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企業と子どもで描く滋賀の幸せな未来とは

こどなBASE キックオフトークセッション

【主旨】

滋賀県では、将来社会の担い手となる子ども・次世代への体験機会や子どもの課題解決につながるプロジェクトを企業等事業者と共に創出していく「こどなBASE」を立ち上げました。

事業の開始にあたり、滋賀県副知事をはじめとする様々な立場の有識者によるトークセッションを開催。本事業立ち上げの経緯や期待すること、また、企業等が子ども・次世代と未来をつくっていくために重要なことを、登壇者それぞれの視点で語っていただきました。

企業・団体等多くの皆様にご参加いただきました。

【当日の様子】

当日のアーカイブ動画は以下よりご覧いただけます。 ※動画のスクリーンショット、カメラ等撮影はご遠慮ください。

(YouTubeリンク)

https://youtu.be/QsgfxXWSBp

【イベントレポート】

登壇者による基調講演

●滋賀県副知事 大杉佳子

1997年文部省(現・文部科学省)入省以来、教育分野を中心に担当し、学習指導要領改訂の中核を担う。その後、文部科学省高等教育局・初等中等教育局などの役職を歴任。2022年8月より滋賀県副知事に就任。

滋賀県大杉副知事

テーマ:滋賀でつくる「子どもまんなか」社会

日本財団の18歳意識調査(2019年)によると、【将来の夢を持っている】【自分で国や社会を変えられる】【自分の国に解決したい社会課題がある】の割合が国際比較して、著しく低い日本の子どもたち。


大杉「様々な要因がある中、なんとかしないとと感じました。子どもが主体的に道を開いていく環境を議論する中で滋賀県では「こどなBASE」への問題意識が高まりました。」

滋賀県では、子ども政策推進本部を2023年4月に設置し、子どもの声を政策に取り入れています。その礎となるのは学習指導要領と同じ「子どもの生きる力を育む」こと。

大杉「今の学習指導要領の改訂で一番大切にしたのは「社会に開かれた教育課程である」こと。教科の学びの意義は、その後の人生に活かしていくことにあります。それが生きる力を育むことにつながります。そのためには、子どもの教育環境に企業・社会が連携することが必要です。その中で、子ども自身が社会にアクションすることで何か変わる可能性があるという実感を持てることが大事だと思っています。」
「こどなBASE」を媒介に子どもの成長を支えつつ、協働することで経済・社会の調和につなげていけたらとお話いただきました。

●放課後NPOアフタースクール代表理事平岩国泰氏

大学卒業後、株式会社丸井入社。2004年長女誕生をきっかけに、放課後・学校の課題に気づき2005年放課後NPOの活動開始。文部科学省中央教育審議会委員(2013~2019年)、2017年より渋谷区教育委員。2019年より新渡戸文化学園理事長。

特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール平岩理事

テーマ:子どもたちを取り巻く課題と解決の方向性

出生数過去最少を毎年更新。50年後の推計総人口・年少人口(0~14歳)の大幅な減少。それに反して自ら命を絶つ若者が昨年過去最多。日本はG7の中で唯一、10代の死因の1位が自殺。ユニセフの子どもの幸福度調査によると精神的幸福度で日本は37/38位。
大変厳しいデータを示しながら話を進める平岩氏。

平岩氏「子どもの幸せと引き換えに経済成長した日本という国。幸福度のベース自己肯定感が、日本人は低すぎると感じています。」

 

大きくとらえると、3つの社会課題があるそうです。
【子どもの幸福度が低い】・【孤育て社会】・【学校・家庭で背負うのは限界】

 

平岩氏「この課題解決のキーワードが「居場所」。居場所が増えるごとに自己肯定感と将来の希望は上がっていくと、私たちは期待しています。」

 

現在こども家庭庁で議論されている指針は「居たい・行きたい・やってみたい」がキーワード。この「やってみたい」の部分を担うことが企業には期待されているそうです。
「こどなBASE」で体験・チャレンジの機会を創り出し、子どもたちに心の居場所を一緒につくりたいと呼び掛けました。

