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最新の文献から【基礎的研究】

B-25-10-1血小板はマスト細胞と共同でIL-33依存性にアレルギー反応を前に進める➡血小板とマスト細胞が共同作業Nishida A et al. Platelets engage mast cells in a bilateral IL-33-driven feed-forward loop. PNAS 2025; 122: e2512193122. ★

著者らは、IL-33刺激によりマスト細胞がロイコトリエンLTC4を放出し、それが血小板のCysLT2受容体を介して活性化を誘導することを示した。活性化した血小板はATP/ADPを放出し、マスト細胞のP2Y1受容体を介して再びLTC4やPGD2、ヒスタミン産生を増強する「双方向性フィードフォワードループ」を形成する。この経路の遮断はマウスAERDモデルで炎症反応を抑制し、重症喘息治療の新たな標的となる可能性を示された。

B-25-8-1上皮細胞膜の穿孔がアレルギー性気道炎症を誘導する➡アレルゲンに共通の特徴か?Shi K et al. Epithelial cell membrane perforation induces allergic airway inflammation. Nature 645; 475-483. ★★★

特定のタンパク質のみがアレルゲンとなる理由を解明するために、真菌 Alternaria alternata の抽出物を用い、気道上皮細胞におけるIL-33放出機構を解析。小型・大型のアエゲロリシンというタンパク質が細胞膜に大規模な孔を形成し、カルシウム流入とアラーミン放出を誘発し、2型炎症を惹起することを明らかにした。マウスに吸入させると典型的なアレルギー性喘息様反応が生じ、遺伝子改変により孔形成が阻害されると免疫応答も消失した。さらに他種生物由来の孔形成毒素も同様の作用を示し、孔形成がアレルゲンに共通する特性である可能性が示された。これにより、多様な構造をもつアレルゲンの共通基盤が「細胞膜孔形成」にあることが提唱され、新たな治療標的の探索につながると期待される。

B-25-7-1マウス実験において、システイニルロイコトリエンは食物アレルゲンの腸管からの吸収を促進してアナフィラキシーを引き起こす➡腸のロイコトリエンが食物アレルゲンの吸収を促進してアナフィラキシーを誘導Laura R Hoyt et al. Science 2025; 389: eadp0240. ★★★

食物経口摂取を起こしにくいC57BL/6マウスについてforward genetic screenの手法を用いて腸管上皮に発現するDpep1という遺伝子を同定。この遺伝子はシステイニルロイコトリエンを分解する酵素であり、腸管のLTC4、LTD4を分解することで、それらが杯細胞(goblet cell)に作用して食物アレルゲンの細胞内輸送を抑制する働きをしていた。Dpep1の働きを抑制することでマウスは食物経口摂取によるアナフィラキシーを起こしやすくなった。ロイコトリエン合成を抑えることが食物アレルギー治療につながる可能性。

 

B-25-7-2腸管のマスト細胞に由来するロイコトリエンが経口摂取した抗原に対するアナフィラキシー反応を引き起こす➡マスト細胞とロイコトリエンの相乗効果がアナフィラキシーにつながるBachtel ND et al. Intestinal mast cell-derived leukotrienes mediate the anaphylactic response to ingested antigens. Science 2025; 389: eadp0246. ★★★

食物アレルギーマウスモデルにおいて、経口感作と経口チャレンジを繰り返すと、小腸上皮内に局在するマスト細胞がIgE依存性に増加し、ヒスタミン産生能は低い一方でシステイニルロイコトリエン(CysLT)産生が亢進した。CysLT合成酵素(aLOX5、LTC4S)や受容体(CysLTR1、CysLTR2)欠損マウス、またはaLOX5阻害剤投与では、経口抗原によるアナフィラキシー症状が抑制されたが、静脈投与アナフィラキシーには影響しなかった。CysLTはマスト細胞増殖促進と急性反応の両方に関与し、上皮細胞・神経・ILC2細胞などを介して腸局所で反応を増幅させると考えられる。腸局所のロイコトリエン経路が経口アナフィラキシーの鍵であり、その抑制が治療戦略となる可能性を示した。

 

