○滋賀県環境こだわり農業推進条例

平成15年3月20日

滋賀県条例第4号

滋賀県環境こだわり農業推進条例をここに公布する。

滋賀県環境こだわり農業推進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 環境こだわり農業の推進に関する施策(第7条―第12条)

第3章 環境こだわり農産物(第13条―第20条)

第4章 環境こだわり農業の実施に関する協定(第21条・第22条)

第5章 滋賀県環境こだわり農業審議会(第23条・第24条)

第6章 雑則(第25条)

付則

湖国の農業は、世界屈指の古い湖である琵琶湖の周りにおいてその営みが始まり、湖を取り巻く山々からの豊かな水、肥よくな土、穏やかな気候といった自然環境に恵まれながら、いにしえの時代から、人々の命の糧となる食料を生産するとともに、畿内の幾多の都にも供給するという重要な役割を担ってきた。

近年においても、湖国の農業は、都市近郊という社会的条件の下で、集落営農をはじめとする特色ある担い手により、米を中心とする多様な農産物を供給するとともに、その営農活動を通じて、豊かな農村社会と文化を築き、県土や自然環境を保全し、美しい田園景観を形成するなど、私たちの生活の安定や地域の発展に重要で多面的な役割を果たし続けている。

一方で、湖国の農業は、近年、米の生産過剰や担い手の減少、農村の過疎化など様々な課題を抱えるとともに、生産性の向上を追求するあまり、化学的に合成された農薬や肥料に依存するようになり、その結果、農業が本来有する自然循環機能が低下するだけでなく、ともすれば琵琶湖や河川の環境にも負荷を与えている。

今日、すべての資源には限りがあることが深く認識され、暮らしや経済活動等のあらゆる面において持続可能な循環型社会を形成していくことが求められる中で、私たちは、環境と調和のとれた農業生産活動を推進することによって、かけがえのない水資源である琵琶湖と共生する農業の発展を目指し、将来にわたり、消費者にとってより安全で安心な農産物を安定的に生産し、併せて、琵琶湖とそれを取り巻く田園を良好に保全し、そこに私たちの健康と心の安らぎを得たいと願う。

私たちは、この滋賀の地において、湖国の農業の健全な発展と琵琶湖等の環境を保全することを目指し、化学的に合成された農薬や肥料の使用を削減するなど、環境への負荷を低減し、農業の有する自然循環機能を高める新たな取組として、環境こだわり農業を私たち県民が一体となって推進することを決意し、ここに滋賀県環境こだわり農業推進条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境こだわり農業の推進に関し、県の責務等を明らかにするとともに、県の行う施策の基本となる事項を定め、環境こだわり農産物についての認証、環境こだわり農業の実施に関する協定その他の必要な措置を講ずることによって、より安全で安心な農産物を消費者に供給するとともに、環境と調和のとれた農業生産の確保を図り、もって本県の農業の健全な発展および琵琶湖等の環境保全に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 慣行的使用量 化学的に合成された農薬(以下「化学合成農薬」という。)および化学的に合成された肥料(以下「化学肥料」という。)について、県内における使用量を勘案して、規則で定める農作物(以下「対象農作物」という。)の種類ごとに、県内の営農活動において慣行的に使用される量として知事が定める量をいう。

(2) 環境こだわり農業 次に掲げる農業をいう。

 オーガニック農業(化学合成農薬および化学肥料を使用しないことならびに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方式を用いて行われる農業であって、たい肥その他の有機質資材を適正に使用し、農業排水を適正に管理して農作物を栽培するものをいう。)

 化学合成農薬および化学肥料の使用量が慣行的使用量を相当程度下回って行われる農業であって、たい肥その他の有機質資材を適正に使用し、農業排水を適正に管理し、ならびに地球温暖化の防止および生物多様性の保全に資する取組その他の環境との調和に配慮した措置を講じて対象農作物を栽培するもの(に掲げるものを除く。)

(3) 環境こだわり農産物 第13条第1項の知事の認証を受けた農産物をいう。

(4) 農業者等 農業を営む者(以下「農業者」という。)および集落を基礎として農業者が組織する団体その他の農業生産活動を共同して行う農業者が組織する団体のうち法人でない団体(代表者の定めのあるものに限る。)であって規則で定める要件に該当するものをいう。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(県の責務)

第3条 県は、環境こだわり農業の推進に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、および実施するものとする。

2 県は、環境こだわり農業の推進に関し、市町との連携を図るとともに、市町が行う環境こだわり農業の推進に関する施策との調整に努めるものとする。

(一部改正〔平成16年条例38号〕)

(農業者等および農業に関する団体の努力)

第4条 農業者等および農業に関する団体は、対象農作物に係る営農活動その他農業に関連する活動を行うに当たっては、環境こだわり農業の実施に主体的に取り組むよう努めるものとする。

