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滋賀県大豆IPM(総合的病害虫・雑草管理)実践指標

IPMとは、「総合的な病害虫・雑草管理」と定義されています。

総合的病害虫・雑草管理とは、利用可能な防除技術を経済性も含めて検討し、病害虫や雑草の発生を抑制するための手段を総合的に講じるもので、人の健康に対するリスクと環境への負荷を軽減、あるいは最小の水準にとどめる技術のことです。

滋賀県の実践指標を下記に示しましたので、IPMの取組についてチェックしましょう。

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1.評価方法

  • 取組状況を確認する。
  1. 作付け前に、前年作の実施状況をチェックして、○の数を数えて下段に合計数を記入します。
  2. 作付け期間中に、実施状況をチェックして、○印を付けていきます。
    (前年作で実施できなかった項目については、できるだけ実施できるようにしましょう)
  3. 収穫後に、○の数を数えて下段に合計数を記入します。
  4. 次年作の実施目標を立てましょう。
    (毎年作ごとに改善を積みかさね、できる項目には全て○が付くようにしましょう)
  • 管理ポイントは、前年作の収穫後から始まります。
(表)
管理項目 管理ポイント チェック欄:前年度の実施状況 チェック欄:今年度の実施状況 チェック欄:来年度の実施目標
ほ場の準備 排水対策等 湿害回避および病害予防のため、浅耕うね立同時は種を行う。
ほ場に排水溝を設置し、排水を良くする。
栽培管理など 種子の準備とは種 指定種子生産ほ場で生産された種子を使用する。
塗沫処理または粉衣処理による種子消毒を実施する。
栽培方法に合わせ、は種時期とは種量を適正にする。
微生物農薬の利用や耕種的防除対策 雑草の発生状況を確認し、中耕培土を適期に行う。
害虫の密度抑制やウイルス病感染抑制のため、ほ場およびその周辺の除草を行う。
ウイルス病や茎疫病等対策のため、発病株の抜取りを徹底する。
ハスモンヨトウ対策として、群せいする若齢幼虫期に捕殺・除去する。
害虫対策には天敵に影響の少ない微生物農薬(BT剤、核多角体ウイルス剤など)やIGR剤を有効に使用する。
病害虫の発生に応じた防除の実施 関係機関が発表する病害虫発生予察情報等を入手し、病害虫の発生状況、発生予測に関する情報を確認する。
ほ場内を見回り、病害虫の発生や被害を把握するとともに、気象予報を考慮して防除の要否を判断し、適期防除に努める。
収穫・乾燥 紫斑病および腐敗粒の対策として、成熟後速やかに収穫・乾燥を行う。
農薬の使用全般 農薬の使用全般 薬剤散布の際は、飛散しにくい剤型や散布ノズルを使用するなど適切な飛散防止措置を講じる。
薬剤の選択に際しては、同一系統薬剤の連続使用を避け、異なる系統の薬剤によるローテーション散布を行う。
各農作業の実施日、病害の発生状況、使用した農薬の名称、使用時期、使用量、散布方法等を作業日誌として記録する。
○の数の合計