B-25-7-3細胞ネットワークによる共同作業が食物への耐性を制御する➡2種類の抗原提示細胞の共同作業Rudnitsky A et al. A coordinated cellular network regulates tolerance to food. Nature 2025; 644: 231-240. ★★★

食物抗原に対する免疫寛容の成立機構を再検討し、主要な抗原提示細胞が従来考えられていた樹状細胞(cDC1)ではなく、RORγt発現抗原提示細胞であることを明らかにした。これらの細胞はTGFβ活性化を介して食物特異的末梢制御性T細胞(pTreg)を誘導し、炎症性反応を抑制する。一方でcDC1は食物抗原特異的CD8αβT細胞を誘導するが、平常時にはpTregによって増殖が制限される。感染や食中毒の状況下では一時的にCD8 T細胞が拡大し、防御的な効果を発揮するが、その後は再び寛容状態に戻る。これにより宿主は、普段は安全な食物摂取を維持しつつ、感染時には柔軟に防御応答を展開できることが示された。

 

B-25-7-4母乳IgGがマウス新生児免疫システムに関与して腸管内の抗原に対する応答を調整する➡母乳中IgGに食物アレルギー予防効果Shenoy MK et al. Breast milk IgG engages the mouse neonatal immune system to instruct responses to gut antigens. Science 2025; 389: eado5294. ★★★

マウス実験を通じて、母乳中IgGが新生児の免疫調整に重要な役割を果たすことを示した。新生児期に母乳中IgGが腸内細菌と結合して免疫複合体を形成し、補体なども巻き込んで腸内リンパ節の濾胞性T細胞やB細胞の働きを調整。その結果、腸内細菌や食物抗原への免疫反応を抑制し、食物アレルギーや腸炎の発生を抑制していた。

 

B-25-7-5線毛細胞由来のIL-17Dが単球の導入を管理することでアレルギー性喘息を抑制する➡線毛細胞が喘息を予防Yuan L et al. Ciliated cell-derived IL-17D restrains allergic asthma through controlling monocyte recruitment. J Exp Med 2025; 222: e20242328. ★★

マウス喘息モデルを用いた検討により、気道上皮の線毛細胞がIL-17Dを発現していることを確認。IL-17Dは単球のCD93に結合して病的な肺胞マクロファージへの分化をブロックすることにより、喘息のアレルギー性炎症を抑制していることを示した。

 

B-25-6-1T細胞のDOCK8がTh17やTregの機能を促進して、粘膜マスト細胞を抑制し、経口アナフィラキシーに対する感受性を低下させる➡DOCK8が食物アレルギーによるアナフィラキシーを抑える鍵になるJanssen E et al. DOCK8 in T cells promotes Th17 and Treg cell functionality to restrain mucosal mast cells and limit susceptibility to oral anaphylaxis. Immunity 2025; 58: 1794-1810. ★★★

細胞内蛋白であるDOCK8の欠損患者では食物アレルギーを起こすことが知られていた。本研究では、DOCK8欠損がTh17やTregの機能を傷害し、粘膜マスト細胞の増殖や腸内細菌の乱れを引き起こすことを示した。腸内細菌、粘膜上のT細胞、マスト細胞などが協同して食物アレルギーによるアナフィラキシーを制御していることが分かった。

B-25-5-1気道壁の単一細胞空間マップにより、健康および喘息における炎症性細胞エコシステムとその相互作用が明らかに➡細胞の空間配置に違いがJoulia R et al. A single-cell spatial chart of the airway wall reveals proinflammatory cellular ecosystems and their interactions in health and asthma. Nat Immunol 2025; 26: 920-933. ★★

健常者および喘息患者の気道壁における細胞の空間配置と遺伝子発現を、単一細胞空間トランスクリプトーム解析により包括的に可視化した。上皮および粘液腺領域には、アラーミンやケモカインを高発現する細胞群(炎症性ハブ)が存在し、特定の構造細胞と免疫細胞が密接に相互作用していることが示された。とくにACKR1などの受容体が炎症メディエーターの局在保持に関与し、AREG発現肥満細胞がこれらのハブ内で顕著に観察された。抗炎症治療を受けていても、喘息患者の気道粘膜では細胞間距離の減少など組織リモデリングが継続しており、炎症性エコシステムの異常な構築が示唆される。

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滋賀県立総合病院
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