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最新の文献から【基礎的研究】

B-24-3-1 いかにして食事由来終末糖化産物(AGE)が食物アレルギー発症を促進するのか⇒AGEと食物アレルギーをつなぐエビデンスPaparo L et al. How dietary advanced glycation end products could facilitate the occurrence of food allergy. J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 742-58. ★★

AGEはアミノ酸、ペプチド、たんぱく質などと糖の間の酵素非依存性反応であるメイラード反応によって生じ、超加工食品の構成成分である。AGEは酸化ストレス、炎症を引き起こし、組織やたんぱく質を構造的、機能的に障害する。本研究では、AGEが食物アレルギー発症に関与しているとの仮説を検証。In vitroでヒト培養細胞を用いた実験では、AGE曝露によって様々な障害反応が生じ、in vivoで食物アレルギー小児では対照児と比べて食事からのAGE摂取が多く、皮膚へのAGE蓄積が見られた。AGE摂取制限が、食物アレルギー発症予防につながる可能性を示唆。

 

B-24-3-2 アトピー性皮膚炎マウスモデルにおいて、Ly6C高発現単球由来のI型インターフェロンが2型炎症を抑制する⇒単球の役割にフォーカスMiyagawa F et al. Type I IFN derived from Ly6Chi monocytes suppresses type 2 inflammation in a murine model of atopic dermatitis. J Invest Dermatol 2024; 144: 520-530.

アトピー性皮膚炎における単球の役割はあまり知られていない。本研究では、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた検討で、Ly6Cを高発現する活性化された単球がI型インターフェロン産生を通じてTh2炎症反応を抑制する方向に働いていることを報告。

 

B-24-3-3 生後初期のアレルギー性喘息において、マスト細胞活性化が血管内皮細胞と血管周囲細胞との間の反応を障害する⇒マスト細胞が血管にストレスをかけるJoulia R et al. Mast cell activation disrupts interactions between endothelial cells and pericytes during early life allergic asthma. J Clin Invest 2024; 134: e173676.

新生児期のマウスを用いた実験や小児喘息患者の肺組織の解析を通じて、マスト細胞由来のプロテアーゼが血管周囲細胞と血管内皮細胞との間の構造を破壊し、長期にわたる血管障害を引き起こすことを示した。

B-24-2-1 黄色ブドウ球菌プロテアーゼが好酸球による皮膚炎症を引き起こす⇒プロテアーゼが炎症の橋渡し役にKline SN et al. Staphylococcus aureus protease trigger eosinophil-mediated skin inflammation. PNAS 2024; 121: e2309243121. ★★★

皮膚への黄色ブ菌定着と引き続く好酸球浸潤がアトピー性皮膚炎をはじめ様々な皮膚炎症性疾患を引き起こすが、その詳細な機序は不明であった。本研究では、マウスモデルを用いた実験で、黄色ブ菌由来のプロテアーゼが角層細胞のIL-36α発現を促し、IL-36受容体を介した好酸球浸潤と引き続くIL-17A、Fの産生を亢進させることで、皮膚炎症が起こることを解明。

 

B-24-2-2 細菌叢由来の酪酸がヒストンデアセチラーゼ3(HDAC3)抑制を介してタフト細胞分化を制限し、腸管の2型免疫反応を修飾する⇒酪酸の新たな作用Eshleman EM et al. Microbiota-derived butyrate restricts tuft cell differentiation via histone deacetylase 3 to modulate intestinal type 2 immunity. Immunity 2024; 57: 319-332. ★★★

タフト細胞は腸管のTh2免疫反応を調節していることが知られている。本研究では、マウスモデルの解析などを通じて、腸内細菌がタフト細胞分化に与える影響を検討。腸内細菌由来の酪酸がタフト細胞分化をHDAC3を介したエピジェネティックな機序で抑制し、結果として腸管内のTh2反応を抑制することを見出した。

B-24-1-1 化膿性汗腺炎やアトピー性皮膚炎におけるIRAK4分解剤:第1相試験⇒ヒトでの効果を確認Ackerman L et al. IRAK4 degrader in hidradenitis suppurativa and atopic dermatitis; a phase 1 trial. Nat Med 2023; 29: 3127-3136.