●株式会社福市代表取締役髙津玉枝氏

メーカー・商社勤務を経て、マーケティング会社設立後、2006年に株式会社福市を設立。「持続可能な社会のために行動する人を増やす」をミッションにフェアトレードの普及に携わる。自分が購入することで誰かがハッピーになる仕組みづくりに取り組む。

株式会社福市代表取締役髙津玉枝氏

テーマ:ポストSDGs時代に求められる企業の価値観


フェアトレードの仕事柄、途上国でイキイキとした子どもたちにたくさん出会った髙津氏。
カンボジアの子どもが、「自分たちで国の課題を解決したい、もっと国を豊かにするために外交官になりたい」と語ってくれたそうです。

 

髙津氏:「大人が思う以上に子どもは未来について深刻かつ真剣に、自分たちができることからどうアクションを起こすか考えています。」


2019年ロンドン大学で、気候変動へのアクションとして学生発案で学食の牛肉のメニューが廃止されたり、日本の高校生が自分が好きな魚のことを調べていくうちにNGOを立ち上げたという事例を紹介していただきました。
 

髙津氏「SDGsだから子どもに何か教えてあげるではなく、大人よりずっと先を見ている子どもたちと対話するスタンスで取り組むと、良い未来が拓けるのではとワクワクします。」

 

企業の皆さんは、自分たちも勉強して子どもたちと対話する姿勢が大事だとお話してくださいました。

●しがとせかい株式会社代表取締役中野龍馬氏

「滋賀を世界で一番住みたいまちにする。」をビジョンに掲げ、しがとせかい株式会社を経営。中小企業の広報支援、県内2か所のコワーキングスペースの運営、「ホンデシガ」の運営を行う。滋賀が大好きな37歳。

しがとせかい株式会社代表取締役中野龍馬氏

テーマ:企業と子どもの関わりから見えた相乗効果

12年ほど会社経営をする中野氏は、教育現場での職業講話が増えているそうです。
まず本題に入る前に、2枚の写真スライドを見せていただきました。そこには、手をたくさん挙げる小学生と誰も挙手しない高校生の写真。その差は歴然としています。

 

中野氏「質問内容は同じ、「この中で、仕事やりたいって思っている人、手をあげて」なんです。そして大人を代表して、仕事=面白くないと思わせていることを僕が謝るんです」
 

子どもたちが働くことに魅力を感じるには、大人(企業)は何をするべきか。
重要なのは「好き・得意を仕事にする」を失敗しながら経験することと話す中野氏。

 

中野氏「基本的に子ども扱いしない、責任は大人がとってお金は大人が出す、そのなかで子どもたちにどれだけ失敗させられるか、それが僕らにとったら成績やと思っています。」

 

こども家庭庁をはじめ、滋賀県・19市町など行政は子どもが安全に暮らせる社会をつくってくれているので、企業としての役割は子どもがワクワクするような社会をつくること。

 

中野氏「ただ体験を提供するだけじゃなく、子どもたちがワクワクして面白くて失敗できてチャレンジできるようなことを試してできる場がこどなBASE」

と期待を込めてお話いただきました。

登壇者によるパネルトーク

4名の基調講演のあと、大杉副知事・高津氏・中野氏によるパネルトークを実施しました。コーディネーターは放課後NPOアフタースクール平岩氏が務めました。

トークセッションの様子

 

平岩氏:子どもにとって体験の重要性という視点からお聞きします。幼少期の経験で、今の人格生成に大きく影響を受けた体験や思い出はありますか?


