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R-25-9-1学校における食物アレルギーの管理:臨床報告➡小児科医がやるべきことSicherer SH et al. Management of food allergy in schools: clinical report. Pediatrics 2025; 156: e2025073168. ★★
米国小児科学会(AAP)が2010年版を改訂し、学校における食物アレルギー管理の最新指針を示した。食物アレルギーは児童の最大10%にみられ、毎年約15校に1校でアナフィラキシーが発生する。報告では、正確な診断、学校との情報共有、個別緊急対応計画の作成、エピネフリン常備の推進、職員研修、アレルゲン曝露の回避、心理的支援の重要性を強調。小児科医は診断・治療計画・教育・法的支援を通じて安全な学校環境づくりに中心的役割を担う必要がある。
R-25-10-1 Siglecsの探索:食物アレルギーにおける免疫細胞の調整役となる可能性とその治療への応用➡食物アレルギー治療にSiglecsという選択肢Schaapherder JSH et al. Exploring Siglecs: potential modulators of immune cells in food allergy and therapeutic applications. Clin Exp Allergy 2025; 55: 889-900. ★
食物アレルギーにおける免疫細胞の抑制性受容体「シア酸結合型免疫グロブリン様レクチン(Siglecs)」の役割と治療標的としての可能性を概説。Siglecsは免疫細胞上に広く発現し、細胞活性化を抑制することでアレルギー反応の制御に関与する。特にB細胞上のSiglec-2、肥満細胞や好塩基球上のSiglec-6、-8の標的化は有望であり、アレルゲン誘発反応の抑制が報告されている。感作相における樹状細胞やT細胞のSiglec(特にSiglec-9)の制御も予防的治療戦略として注目される。多細胞型Siglecを同時に標的化することで、安全性と有効性の向上が期待される。
R-25-10-2咀嚼による離乳食の前処理 ― 乳児の摂食習慣に関するレビューとアレルギーおよびマイクロバイオーム発達への潜在的影響➡リスクとベネフィットありSteinberg A et al. Premastication – review of an infant feeding practice and its potential impact on allergy and microbiome development. Allergy 2025; 80: 2726-2737. ★
離乳期に保護者が食物を咀嚼して与える「プリマスティケーション(前咀嚼)」の文化的背景、リスク、そして潜在的な利点を検討した総説。感染症伝播の危険性が指摘される一方、唾液を介した多様な微生物や免疫因子の伝達が乳児の免疫成熟や腸内・口腔マイクロバイオームの発達を促し、アレルギー予防や経口免疫寛容の形成に寄与する可能性が示唆される。安全に実施すれば、昔からのこの摂食法は現代の食物アレルギー予防に有益な手段となり得るかもしれない、と論じている。
R-25-10-3食物アレルゲンに対する耐性の誘導―若いほど有効➡早期介入の重要性を考察Smeekens JM et al. Induction of tolerance to food allergens – younger is better. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70193. ★★
食物アレルギーに対する「免疫寛容誘導」において、若年期の介入が最も効果的であることを臨床試験と免疫学的機序の両面から総括している。ピーナッツをはじめとする早期食物導入試験(LEAP、EATなど)では、乳児期の摂取が長期的耐性獲得をもたらすことが示され、免疫療法(経口・舌下・経皮)でも若年児ほど持続的寛容(SU)達成率が高い。これは、幼児期の免疫系が可塑性に富み、アレルゲン特異的IgEの多様化が進む前に中和抗体(IgG4)が誘導されやすいためと考えられる。特にIgG4抗体は複数のIgEエピトープを遮断し、長期的耐性維持に寄与する。今後は、IgE多様化の進行を抑えつつIgG4による中和応答を強化することで、食物アレルギーの根本的免疫再構築をめざす新たな治療戦略の確立が期待される。
R-25-10-4 母親の妊娠中食事パターンと児のアレルギーに関する体系的レビュー➡妊娠中に児のアレルギー予防?Tan W et al. Systemic review of maternal dietary patterns during pregnancy and offspring allergy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70217. ★
妊娠中の母親の食事パターンと子どものアレルギー発症リスクとの関連を体系的に検討したレビュー。PubMedなどから2024年11月までの文献を解析し、28報を対象とした。健康的・不健康的な食事パターンや多様性指数を検討した結果、食事多様性の高さは子どもの食物アレルギーリスク低下と関連し(OR=0.95)、炎症性食事パターンは5歳未満での喘息・喘鳴リスク上昇と関連した(OR≈1.17)。一方、他の食事パターンとアトピー性皮膚炎や鼻炎との明確な関連は認められなかった。全体として、妊娠期の食事の質と多様性が児のアレルギー発症に一定の影響を及ぼす可能性が示唆された。