2.管理ポイントと環境影響等との関係

(表)
管理ポイント 管理ポイントの考え方や病害虫・雑草の発生抑制効果など
排水対策等 浅耕うね立同時は種を行う。 湿害の回避と土壌伝染性病害の予防につながる。発芽率が良好となり、初期生育が確保されることで、早期にほ場を作物が覆うこととなり、その後の雑草の抑草効果が期待できる。
ほ場に排水溝を設置し、排水を良くする。
種子の準備とは種 指定種子生産ほ場で生産された種子を使用する。 種子伝染性病害が回避され、安定した発芽率が得られる。
塗沫処理または粉衣処理による種子消毒を実施する。 種子消毒を実施することで、ハトなどの食害抑制や紫斑病対策がとれる。また、アブラムシ類やフタスジヒメハムシに対して少ない薬剤で効率的に防除が実施できる。
栽培方法に合わせ、は種時期とは種量を適正にする。 は種時期が早すぎたり、は種量が多すぎると生育後期に過繁茂になりやすく、アブラムシ類、べと病などの病害虫の多発生を招きやすい。
微生物農薬の利用や耕種的防除対策 雑草の発生状況を確認し、中耕培土を適期に行う。 中耕培土を行うことで、雑草の発生を抑制できる。雑草があまり大きくなりすぎると、除草効果が劣る場合がある。
害虫の密度抑制やウイルス病感染抑制のため、ほ場およびその周辺の除草を行う。 ほ場内やほ場周辺の雑草を除去することで、アブラムシ類やハムシ類などの発生を抑制する。また、マメ科などの雑草はウイルス病の発生源となりうるので、注意が必要である。
ウイルス病や茎疫病等対策のため、発病株の抜取りを徹底する。 生育中に発生した発病株は重要な伝染源となる。放置すると健全な株に病害が広がるので、なるべく早期に抜き取り、ほ場から持ち出し処分する。
ハスモンヨトウ対策として、群せいする若齢幼虫期に捕殺・除去する。 ハスモンヨトウの若齢幼虫は、1枚の大豆の葉に群せいしている。これを「白変葉」と呼び、除去することでまとまった捕殺が可能である。
害虫対策には天敵に影響の少ない微生物農薬(BT剤、核多角体ウイルス剤など)やIGR剤を有効に使用する。 微生物農薬には、チョウ目害虫に効果のあるBT剤やハスモンヨトウのみに効果のある核多角体病ウイルス製剤などがある。また、IGR剤は、一般的にクモなどの天敵に影響が少ないとされている。このような農薬を活用することで天敵の保護につながり、害虫の増殖を抑える効果や薬剤抵抗性発達の抑制効果が期待される。
病害虫の発生に応じた防除の実施 関係機関が発表する病害虫発生予察情報等を入手し、病害虫の発生状況、発生予測に関する情報を確認する。 県や地域の発生予察情報を入手し、該当情報をファイルする等、後でチェックできるようにした場合に○印を付けることができる。このような情報を参考にして、大豆ほ場を見回り、病害虫の発生が確認された場合、最も効果の得られるよう、その後の天気予報なども考慮して、防除の実施を決定する。
ほ場内を見回り、病害虫の発生や被害を把握するとともに、気象予報や効果的な防除時期となるよう、防除の要否を判断する。
収穫・乾燥 紫斑病および腐敗粒の対策として、成熟後、速やかに収穫・乾燥を行う。 紫斑病や腐敗粒は収穫後に高湿度の場所に放置しておくと、被害が拡大するので、なるべく速やかに乾燥作業に取りかかる。
農薬の使用全般 薬剤散布の際は、飛散しにくい剤型や散布ノズルを使用するなど適切な飛散防止措置を講じる。 周辺環境や周辺農作物への農薬の飛散を防止する。飛散しやすい粉剤などでも、風の弱い時間帯に散布するなどできる対策を講じる。
薬剤の選択に際しては、同一系統薬剤の連続使用を避け、異なる系統の薬剤によるローテーション散布を行う。 病害虫の薬剤抵抗性の発達を防止するとともに、農薬使用量削減を図ることができる(薬剤抵抗性病害虫には当該農薬の効果が低いため追加防除の必要性が大きくなる)
各農作業の実施日、病害の発生状況、使用した農薬の名称、使用時期、使用量、散布方法等を作業日誌として記録する。 防除の記録をチェックすることは効率的な防除につながるとともに、農作物の安全性の確保と確認ができるようになる。

注:病害虫発生予察情報は下記ホームページで公開しています。
滋賀県病害虫防除所ホームページ

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お問い合わせ
滋賀県病害虫防除所 
電話番号:0748-46-4926
FAX番号:0748-46-5559
メールアドレス:[email protected]
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