団結権、団体交渉権、団体行動権を侵害するような行為(不当労働行為)を使用者が行ったと思われるときは、労働組合や組合員は労働委員会に救済を申し立てることができます。申立てを受けた労働委員会は、使用者の行為が不当労働行為にあたるかを審査して、救済命令または棄却命令を発します。
労働者が団結する権利(団結権)、労働者が団結して使用者と交渉する権利(団体交渉権)、労働者が使用者に対抗して、ストライキなどの争議行為を行う権利(団体行動権)は、3つまとめて「労働三権」と呼ばれ、日本国憲法で保障されています。
しかし、「組合に加入したら人事評価を下げられた」「上司に組合を脱退するよう求められた」といったことが行われた場合、憲法で保障されているはずの団結権が侵害されてしまいます。また、「会社が団体交渉に応じない」というケースでは団体交渉権が阻害されますし、「組合員がストライキを行ったという理由で解雇された」といった場合は団体行動権の侵害となります。
そのため、こうした行為は「不当労働行為」として、労働組合法第7条各号によって禁止されています。
具体的にはどういったケースが不当労働行為に該当するのか、別ページで詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。
労働組合法第7条各号では、以下のような行為が不当労働行為として禁止されています。
不当労働行為の救済申立後は、(1)審査委員の選任・参与委員の申出、(2)調査・審問、(3)命令・和解、の順に手続きが進められます。また、申立てを行ったのが労働組合だった場合、これらの手続きと並行して労働組合の資格審査も行います。
それぞれ具体的にどのような手続きなのか、別ページで詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。
不当労働行為の救済申立てが行われると、労働委員会は事件を担当する審査委員を選任します。また、併せて意見表明や和解の可能性の検討などを行う参与委員の申出を受けます。
審査委員と参与委員が決まると、申立てを行った労働組合や組合員個人(申立人といいます)と、申立てを受けた使用者(被申立人といいます)との間で日程を調整したうえで、県庁内の審問廷で調査・審問を行います。事件にもよりますが、一般的には一つの事件につき調査は5回、審問は3回程度行われます。
調査・審問を終え、双方の主張や対立点などが明確になると、審査委員は適当と考えられる命令書を作成し、双方に発出します。命令には、被申立人の非を認めて申立人に対する救済措置を命じる「救済命令」と、申立人の主張が妥当ではないとして退ける「棄却命令」とがあります。また、複数の争点がある場合、その一部は救済を命じるものの残りは棄却する「一部救済命令」が出されることもあります。
労働委員会の命令に不服がある場合、国の機関である中央労働委員会に再審査を申し立てることができます。また、地方裁判所に取消訴訟を提起することも可能です。
労働委員会の命令は強制力を伴うものであるため、場合によっては、命令書を発出することで労使間の関係性に悪影響が及ぶことも考えられます。命令ではなく他の方法での解決が望ましいと審査委員が判断した場合、双方に和解を促すこともあります(和解は強制ではありません)。和解の内容は法律に反するものでなければ、どのような内容でも構いません。労使関係が円満に保たれること以外にも、命令の発出よりも素早く解決できることがメリットとして挙げられます。
なお、滋賀県労働委員会では、申立てを受けてから命令書の発出までを1年2ヶ月以内に完了するという期間目標を定めています。
労働委員会事務局に申立書を提出することで救済申立てが行えます。労働組合が申し立てる場合は、あわせて労働組合資格審査のための書類も提出してください。
申立書は郵送で提出することも可能ですが、手続きの流れについての説明や、事件の背景事情の聴き取りなどを行う必要があるため、やむを得ない場合を除いては来庁の上で提出するようお願いします。メールやファクシミリによる申立ては受け付けておりません。