R-25-10-5食物アレルギーにおける心の持ち方➡“副作用”より”前向きのサイン“と捉えようZhou DF et al. Mindset in food immunotherapy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36:e70218. ★★★
食物経口免疫療法(OIT)における「マインドセット(心構え・心理的態度)」の重要性を論じた総説。ストレスや不安などの心理的要因は免疫反応を増幅し、治療経験や症状の捉え方を通じてOITの効果や継続率に影響を及ぼす。特に症状を「副作用」ではなく「治療が進んでいる兆候」と前向きに捉えることで、治療への遵守や心理的回復力が向上することが示されている。また、若年児では高い順守率と脱感作達成がみられる一方、思春期以降では不安や味覚嫌悪が治療中断の要因となる。親の不安も子どもの心理反応に影響するため、教育と心理的支援の統合が重要である。著者らは、OITの成功には心理学的介入と行動科学の知見を組み合わせ、患者と家族の心的準備を支援することが不可欠であると結論づけている。
R-25-10-6アレルギーまたはアレルギーの思い込み―いつペニシリンアレルギーのテストをするか?Marwah H et al. Allergy or assumption of allergy – when to test for a penicillin allergy. New Engl J Med 2025; 393: 1340-342. ★
具体的症例をもとに、ペニシリンアレルギーの診断と対応方針をめぐる臨床的判断を提示。多くの患者が「アレルギーあり」と誤って記録されているが、実際にIgE依存性の真のアレルギーを有するのは約2%にすぎない。専門医による直接経口負荷試験が安全かつ有効である一方、一般診療での無計画な実施はリスクを伴う。低リスク症例では皮膚試験を省き、監督下での経口投与による再評価が推奨される。不要なアレルギーとの診断は抗菌薬選択を制限し、耐性菌や治療成績の悪化を招くため、誤診を是正し適切な除外評価を行うことが重要である。
R-25-10-7 ピーナッツアレルギーの経口免疫療法:腸管免疫の重要な役割➡腸の免疫が鍵を握るKuehn A et al. Oral immunotherapy of peanut allergy: a critical role for gut-associated immunity. Allergy 2025; 80: 2705-2709. ★★
ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法(OIT)の免疫学的基盤、とくに腸関連免疫の役割に焦点を当てた総説。OITはアレルゲン摂取により免疫寛容を誘導する治療法であり、脱感作効果は高いが、完全な耐性獲得は約1〜2割にとどまる。従来の研究では、Th2細胞やサイトカインの減少、IgG4や粘膜IgAの上昇が治療効果と関連してきた。Arnau-Solerらの研究(2025)では、OIT中の小児患者の末梢血単核球を対象にトランスクリプトームおよびメチローム解析を行い、腸ホーミング性T細胞やILC3、CD8ααT細胞、γδT細胞など腸局所免疫に特徴的な変化を報告した。さらに、腸局所でのIgE産生や腸管バリア破綻、腸内細菌との相互作用が食物アレルギー病態に関与することが示唆された。これらの知見は、OIT成功の鍵として腸粘膜免疫応答とその制御機構を重視する必要性を示しており、今後は単細胞解析などを組み合わせた多層的研究が求められる。
R-25-8-1どのアトピー性皮膚炎患者に生物学的製剤やJAK阻害剤を優先投与するべきかを決める➡アトピー性皮膚炎のテイラーメイド治療Kamada M et al. Deciding which patients with atopic dermatitis to prioritize for biologics and Janus kinase inhibitors. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1901-10. ★★
最近の知見をもとに、生物学的製剤とJAK阻害剤の多くの治療選択肢の中からどの患者に何を投与すべきかを提言している。
R-25-8-2最善の食物アレルギー予防、診断および管理の戦略に対する障壁と解決方法➡最善のやり方をいかに普及させるかTilles SA et al. Barriers and solutions to optimal food allergy prevention, diagnostic, and management strategies. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1928-34. ★★
