このページを訪れた皆さんの多くが、「計量」という言葉を初めて耳にされたのではないでしょうか。「計量」という言葉に専門的なイメージを持ち、自分とは無縁だと思う人が多いかもしれませんが、実はわたしたちの暮らしとかなり密接に関係しています。例えば、生活に欠かせない水道やガスの料金は、使った量を適切に「計量」して決められています。また、食肉などの商品の価格は、重さを正確に「計量」して設定しています。このように、わたしたちの日常生活や経済活動全般、さらには文化、医療、学術研究、スポーツなど、あらゆる業界の根底に「計量」が存在し、わたしたちの生活や社会を支えているのです。
わたしたちの生活や社会の基盤である「計量」が正しく行われるように、日本の計量制度は多くの歳月をかけて整備されてきました。そして現在、計量に関するすべてのことは「計量法」とよばれる法律で厳密に決められています。このページでは、計量制度の中でも特に生活に直結している内容に絞って解説しています。「計量」について興味を持つきっかけになっていただけたら嬉しい限りです。
長さ、質量、時間など計量の対象となる量を計るための器具や装置を「計量器」といいます。身の回りにはたくさんの計量器がありますが、それらは図1のように分類することができます。計量器のうち、生活や社会に対して特に重要な働きをしているとみなされた18種類を、「特定計量器」として法律で指定しています。特定計量器は、検定に合格し証印が付されることで取引や証明に使用できるという点で、他の計量器とは異なります。「家庭用特定計量器」は名称は似ていますが検定等の規定はなく、その点で決定的に「特定計量器」と区別されます。
特定計量器は、主に産業における取引や証明(精肉等の商品の売買や、学校等での健康診断など)において使用されています。身近なところでは、温度計やガソリンの給油メーター、タクシーメーター、質量計などがあります。これらの計量器は「検定」と呼ばれる試験に合格して、計量器に図2の「検定証印」もしくは「基準適合証印」が付けられていないと、取引などの用途に使用できないことが法律で定められています。 さらに、そのうち指定されたものについては、定期検査や立入検査など様々な検査を定期的に行い、使っているうちに性能等が落ちていないことを確認しています。
また、体温計や血圧計のように、一般家庭で使われる計量器の中にも特定計量器があります。これらは生命に関わる計量器であるため、用途に関係なく検定に合格していなければ、国内で販売してはいけないと法律で別に定められています。
このように、特定計量器は我々の生活と深く関係しているため、法律により厳正に管理されています。
はかりの中でも、家庭用の一般体重計であるヘルスメーターや乳幼児用体重計のベビースケール、調理用はかりであるキッチンスケールは、「家庭用特定計量器」に分類されます。これらは検定が法律で義務付けられておらず、取引や証明に使用できません。そこで、これら生活用の計量器には図3の丸正マークが付いており、特定計量器とは区別されています。
「商品量目制度」とは、「特定商品」が正しく計量され、販売されるための制度です。「特定商品」とは、食肉や野菜、魚介類、牛乳、味噌など、わたしたちの生活と密接に関係する商品として法律で指定された29種類を指します。「商品量目制度」では、商品に表示されている量と実際の商品の量の差が、法律で決められた範囲を超えないように定められています。この一定の範囲のことを「量目公差」といいます。法律では、内容量が表示量より少ない不足の場合について規定されています。一方、多すぎる場合の規定はありませんが、公正な取引につながるよう国のガイドラインが設定されています。この制度のおかげで、わたしたち消費者は、表示されている量を信用して商品を買うことができます。
「量目公差」を超えていないか、表1の早見表を使って確認してみましょう。「量目公差」は下の式を参照して求めることができます。このとき、「風袋」と呼ばれるラップ、トレー、シール、吸水紙や付属物のたれ、薬味などの重さは、商品の重さに入らないことに注意してください。
該当商品がない場合や詳細については、滋賀県計量検定所(077-563-3145)までお問い合わせください。
まず、「標準」の意味から説明します。社会には法律があって、スポーツにはルールがあるように、工業製品にもそれらに該当する “取り決め” があります。具体的には工業製品の大きさ、形、長さ、品質などを決めており、これを「標準」といいます。日本が自国の工業製品に対して定めている「標準」のことを「日本工業規格(JIS)」といい、いわば日本の工業製品が守らなければならないルールです。
JISは、様々な工業製品について細かく設定されています。例えば、乾電池は種類別に形や大きさ、電圧などが決められており、メーカーによってバラバラになることはありません。また、トイレットペーパーにもJISが定められていて、メーカーによって色や香りは違うことがあっても、形や大きさ、紙の性質など基本的な構造や材質は統一されています。
このように、「標準」に従って各製品の形状、寸法、品質などの規格を統一することを「標準化」といいます。国際化が急速に進んでいる今日では、「国際標準化機構(ISO)」によって国際的な標準である「ISO規格」が定められています。そして、JIS規格の多くはISO規格に準拠しています。このように、「標準化」は日本に留まらず世界的な動きになっています。
どうして規格を統一する必要があるのでしょうか。例えば、あるCDが勝手に独自の大きさや形で作られていたとします。すると、わたしたちはそれを購入しても再生することができませんし、再生するためにはそれ専用のCDプレイヤーを別に用意しなくてはなりません。CDの形状や品質が標準化されているおかげで、わたしたちはひとつのCDプレイヤーですべてのCDを再生することができるのです。
標準化されているのは、なにも形状や寸法、品質だけではありません。
デザインの標準化もあります。例えば、シャンプーのボトルに付いているギザギザや点字ブロックなどがそうです。これは、高齢の方や障害のある方にも配慮し標準化されたデザインであり、「アクセシブル・デザイン」といいます。このような統一されたデザインを取り入れることで、誰でも利用できるようになっています。
実は企業にとってもいいことがたくさんあります。例えば、ボルトなどの部品の形状や寸法が標準化されているおかげで部品の大量生産ができるため、製品の生産効率が上がるというメリットがあります。
他にも、品質が標準化されることで安全性が確保されたり、ISOに基づいた標準化により国際貿易がしやすかったりと、標準化を進めることで生じる利点は非常に大きいのです。
標準化を進めるうえで、単位を統一することが非常に大切になってきます。身の回りにはたくさんの単位がありますが、単位の統一にも長い歴史がありました。現在、世界で共通して使用されているほとんどの単位は、1960年の国際会議で採用された「国際単位系(SI)」です。SIでは、7つの基本物理量に対してそれぞれ基本単位(表2参照)を設定し、この7つの基本単位を組み合わせて他の物理的な単位を定義しています。つまり、7種類のSI基本単位がすべての単位の基盤になるため、これを変わらない量として定義することが非常に重要になってきます。例えば、1 メートルの長さを何を基準に決めるかということです。
1メートルという単位は、1983年に「光が真空中を1 / 299892458秒間に伝わる長さ」として定義され直しました。では、これ以前は何を基準に長さの単位を決めていたのでしょうか。驚くことに、一部の時代や地域では体の一部分を基準にしていました。しかし、これでは基準が人によって変わるため、取引などで非常に不便です。そこで、だんだんと変化しないものへと単位の基準が移っていきました。
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