大杉:思い出すのはおじいちゃんの庭ですね。孫のために滑り台や鉄棒がありました。私は土とか実とか何でも口に入れる子どもだったので、親が後を追いかけまわして大変だったと聞いています。何でも試してみるとか食欲旺盛なところが、そこに原点があるのかな。
 

髙津氏:私の親は先進的で、中学1年生でまだ英語もほとんど理解していない状態の私を国際交流で2か月間ホームステイに行かせたのです。日本人との交流が無いまま、ステイ先で楽しく過ごして2週間ほど経った頃、【eat=食べる】と理解できたのです。案外子どもってそんなこと知らんでも生きていけると今でも自分の中の自信になっています。

中野氏:僕の母もクレイジーな人で(笑)「失敗しろ」とも「やってみろ」とも言わず、ただ「好きなことをやったらいい」としか言わないんです。僕が18歳前後くらいのお正月にパチンコに誘われて。母にお金を出してもらったけど、負けてしまってお年玉没収されたんです。その時に世知辛いな、社会ってって感じたことを今思い出しました。

 

平岩氏:滋賀県としてどのような願いがあって「こどなBASE」はうまれたのでしょうか。

 

大杉:色んな考え方や見方が子どもの教育にはあり、最終選び取るのは子ども自身。教育の質の高さって何かを考えたときに、環境の質・大人たちの関わりの質と思っています。こどなBASEでは、全ての大人が子どもに関わることに参画できる接点を生み出していきたいですね。そういう中で、カッコいい大人に会ってもらいたいですね。

 

平岩氏:小学生が実際学校に居る時間は、生活全般のなかで17%くらいです。だから、学校外の影響は大きいですし、皆さんも学校外や放課後の時間で形成された人間性もあるでしょう。

今回滋賀県が学校外を含めた社会全体で子どもたちを育てようと打ち出している中で、体験の重要性をどのように考えていますか?

 

髙津氏:体験って、偶発的に出会うことの方が衝撃も学びも大きいんですよね。これから「こどなBASE」で体験として関わるなかで、大人が正しく正確にちゃんとするというよりは、もしかしたら大人も失敗して、子どもと一緒に恥をかいちゃってもいいのかな。その方が子どもも楽しいと思います。

 

中野氏:滋賀県全域で、面白い体験イベントはすでにたくさんあります。子どもは「家でゲームしたい」と言いますが、そういうイベントに行ったら絶対楽しい。僕たち大人が情報をしっかり取って、子どもをやる気にさせて連れていく。けど大人は後ろにいないことが重要かなと思っています。

 

平岩氏:企業から子ども・次世代へどんなメッセージが伝わると良いと思いますか?
 

中野氏:仕事って楽しい・ワクワクするんだよという体験を伝えること。そしてそれを伝える働く大人たち(企業側)もワクワクすることが重要な事かなと思います。

 

平岩氏:正面切って「仕事って面白いんだよ」と自分が子どものときに教えてくれた大人っていただろうかと考えてしまいます。髙津さんはいかがですか?

 

髙津氏:どうしてもSDGsっていうと、企業内の一部門の人だけがやりがちですが、こどなBASE担当になった方は、子どもたちに伝える3倍くらいの力をかけて、企業内どうフィードバックして伝えていくかを考えてほしいと思います。

 

平岩氏:企業内でどんなメッセージを伝えるかというのを話し合うプロセスにすごく意味合いがあるのでしょうね。

 

大杉:企業が大事にしていらっしゃるパーパス(企業の存在意義)を本気で伝えていただければと。子どもたちとの対話のなかで、そのパーパスが本物かが見えてくるのではと思います。

トークセッションの様子


平岩氏:企業によるアクションで大切にしてほしいことはありますか?