2023年にFARE(Food Allergy Research & Education)が開催したClinical Development Dayで、臨床医、研究者、行政、産業界が食物アレルギー(FA)の予防・診断・治療における課題と解決策を協議した。主な課題は、乳児への早期食物導入の普及率の低さ、経口食物負荷試験へのアクセス不足、診断ツールの限界、経口免疫療法(OIT)の臨床実装の困難さ、臨床試験の多様性不足など。解決策としては、保護者と医療者への啓発強化、グループ負荷試験やOIT導入の効率化、規制の柔軟化、患者中心の意思決定支援、多様な集団を対象とした臨床試験推進が提案されている。総じて、多領域の協力によりFAの負担軽減と患者生活の質向上を目指す必要性が強調されている。
R-25-8-3アレルギー疾患における皮膚‐消化管‐呼吸器細菌叢の役割➡異なる場所の細菌が影響しあうYang L et al. The role of skin-gut-lung microbiome in allergic diseases. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1935-42. ★★
皮膚・腸管・肺における微生物叢の相互作用と、その免疫応答やアレルギー疾患への関与を概説。皮膚や腸管、肺はバリア機能を共有しつつ、常在菌や真菌、ウイルスなどの多様な微生物と共生しており、そのバランスの乱れ(ディスバイオシス)がアトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギーといった疾患の発症や重症化に関与する。さらに、これらの微生物叢は臓器間で相互に影響し合う「皮膚–腸–肺軸」として機能し、宿主免疫の恒常性維持に重要な役割を果たす。近年の研究は、プロバイオティクス、プレバイオティクス、バクテリオファージ療法などの介入により微生物叢を修飾し、疾患予防や治療に応用できる可能性を示している。本総説は、臨床応用に向けた課題と展望を整理し、微生物叢を標的とした新規治療の可能性を強調している。
R-25-8-4鶏卵アレルギー寛解を評価するための段階的アプローチ➡ある3歳女児の場合Agyemang A et al. Stepwise approach to evaluating egg-allergy resolution. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 2206-7. ★
中等度のアトピー性皮膚炎と多項目の食物抗原感作のある3歳女児を取り上げ、鶏卵アレルギーが段階的に寛解していく経過を解説。
R-25-8-5Sharlin CS et al. Food allergy and eosinophilic esophagitis. Oral immunotherapy reveals a disease in flux. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 127-128. ★
食物アレルギーに対する経口免疫療法(OIT)の副作用として発症する好酸球性食道炎(EoE)に焦点を当てた総説。OITはIgE依存性即時型反応を抑制する一方で、消化管有害事象をしばしば伴い、一部でEoEを誘発する。OIT関連EoEは多くが中止で改善するが、持続例もあり薬物療法が必要である。発症には上皮バリア障害と免疫応答の不均衡が関与し、リスク因子の解明とバイオマーカー開発が重要とされる。OIT実施時は倫理的配慮と患者との共有意思決定が求められる。
R-25-7-1IgE依存性食物アレルギー管理における生物学的製剤新しい知見は?➡食物アレルギー治療のこれからGurel DI et al. Biologics in the management of IgE-mediated food allergy. What is new? Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70146. ★★★
オマリズマブを始め、近年IgE依存性食物アレルギーに対して使用が認められた、または使用が検討されている様々な生物学的製剤について解説。近い将来、より個別化された効果的な治療に結びつく可能性も。
R-25-7-2先進国におけるアレルギー予防のための健康的な補完食実施に関するガイダンス:EAACIの検討班からの報告➡離乳食の大切さを再認識Vlieg-Boerstra B et al. Guidance for healthy complementary feeding practices for allergy prevention in developed countries: an EAACI interest group report. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36:e7-150. ★★
乳児期におけるアレルギー予防と栄養を両立させる補完食導入の実践的指針を提示している。生後4〜6か月の間に母乳育児を継続しつつ、ピーナッツや鶏卵などの主要アレルゲンを早期に導入することで、アレルギー感作のリスクを低減できると報告されている。また、多様な食品群の導入は免疫寛容の促進だけでなく、腸内細菌の多様性を高めることが明らかになっており、これはアレルギー疾患の予防および全身的健康に重要な役割を果たす。特に、繊維質や発酵食品の摂取は有益な腸内細菌の定着を助け、バリア機能や免疫調節機能の成熟を促進する。さらに、鉄・亜鉛・ビタミンDなどの微量栄養素の適切な摂取も考慮されるべきである。本ガイドラインは、最新の科学的根拠と専門家の合意に基づき、臨床現場および保護者への実践的な助言を提供している。
