生長することによって、その後には終息に向かい森林の諸機能が大きく損なわれることはないと考えられています。

被害の推移

ナラ枯れ被害は終息傾向にありますが、県北部地域で被害が確認されており、今後も注視する必要があります。

ナラ枯れ被害量の推移

市町別の被害面積

ナラ枯れの原因とメカニズム

ナラ枯れは、病原菌による伝染病です。カシノナガキクイムシがナラやカシ類の樹木に穿入することにより、病原菌が樹体内に伝播され、樹木内では根から吸い上げた水の流動が止まり、感染木は水切れ症状を起こして、まもなく葉が変色し、枯損します。

(表)
枯死木から新成虫が飛び出す時期は、6月上~下旬に始まり、最盛期は7月ごろです。
ナラ枯れのメカニズム
(表)
雄成虫は繁殖に適した枯れていない樹木を見つけると穿入孔を掘り、同時に集合フェロモンという物質を放出して多数のカシノナガキクイムシの雌雄を誘引し、集中加害を引き起こします。

引用:「里山に入る前に考えること」(独立行政法人森林総合研究所関西支所)

社会的背景

ナラ枯れは、高齢の大径木が被害を受けやすいという調査報告があります。1960年代以降、燃料の多くは里山から生産される薪や柴、木炭から化石燃料へと変わり、いわゆる里山林は伐採されることなく放置されてきました。この結果、生長の早いコナラなどの高齢化、大径化が進み、カシノナガキクイムシの繁殖に適した環境になったことに加えて、枯損木が放置されて翌年の被害増加につながっています。

被害対策

  • 防除(駆除と予防)
(表)
伐倒駆除 被害を受けた木を切り倒して薬剤処理や持ち出しによって被害の拡大を防ぐことができます。被害区域が特定できる公園の周辺などに有効ですが、奥地で集団発生した場合は駆除が困難になります。
樹幹注入 保護したい健全木に、あらかじめ殺菌剤を注入しておくことで、カシナガが穿入しても、材内でのナラ菌の繁殖を抑制します。
粘着剤・殺虫剤散布 保護したい健全木の樹幹に粘着剤を散布、あるいは粘着剤と殺虫剤とを併用散布し、粘着力や殺虫力によりカシナガの穿入を防ぎます。
伐倒くん蒸 被害木を伐倒、玉切り、集積し、伐根とともに全体をシートで被覆密閉して、殺虫・殺菌剤(カーバム剤)でくん蒸処理し、杉内のカシナガを殺虫します。
ペットボトルトラップ法 穿入を始めたカシナガが発する集合フェロモンや、ナラ類から出る匂い成分(カイロモン)に誘引されたカシナガを、ペットボトル等で作成したトラップに衝突させて大量に捕獲・殺虫を行います。比較的簡単で安全に作業ができるため、駆除を行うボランティア活動での活用が可能です。
伐採・破砕処理 被害木を破砕処理し、カシナガの幼虫を物理的に殺虫します。
伐採・割材処理 被害木の割材を行うと、カシナガの幼虫は割材面に露出した孔道から外へ這い出てくるという習性があるので、これを利用するとともに、乾燥による生息環境の悪化で殺虫します。また、被害材を薪として利用することができます。
資材被覆 資材による被覆は、未被害木に対してはカシナガの穿入防止(予防)として有効です。対象木の樹幹をビニールシート・ウレタンマット・メッシュの細かい金網等で覆い、カシナガの穿入を阻止します。シートをしっかりと固定すれば3~5年程度は効果が持続します。
粘着シート被覆 粘着シート被覆は、未被害木に対してはカシナガの穿入防止(予防)として、既に穿入されてしまった木に対しては脱出防止(駆除)としての活用が可能です。粘着シートの粘着部を外側・あるいは内側にして立木の幹に巻き付け、カシナガを捕獲します。

参考文献「ナラ枯れの被害をどう減らすか」(独立行政法人森林総合研究所関西支所)「里山に入る前に考えること」(独立行政法人森林総合研究所関西支所)「ナラ枯れ被害対策マニュアル改訂版」(一般社団法人日本森林技術協会)
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マツ枯れ

被害の現状

マツ枯れ被害は、昭和40年代から増加し、昭和60年ごろに県下でマツ枯れ被害のピークを迎えました。その後、平成の前半に2度目のピークをむかえ、以後被害は徐々に減少傾向にあります。

被害の推移

松枯れ被害量推移

市町別の被害面積

マツ材線虫病の発生メカニズム

松くい虫(マツクイムシ)被害は、マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの2種の共生関係が原因となるマツ材線虫病によりマツの木が枯死する現象です。

(表)
引用:「里山に入る前に考えること」(独立行政法人森林総合研究所関西支所)
マツノマダラカミキリの生活・線虫感染とマツ枯れの関係

被害対策

(表)
伐倒駆除 松くい虫の付着により枯死、または枯死にひんしている樹木について、チェーンソー等を利用して伐倒し、その後、薬剤の散布、枝条・樹皮の焼却をします。
特別伐倒駆除 松くい虫の付着により枯死、または枯死にひんしている樹木に対して、伐倒および破砕をします。
樹幹注入 マツの生立木に樹幹注入剤を施用することにより、松くい虫が運ぶ線虫類による枯死を予防します。
伐倒駆除
樹幹注入

高度公益機能森林等の区域

県では、森林病害虫等防除法の規定に基づき、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定しております。

ニホンジカ

剥皮被害

ニホンジカによる森林被害は平成12年ごろから急激に増加し、県内の森林に深刻な影響を与えています。
植栽後間もない幼齢木の食害や成木の剥皮被害など樹木に対する直接的被害に加え、近年は森林の下層植生の食害によって生物多様性への影響や土壌露出による土砂流出の危険性などが問題になってきています。

(表)
▲成木の剥皮害 ▲幼齢木の剥皮害 ▲幼齢木の食害(葉)
剥皮被害の状況

二ホンジカによる剥被害の被害状況

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樹皮の剥被害による枯れた幼齢木

2

幼齢木の食害(葉)

被害の推移

シカ被害量の推移

市町別の被害面積

被害対策

(表)
防護柵 植栽地全体を柵で囲う。
食害防止網等 植栽した苗木や樹木を単木的に網やチューブで覆う。
テープ巻き ビニールテープを成木の樹幹に螺旋状に交差するように巻きつける。
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