(農産物販売業者の努力)

第5条 農産物の販売を業とする者は、その事業活動を行うに当たっては、環境こだわり農産物の供給が図られるよう努めるものとする。

(消費者の役割)

第6条 消費者は、環境こだわり農業に関する理解を深め、環境こだわり農産物の利用を促進する等環境こだわり農業の推進に積極的な役割を果たすよう努めるものとする。

第2章 環境こだわり農業の推進に関する施策

(基本計画の策定)

第7条 知事は、環境こだわり農業の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 基本計画には、環境こだわり農業の推進に関する長期的な目標、基本となる方針、施策の方向その他必要な事項を定めるものとする。

3 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ県民、農業者、農産物の販売を業とする者等の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ滋賀県環境こだわり農業審議会の意見を聴くものとする。

5 知事は、基本計画を策定したときは、これを公表するものとする。

6 前3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(営農技術指針の策定)

第8条 知事は、農業者等が環境こだわり農業を行うに当たり、そのよりどころとなる営農に関する技術的な指針(以下「営農技術指針」という。)を策定するものとする。

2 営農技術指針には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 化学合成農薬および化学肥料の使用量が慣行的使用量を相当程度下回って行われる営農方法に関する事項

(2) たい肥その他の有機質資材の適正な使用に関する事項

(3) 農業排水の適正な管理に関する事項

(4) その他環境こだわり農業を行うに当たって必要な事項

3 知事は、営農技術指針を策定し、または変更したときは、これを公表するものとする。

(広報、啓発等)

第9条 県は、県民、農業者、農産物の販売を業とする者等の環境こだわり農業についての理解を深めるため、広報、啓発その他の措置を講ずるものとする。

(農業者等の取組の促進)

第10条 県は、農業者等による環境こだわり農業の取組を促進するため、環境こだわり農業に関する技術の習得および向上に必要な情報の提供その他の措置を講ずるものとする。

(試験研究)

第11条 県は、環境こだわり農業の効果的な推進を図るため、環境こだわり農業に関する技術の開発その他必要な試験研究を行い、その成果の普及に努めるものとする。

(農業による良好な景観形成等)

第12条 県は、環境こだわり農業の推進を図るに当たっては、農業が多面的機能を有することにかんがみ、農業による良好な景観の形成および再生可能なエネルギー資源の供給の促進ならびに農業の自然循環機能の維持増進を図るため必要な施策を講ずるものとする。

第3章 環境こだわり農産物

(認証)

第13条 農業者等は、県内において次の各号のいずれにも該当する農産物を生産したときは、規則で定めるところにより、知事に申請して、当該農産物が次に掲げる基準に適合する旨の認証を受けることができる。

(1) 対象農作物に係る農産物であって、当該対象農作物の作付面積が対象農作物の種類ごとに知事が定める面積以上のものであること。

(2) 次に掲げる要件を満たす栽培方法により生産された農産物であること。

 化学合成農薬および化学肥料の使用量がそれぞれ慣行的使用量の5割以下であること。

 たい肥その他の有機質資材の適正な使用の方法として知事が定める方法が用いられていること。

 農業排水を適正に管理するための技術として知事が定める技術が用いられていること。

 地球温暖化の防止および生物多様性の保全に資する取組その他の環境との調和に配慮した措置として知事が定める措置が講じられていること。

2 知事は、前項の申請があったときは、当該申請に係る対象農作物の栽培方法その他必要な事項について調査を行い、当該農産物が前項各号に掲げる基準に適合するものであると認めるときは、その旨の認証をするものとする。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(環境こだわり農産物の表示)

第14条 第13条第1項の認証を受けた農業者等(以下「認証取得農業者等」という。)は、当該認証に係る農産物またはその包装もしくは容器に、当該農産物が環境こだわり農産物であることを示す表示を付すことができる。

2 前項の表示の様式は、規則で定める。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(小分け業者による表示)

第15条 農産物の小分けを業とする者(小分けして自ら販売することを業とする者を含む。以下「小分け業者」という。)は、前条第1項の表示の付された環境こだわり農産物について、小分け後の当該環境こだわり農産物またはその包装もしくは容器に同項の表示を付すことができる。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(氏名等の表示)

第16条 前2条の規定により表示を付す場合においては、当該表示を付そうとするものは、規則で定めるところにより、当該表示に併せて当該農産物を生産した認証取得農業者等(法人でない団体にあっては、認証取得農業者等またはその構成員)の氏名または名称その他規則で定める事項を表示しなければならない。

(一部改正〔平成19年条例20号・令和5年23号〕)

(認証の取消し)

第17条 知事は、認証取得農業者等が次の各号のいずれかに該当する場合は、第13条第1項の認証を取り消すことができる。

(1) 次条第1項の規定による報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、または同項の調査を拒み、妨げ、もしくは忌避したとき。