R-25-7-3小児におけるアレルギー疾患の経過:行きつく先はわからない?➡アレルギーの経過は思っていたより複雑Kalb B et al. Trajectories of allergic diseases in children: destination unknown? Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70131. ★★
アレルギー疾患の経過は従来言われていた“アレルギーマーチ”よりも複雑で多様である。そこには遺伝的要因と環境因子が関与している。特に上皮バリア障害と細菌叢の乱れが重要である。疾患経過の多様性の理解と、エンドタイプの把握が個別化された治療介入のために必要であり、その取り組みが今始まっている。
R-25-7-4食物アレルギー管理における倫理的配慮乳幼児に注目して➡治療を始める前に考えるべきことBuckey TM et al. Ethical considerations in food allergy management. A focus on infants and toddlers. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 9-10. ★
食物アレルギーについて経口免疫療法やバイオ製剤など新たな治療法が導入されているが、本記事では、1長期にわたる治療の影響が不明、2自然経過で改善が期待できる食品もある、3バイオ製剤の長期投与の安全性が不明、など治療方針を決める前に考えるべき倫理的問題について解説している。
R-25-6-1食事はヒトの免疫システムをコントロールできるか?➡栄養の効果を分子レベルで解明するFleming N. Can your diet control your immune system? Nature 2024; 634: 529-531. ★★
近年、食事と免疫機能の相互作用に関する研究が進展し、従来の曖昧な食事パターン分析から、特定の栄養素が免疫応答に与える影響を分子レベルで明らかにする手法へと進化している。このNature誌の記事では、キチンや高脂肪・低繊維食、絶食、ケトジェニック食やヴィーガン食などが免疫細胞の活性や構成、遺伝子発現に及ぼす影響を動物およびヒト研究に基づき報告して研究の成果をまとめている。例えば、キチン摂取が代謝改善に寄与する免疫経路を活性化する一方、過度な絶食は免疫抑制や感染リスク増加を引き起こす可能性も示唆された。また、短期間の食事変化が免疫細胞に顕著な影響を与えることも明らかとなった。著者らは、こうした知見が将来的に個別化栄養療法として臨床応用される可能性について言及している。
R-25-6-2早期抗原曝露とそのアレルギー疾患リスクへの影響➡食物アレルギーと喘息では違う?Huiwen Them E et al. Early-life allergen exposure and its influence on risk of atopic disease. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1243-53. ★★
生後早期のアレルゲン曝露がその後のアレルゲン感作の進展に与える影響につき考察。食物抗原については感作や発症の予防になるとのエビデンスが蓄積しているが、吸入抗原については早期曝露の影響は様々な条件によって異なる可能性があり、複雑である。
R-25-6-3母乳中の食物抗原濃度と母体側因子との関連‐系統的なレビュー➡ばらつきが大きいHughes SA et al. Concentration of food allergens in breastmilk and association with maternal factors – a systemic review. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70117. ★
17報の過去文献を抽出して、母乳中の食物アレルゲン量と関連する母親の条件を検討。ばらつきが大きく、一定の結論は得られなかった。
R-25-5-1アトピー性皮膚炎:皮膚管理のアップデート:臨床報告➡最新の治療戦略を学ぶSchoch JJ et al. Atopic dermatitis: update on skin-directed management: clinical report. Pediatrics 2025; 155: e2025071812. ★★
小児の20~25%が罹患するアトピー性皮膚炎についての最新の治療戦略について解説。
R-25-5-2腸内微生物臓器の健康状態を評価する:なぜ、そしてどのようにして?➔taxonomyよりもmetabolomics DeLeon O et al. Assessing the health of the gut microbial organ: why and how? J Clin Invest 2025; 135: e184313. ★★
腸内マイクロバイオームを「微生物臓器」として捉え、その健康状態を評価する必要性と方法論について論じている。腸内細菌叢は宿主の免疫・代謝・バリア機能に必須であり、その乱れ(dysbiosis)は多くの疾患と関連するが、臨床で有効な健康指標や診断ツールは未整備である。著者らは、腸内代謝物に着目したメタボロミクス的手法が有望であり、機能的かつ定量的な評価基準の確立がマイクロバイオーム医療の飛躍的進展に寄与すると主張する。