 

髙津氏:本当に地球がもつかもたないかのか瀬戸際の中で、大人たちが見ている未来と子どもたちが見ている未来は真剣度合いがかなり違うというのをいろんな場面で遭遇しています。「こうやったら子どもが喜ぶんじゃないか」という次元は止めた方がいいです。大人も子どもがみる何十年後先と同じ目線になって物事を進めていくという腹をくくるスタンスが求められます、と苦言を呈しておきます。

 

中野氏:キーワードは「社長が発案して、社長が実行して、社長が最後までやること」と思います。特に中小企業の社長が本気でやるのが重要かな。滋賀県には30,000社あって、その1%、300社にそういう社長がいたら子どもたちは「仕事めっちゃ面白いやん」となると思います。

 

大杉:令和10年に滋賀県立高等専門学校が開校予定で経営者訪問をする中、魅力的な経営者や世界シェアのある会社が滋賀にはあります。ただお悩みを伺うと県内企業の魅力が知られておらず、どうしても東京や大阪の企業をキャリアとして描いてしまう。ぜひ「こどなBASE」で本気のパーパスを伝えることで企業の魅力を伝えていただきたい。

 

平岩:全国的にもこのようなプラットフォームは無いので、「こどなBASE」が代表事例になるといいと感じています。

ゲストのお三方から、「こどなBASE」をきっかけに子どもと企業で共創して大きなイノベーションが起こることや学びの楽しさを取り戻すチャンスになるのではという期待を込めた熱いメッセージを最後にいただき、トークセッションは終了しました。

【こどなBASEについて】

大杉副知事、中野氏が「Best ofちょうどいい」「ちょうどいいけど刺激的」と口を揃えて魅力を語る滋賀県。
人が生活しやすく、ものづくり・近江商人発祥の地と素晴らしい技術と商いの芽もある土地柄です。
県内企業がもつ自社の強み・魅力で、次世代を担う子どもたちに出来ること。
ぜひ「こどなBASE」への登録で、今出来ることから一緒に踏み出してみませんか?

こどなBASEの詳細については、こちらのページをご覧ください。

【登壇者プロフィール】

滋賀県副知事 大杉住子

1997年に文部省(現・文部科学省)に入省。幼児教育、大学教育、キャリア教育など教育分野を中心に担当し、初等中等教育局教育課程課教育課程企画室長として学習指導要領改訂の中核を担う。その後、独立行政法人大学入試センター試験・研究統括補佐官を経て、文部科学省高等教育局私学部参事官、同省初等中等教育局幼児教育課長などを歴任。

2022年8月より滋賀県副知事に就任。

株式会社福市 代表取締役 髙津玉枝 様

富士ゼロックスを経て、マーケティング会社設立後、06年に(株)福市を設立。「持続可能な社会の ために行動する人を増やす」をミッションにフェアトレードの普及に取り組む。阪急百貨店うめだ本店 に直営店Love&senseを出店。震災後に東北支援プロジェクトEAST LOOPを創出し200名以上の被災者に仕事をつくる。15年から社会課題にアプローチする人材育成のための京都市イノベーション・キュ レーター塾の塾長を務める。講演・セミナー多数。国際NGOや非営利団体の理事など歴任。

しがとせかい株式会社 代表取締役 中野龍馬 様

「滋賀を世界で一番住みたいまちにする。」をビジョンにしがとせかい株式会社を経営。中小企業の広報支援、コワーキングスペース、滋賀県の関係人口拠点「ホンデシガ」の運営を行う。滋賀県のスタートアップとして2022年から新たにme株式会社を立ち上げ、フリーランスと中小企業の最適なAIマッチングアプリ「me」に挑戦中。

特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩国泰

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、経営企画・人事などを担当。2004年長女の誕生をきっかけに、2005年放課後NPOアフタースクールの活動開始。グッドデザイン賞(4回受賞)他各種受賞。2013年~2019年文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員。2019年より新渡戸文化学園理事長。未来の学校と放課後づくりに挑む。

【主催・運営】

・主催:滋賀県総合企画部企画調整課

・運営:特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール(こどなBASE事務局受託事業者)

【問い合わせ先】

滋賀県SDGs事業 こどなBASE運営事務局

(運営:特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール)

Mail:[email protected]

TEL:050-1752-4742(平日10:00-17:00)

担当:米村、小原、宮島