調査区である伝本丸取付台東半部の規模は、長軸方向が約43m、短軸方向が約17mです。
調査前は見学者の立ち入り制限を設けない公開エリアでした。伝本丸跡と天主跡とをつなぐ見学者動線には腐植土が堆積しておらず、雨に洗われ、踏圧もあって周囲よりもやや低くなって樹根や礎石が露出しています。
立ち木は残していますので全面掘削はしていませんが、これまでに、昨年度の伝本丸取付台北半で発見した建物とは別の建物礎石とそれを仕切る石列が見つかっています。また、昭和の石垣修理の影響範囲も確認しています。
調査区の中央部分から東側では建物の礎石が見つかっています。今回確認した礎石は、昨年度の調査で確認した礎石のように1mを超える大型のものは無く、現在のところ80cm 程度のものばかりです。
昨年度の調査では、礎石建物を区画する石列が見つかっていました。今回の調査ではこれにつながる石列が見つかっています。石列は途中で南に向きを変えますが、最終的にどこにつながるかはまだわかっていません。
石列の石材は、平坦な面を天主石段側に向けて直線的に揃えて並べています。
調査区の周囲の石垣は昭和40 年代に修理工事を行っています。今回の調査では、その影響範囲をこれまでに確認しています。
石列や遺構検出面は北東に傾斜しています。これは、雨水を伝本丸跡に流れないように対策したものと考えられます。なお、伝本丸跡の発掘調査では、伝本丸取付台側に石組み溝が見つかっており、取付台からの雨水対策が講じられています。
表土層である腐植土層からは、昭和の見学者に由来する空き缶・空き瓶等とともに瓦片が出土しています。
遺構精査中には、瓦片の他に瀬戸天目茶碗の口縁片、土師皿の口縁片、白磁片がこれまでに出土しています。
石列や礎石・抜き取り痕の有無を精査し、見学者通路を付け替えて通路部分を調査します。
下記に留意して今後の整備に必要な情報が得られるよう調査を進めます。
特別史跡安土城跡発掘調査中間報告(図面) (PDF:543 KB)
令和7年度特別史跡安土城跡発掘調査現場公開資料 (PDF:2 MB)