R-25-5-3食物アレルギーで不安の強い患者さんを助けたいですか?近接負荷をしましょう!➡食物アレルギーに伴う不安に認知行動療法のアプローチDahlsgaard KK et al. Want to help your patients with food allergy anxiety? Do proximity challenges! Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 525-582. ★
食物アレルギーの不安が強い患者に対して、認知行動療法の理論に基づいた近接負荷の試みを提案。
R-25-5-4補足的オミックス手法を用いて、アジアとヨーロッパの一般コホートにおけるアトピー性皮膚炎を理解する➡オミックスでアトピー性皮膚炎を理解するYew YW et al. Understanding atopic dermatitis in Asian and European population cohorts using complementary omics techniques. J Invest Dermatol 2025; 145: 1283-93. ★
アジア系とヨーロッパ系という異なる人種間でオミックスデータを比較して、アトピー性皮膚炎の病態や治療ターゲットに迫るアプローチについて解説。
R-25-5-5あなたの食物アレルギー管理を改善する10の方法➡実践できている?Anagnostou A et al. 10 ways to improve your management of food allergy. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 615-618. ★
食物アレルギー管理を改善する10の方法を提示。「エピペン使用後の救急受診は必須ではない」、「学校全体で特定の食品を禁止しても意味がない」など、意外な記載も。
R-25-4-1食物アレルギーの治療:経口免疫療法、オマリズマブ、または両方➡少なくとも2つの選択肢Brough HA et al. Treatment of food allergy: immunotherapy, omalizumab, or both. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 731-739. ★★★
食物アレルギーに対する治療としてFDAが承認した2つの選択肢について解説。治療方針の決定に当たっては共有意思決定(SDM)の考え方が重要。
R-25-4-2食物アレルギーにおける脱感作から耐性獲得への移行➡究極の目標へ向かってFlom JD et al. Moving beyond desensitization to tolerance in food allergy. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 741-744. ★★
Palforziaを用いた積極的治療(ピーナッツ経口免疫療法)、オマリズマブ(抗IgE抗体)を用いた受身的治療、を紹介し、究極の目標である耐性獲得へ向けての道筋を探る。
R-25-4-3仲間の影響、社会的圧力、食物アレルギー:介入活動とアドボカシーに役立つエビデンス➡食物アレルギー移行期医療の課題Protudjer JLP et al. Peer influence, social pressure, and food allergy: evidence to inform interventional work and advocacy. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 751-753. ★★
思春期から成人に至る移行期の食物アレルギー患者が、友達や様々な社会環境と向き合いながら自ら食物アレルギーの管理をしていくための課題について考察。
R-25-4-4食物アレルギー管理と治療における社会決定要因と生活の質➡Protudjer JLP et al. Social determinations and quality of life in food allergy management and treatment. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 745-750. ★
食物アレルギー(FA)管理における社会的決定要因(SDOH)が患者および家族の生活の質(QOL)と健康関連QOL(HRQL)に与える影響を多角的に検討。経済的安定、教育、医療アクセス、居住環境、社会的文脈の5つのSDOH領域が、FAの診断や治療へのアクセス、心理的負担、食物不安定性などを通じてQOLを大きく左右する。格差是正のために、多様な人口を反映した研究設計、教育的介入、テレヘルス活用の重要性を提言しており、SDOHの包括的理解と対策がFAにおける健康格差の解消とQOL向上に不可欠であると結論付けている。
R-25-4-5食物アレルギー管理の変化するニーズに対応する➡食物アレルギー管理の進展と課題を総括Kim EH et al. Meeting the needs of the changing landscape of food allergy management. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 783-785. ★