(2) 詐欺その他不正な手段により第13条第1項の認証を受けたとき。

2 前項の規定により認証を取り消された農業者等は、当該認証に基づき付された環境こだわり農産物であることを示す表示を抹消し、または除去しなければならない。

3 知事は、第1項の規定により認証を取り消したときは、その旨を公表するものとする。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(報告および調査)

第18条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、認証取得農業者等または第15条の規定により第14条第1項の表示を付した小分け業者に対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、またはその職員に、これらの者のほ場、事務所、事業所その他必要な場所に立ち入らせ、その業務の状況もしくは帳簿、書類その他の物件を調査させることができる。

2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(環境こだわり農産物の情報提供等)

第19条 認証取得農業者等は、環境こだわり農産物の普及のため、その生産する環境こだわり農産物の種類、出荷時期、出荷先その他の情報を消費者に提供するよう努めなければならない。

2 県は、率先して環境こだわり農産物を購入するよう努めるとともに、環境こだわり農産物の生産の状況に関する情報の提供その他の必要な措置を講じなければならない。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(環境こだわり農産物の県内消費の促進)

第20条 県は、県民が環境こだわり農産物を購入することができる機会の拡大を図るため、環境こだわり農産物の生産および県内における供給の促進に関し必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

第4章 環境こだわり農業の実施に関する協定

(協定の締結)

第21条 知事は、環境こだわり農業の推進を図るため、県内において環境こだわり農業を行おうとする農業者等と環境こだわり農業の実施に関する協定(以下「協定」という。)を締結することができる。

2 協定には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 協定の対象となる土地の所在地、区域および面積に関する事項

(2) 協定の対象となる対象農作物の種類およびその栽培方法に関する事項

(3) 協定の有効期間に関する事項

(4) 協定の変更または廃止の手続に関する事項

(5) 協定に違反した場合の措置に関する事項

(6) その他知事が特に必要と認める事項

3 協定の内容は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。

(1) 第13条第1項第2号に掲げる基準

(2) 栽培しようとする対象農作物の作付面積が相当規模であるとして対象農作物の種類ごとに知事が定める面積以上であること。

(3) 協定の有効期間は、5年間であること。

4 農業者等が協定を締結して環境こだわり農業を始めるに当たり第13条第1項第2号アに掲げる基準により難いと認められる事由がある場合は、前項第1号の基準のうち化学合成農薬および化学肥料の使用量に関する基準については、協定の有効期間のうち規則で定める期間に限り、同項の規定にかかわらず、規則で定める基準によることができる。

5 知事は、協定を締結する場合において必要があると認めるときは、あらかじめ滋賀県環境こだわり農業審議会の意見を聴くことができる。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(県の支援)

第22条 県は、協定を締結している農業者等に対し、当該協定に基づく環境こだわり農業の円滑な実施のため必要があるときは、経済的助成その他の支援を行うことができる。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

第5章 滋賀県環境こだわり農業審議会

(滋賀県環境こだわり農業審議会の設置)

第23条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき、知事の附属機関として滋賀県環境こだわり農業審議会(以下「審議会」という。)を設置する。

2 審議会は、この条例の規定により定められた事項を調査審議するほか、知事の諮問に応じ、環境こだわり農業の推進に関する事項を調査審議する。

3 審議会は、前項の調査審議を行うほか、環境こだわり農業の推進に関する事項に関し、知事に意見を述べることができる。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

(審議会の組織等)

第24条 審議会は、委員20人以内で組織する。

2 委員は、学識経験を有する者、県民から公募した者その他知事が適当と認める者のうちから知事が任命する。

3 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 委員は、再任されることを妨げない。

5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織および運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

第6章 雑則

(規則への委任)

第25条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(一部改正〔令和5年条例23号〕)

1 この条例は、平成15年4月1日から施行する。ただし、第3章および第4章の規定は、平成16年1月1日から施行する。

〔次のよう〕略

(平成16年条例第38号抄)

1 この条例は、規則で定める日から施行する。

(平成16年規則第66号で平成17年1月1日から施行)

(平成19年条例第20号)

この条例は、平成19年4月1日から施行する。

(令和5年条例第23号)

1 この条例は、令和5年4月1日から施行する。

2 この条例の施行の際現に改正前の第13条第1項の認証を受けている農産物または同項の規定によりされている認証の申請は、それぞれ改正後の第13条第1項の認証を受けている農産物または同項の規定によりされている認証の申請とみなす。

滋賀県環境こだわり農業推進条例

平成15年3月20日 条例第4号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
第9編 林/第1章 政/第1節
沿革情報
平成15年3月20日 条例第4号
平成16年10月25日 条例第38号
平成19年3月20日 条例第20号
令和5年3月22日 条例第23号