IRAK4によって活性化されるIL-1受容体による炎症反応が化膿性汗腺炎やアトピー性皮膚炎の病態に関与している。本研究では、IRAK4を分解する薬剤であるKT-474の効果をヒトで検討。健常者に投与したところ実際にIRAK4の分解が確認され、患者への投与では症状の改善が認められた。

 

B-24-1-2 乳児の腸内ウイルス叢が細菌とは独立して就学前喘息リスクと関連している⇒細菌だけではなかったRodriguez CL et al. The infant gut virome is associated with preschool asthma risk independently of bacteria. Nat Med 2024; 30: 138-148. ★★

デンマークで647名の1歳児コホートを対象に、腸内ウイルス叢(virome)を検索し、その後の喘息発症との関連を検討。特定の溶原性ファージ(特に19種のcaudoviral families)が喘息発症と関連していた。さらに、その関係性はTLR9遺伝子多型によって修飾された。特定のファージと宿主の免疫機構が喘息発症に影響している可能性を示唆。

 

 

B-23-11-1 食物繊維を与えないマウスにおいてAkkermansia muciniphilaは食物アレルギーを悪化させる⇒野菜不足が食物アレルギーを促進?Parrish A et al. Akkermansia muciniphila exacerbates food allergy in fibre-deprived mice. Nat Microbiol 2023; 8: 1863-1879. ★★★

マウス実験で、食物繊維を欠乏する食事を与えることで腸管内においてムチン分解性のAkkermansia muciniphila菌が増殖し、食物アレルギー症状の悪化につながることを発見。食事依存性に腸内細菌が変化して食物アレルギーに結び付くことを示した。

 

B-23-11-2 アレルギー児において疾患特異的T細胞を特徴付け定量化する牛乳エピトープの同定⇒T細胞の違いから疾患の経過を捉えるLewis SA et al. Identification of cow milk epitopes to characterize and quantify disease-specific T cells in allergic children. J Allergy Clin Immunol 2023; 152: 1196-209. ★★★

147名の牛乳アレルギー小児の末梢血を用いて抗原エピトープのセットと反応させ、抗原特異的T細胞を解析。患者群ではFOXP3陽性T細胞の比率が高く、それは遺伝子パターンや表面受容体発現パターンから考えて通常の制御性T細胞とは異なっていた。さらに抗原特異的CD127陰性CD25陽性細胞の比率が高く、診断に有用であった。

 

B-23-11-3 USP7-STAT3-granzyme-Par-1の枢軸がIL-5産生性Th2細胞分化を促進することによりアレルギー性炎症を調整する⇒Th2分化を促進するTh2サブセットKumagai J et al. The USP87-STAT3-granzyme-Par-1 axis regulates allergic inflammation by promoting differentiation of IL-5-producing Th2 cells. PNAS 2023; 120: e2302903120. ★★

アレルギー性炎症初期にセリンプロテアーゼであるgranzymeAおよびBを産生するTh2細胞が分化して、Par-1を介してMAPKのリン酸化を促すことにより、マウスおよびヒトのTh2からのIL-5、IL-13産生を亢進させることがわかった。granzyme産生はUSP-7-STAT3経路によって調節されていた。USP7-STAT3-granzyme-Par-1の経路がアレルギー性炎症に重要であり、治療ターゲットになる可能性がある。

B-23-10-1 アトピー性皮膚炎において、IL-13は皮膚シュワン細胞を活性化して、CCL-7依存性の痒みシグナルを促進する⇒痒みの新たなメカニズムを解明Zhang W et al. IL-13 activates cutaneous Schwann cells to promote CCL7-dependent pruritic signaling in atopic dermatitis. J Invest Dermatol 2023; 143: 2322-2326.

皮膚のシュワン細胞が痛みを惹起する役割があることは知られていたが、痒みとの関連は不明であった。本研究では、ヒト細胞やマウス実験を通じて、シュワン細胞がIL-13刺激に反応してCCL7を産生し、痒みを誘発することを示した。実際、アトピー性皮膚炎病変部ではCCL7発現が亢進していた。

 

B-23-10-2 肥満で悪化するアトピー性皮膚炎においてCD36-SREBP1枢軸がTSLP産生を引き起こす⇒肥満とアトピー性皮膚炎の関係に新たな視点Yu J et al. CD36-SREBP1 axis mediates TSLP production in obesity-exacerbated atopic dermatitis. J Invest Dermatol 2023; 143: 2153-2162. ★★

肥満でアトピー性皮膚炎が悪化するメカニズムについてマウス実験で検討。CD36-SREBP1経路の活性化に伴う皮膚局所の脂肪蓄積がTSLP発現亢進につながることを示した。

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