近年、早期摂取による予防や脱感作療法(OIT、抗IgE抗体療法)の臨床導入が進み、患者中心の意思決定や新たな治療選択が可能となった。さらに、非注射型エピネフリンや耐性獲得を目指す治療の開発、患者報告アウトカム(PROM)の導入、社会的要因を考慮した支援体制の重要性が強調されている。これらは今後の食物アレルギー治療の最適化と包括的管理の基盤を築くものである。
R-25-4-6食物アレルギー、栄養、心理学、そして健康➡食物除去が腸内細菌に影響?Gupta E et al. Food allergy, nutrition, psychology, and health. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 773-782. ★★
栄養摂取と心理的健康との関連性に関する先行研究を体系的に整理し、食行動における心理的要因の役割を多角的に検討。特に、食事パターンが感情調節やストレス反応に及ぼす影響に加え、腸内細菌叢の構成にも影響して、脳機能および情動に与える可能性にも着目。栄養と精神的健康の双方向的関係性を明らかにしている。また、栄養心理学の臨床応用とその課題についても考察がなされている。
R-25-4-7牛乳アレルギーの様々な側面➡牛乳アレルギーのすべてLo R et al. The multiple facets of cow’s milk allergy. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 754-760. ★★
IgE依存性、非依存性を含めた牛乳アレルギーの様々な側面につき紹介し、最新の知識を解説。
R-25-4-8食物によるアナフィラキシーの管理についての最新知識Lieberman JA et al. Updates in food anaphylaxis management. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 723-729. ★
食物によって引き起こされるアナフィラキシーの診断、管理についての最新情報を提供。アドレナリンの新たな投与方法の可能性についても紹介。
R-25-4-9食物アレルギー臨床試験をより患者中心に進化させるべき➡患者が主役Dantzer JA et al. Evolving food allergy clinical trials to become more patient-centered. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 763-772. ★★
従来の食物アレルギー治療評価は前後で摂取閾値がどのくらい増えたか、というものであったが、近年では患者による結果の評価(Patient-reported outcome measures, PROM)をより重視する方向に進化すべきである。そのことで共有意思決定(shared decision making, SDM)に基づいた治療内容の議論が容易となる。
R-25-4-10小児食物アレルギーの機序に関する新しい視点➡免疫を知って食物アレルギーを攻略するGubbels L et al. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70069. ★★
過去5年間に発表された小児食物アレルギーの免疫学的検討に関する論文をもとに以下の論点を考察;1.小児食物アレルギーに関連した免疫学的指標2.重症度を決定する因子3.経口免疫療法で起こる免疫学的変化4.オマリズマブなどの補助療法による免疫学的効果。これらの進歩はあるものの、多くの病態がまだ未解明であり、さらなる研究が必要である。
R-25-4-11鶏卵アレルギーの管理:従来からのアレルゲン除去と最近の段階的解除法に関する体系的レビュー➡患者に最適なアプローチをGallagher A et al. Managing egg allergy: a systematic review of traditional allergen avoidance methods and emerging graded exposure strategies. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70075. ★★
従来のアレルゲン除去から、変性卵/焼成卵などの段階的曝露などの方法を取り入れた新たな管理戦略へのシフトについて考察。アレルゲン除去は依然として鶏卵アレルギー管理の要であるが、患者の転帰を最適化するための補完的アプローチが必要である。生活の質(QOL)、社会的要因、食生活の多様性、経済的影響などを充分考慮する必要がある。
R-25-4-12 アレルギーと免疫学の将来人工知能はデジタル時代の鍵となるか?➡AIがアレルギー診療にもたらすものGoktas P et al. Future of allergy and immunology: Is artificial intelligence the key in the digital era? Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 395-407. ★
厳選された20の文献をもとに、AIがアレルギーや免疫の診療にもたらす変化(診断、個別化医療、新たな研究手法など)について解説。
R-25-4-13就学前の食物アレルギー管理において経口免疫療法(OIT)が重要な役割を果たすべきだ➡就学前に始めようSoller L et al. Oral immunotherapy should play a key role in preschool food allergy management. Clin Exp Allergy 2025; 55: 294-306. ★★
3つの視点から、食物アレルギー小児に対するOITは、その効果がより強く期待できる就学前に開始すべき、と論じている。1)従来の自然緩解を待つやり方では、従来言われていたほどには緩解率は高くなく、また仮に緩解しても食べずにいると再感作のリスクがある2)アレルゲン回避だけでは誤食のリスクが従来言われているより高い3)OITは就学前に開始したほうがその安全性、有効性が高まる。
R-25-4-14脂質輸送たんぱく(LTP)の診断と管理―BSACIによる診療に関する声明➡イギリスでの実態は?Marinho S et al. Diagnosis and management of lipid transfer protein allergy – a BSACI clinical practice statement. Clin Exp Allergy 2025; 55: 307-318. ★
イギリスアレルギー学会の調査によるLTPアレルギー疫学調査の結果を報告。
R-25-4-15成人食物アレルギー―世間の認識と実際➡大人の食物アレルギーって?Skypala IJ et al. Adult food allergy – public perception and reality. Clin Exp Allergy 2025; 55: 291-293. ★
成人における即時型食物アレルギー(IgE-FA)の実態と世間の認識の乖離を検討している。特に小麦を例に、自己申告によるアレルギーの有病率(13.1%)と、実際の診断による有病率(0.25%)との大きな差異を指摘し、誤った自己診断による食物除去のリスクを警告している。また、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)など、診断が困難な成人発症型アレルギーの存在や、共因子の重要性にも言及。さらに、花粉食物アレルギー症候群(PFS)や、新たな植物性食品由来のアレルゲンへの感作が増加している現状を示し、正確な診断と栄養指導の必要性を強調している。
R-25-4-16就学前小児への経口免疫療法(OIT)についての議論は続けるべきである➡熱く、かつ冷静に語ろうLoke P et al. The conversation on oral immunotherapy for preschool children must continue. Clin Exp Allergy 2025; 55: 288-290. ★★
筆者は、未就学児に対する経口免疫療法(OIT)の是非とその今後の方向性を論じている。近年、早期介入の有効性が注目されているが、治療効果や生活の質(QoL)、安全性に関するエビデンスは依然として限定的である。特にQoLに関する無作為化比較試験は未就学児を対象としたものが乏しく、治療成果の長期持続性や最適な治療期間も不明である。さらに、低年齢が成功因子であるかは特異IgEレベルなどのバイオマーカーとの関連を考慮する必要がある。著者は、熱意と慎重さを併せ持った議論と高品質なエビデンスの蓄積を呼びかけている。
R-25-3-1 アレルギー性鼻炎と心の健康の関連:アンブレラレビュー➡より質の高いエビデンスをXu X et al. Association between allergic diseases and mental health conditions: an umbrella review. J Allergy Clin Immunol 2025; 155: 701-13. ★
体系的レビュー論文を集めたアンブレラレビューの結果、アレルギー疾患は、特に喘息において、心の不調と関連していることを示した。因果関係を含めたより高品質のエビデンスが必要。
R-25-3-2食物アレルギーの治療を検討している家族に、どのようにカウンセリングするか➡私のやり方Greenhawt M et al. How I counsel a family who is considering food allergy therapy. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 286-9. ★
食物アレルギー治療を検討する家族へのカウンセリング方法について論じている。まず、IgE媒介性アレルギーの確定診断を行い、必要に応じて食物負荷試験を実施する。その後、治療の選択肢を提示し、関心のない家族には厳格なアレルゲン回避、エピネフリン携行、アナフィラキシー管理計画を指導する。関心のある家族には、治療目標やリスク許容度を考慮しながら適切な治療法を選択するよう助言し、治療の詳細や副作用、費用、家族の負担についても説明する。さらに、心理的サポートや家庭環境(離婚家庭等)の影響も考慮し、インフォームド・コンセントの取得後に治療を開始する。