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移住前に知っておきたい!そんな話を先輩移住者にぶっちゃけてもらう「滋賀ぐらしチャンネル」。「移住にどれだけお金がかかるの?」「どんな暮らしをしてるの?」など、気になるリアルな移住生活の実態を探ります。第3回は滋賀県蒲生郡日野町で古民家カフェを営む、五百木 誠(いおき まこと)さん、祥子(しょうこ)さんに語ってもらいました。
きたがわさん:古民家でカフェを経営されている五百木さんご夫妻です。どうぞよろしくお願いします。
ばばちゃん:そもそも移住されたきっかけ、なんで日野に?というお話から聞かせていただきたいのですが。
祥子さん:私は関西の出身で彼が名古屋の人なので、私たちはずっと名古屋の近くに住んでいました。仕事も名古屋に通ってたんですけど、定年になったら出来れば私は関西に帰りたいわって言ってました。
きたがわさん:じゃ、とにかく関西に帰りたかったっていうすごくシンプルな理由。
祥子さん:はい、シンプルな理由です。
ばばちゃん:その時は住むなら滋賀とは決めてなかったのですか?
祥子さん:最初は土地勘のあるところ、京都とか大阪とか奈良で探してたんです。大学が京都だったので京都か、実家が奈良なので奈良とか。でもなかなかいいとこがなくって・・・。
祥子さん:庭で畑をしたいなとか、家は小さくてもいいからできればちょっとええ感じの家がいいわ~とか。そういうところがなかなか見つけられなくて、範囲を広げて滋賀も探してみようと「滋賀県 空き家」で検索しました。
当時は自治体での空き家の登録制度みたいなものはあまりなかったんですけど、日野町は割と早くからやってて、たまたま検索した1番上に日野町の空き家登録制度があったんです。でもその時は本当に住むだけのつもりやから、別にお店をしようとかは考えてなかったんです。
誠さん:そう。お店をしようとか考えてなかった。
きたがわさん:あ、そうなんですね。空き家が良すぎた。リノベーションとか上手くいきすぎちゃったんですね。
祥子さん:いや、それもすごいお金をかけて直したんやったら、綺麗になって当然やけど、私たちそんなに予算もないから、地元のシルバー人材センターのおじいちゃんに色々直してもらったんです。
私たち名古屋で仕事をしてたので「できたら連絡するわ」って言ってくれてて、2週間ぐらいたってから「できたから見に来てや」っておじいちゃんから連絡が来て、見に来たらなんか・・・「あれ!?」みたいな。
きたがわさん:めっちゃええやん!みたいな?
祥子さん:そうそう。「どうしたん!?」みたいな。この土間の部分とかをちょっと直しただけですごいいい感じになって。
きたがわさん:見違えたんや~。すごいですね。
祥子さん:何千万もかけて直してないのに、こんなに変わるんやって思って。古民家って管理にお金がかかるから壊して建て替えたりするんですけど、そんなにお金かけなくても変わるっていうのを見てもらいたいなって。
きたがわさん:そこからなんでカフェに変わったんですか。
祥子さん:家に来て欲しかったんですけど、どこかわからんところから引っ越してきた人が「家空けてるんで、いつでもどうぞ」って言っても、まあ来てもらえないだろうな・・・と思って。
きたがわさん:誰やねんって!(笑)
祥子さん:そう!誰やねん!って(笑)。
ばばちゃん:本当に行っていいのかな?ってなりますよね。
祥子さん:それでは絶対来てくれへんなって思って、お店とかにしたらいいんじゃないかとか色々考えたんです。雑貨屋とかパン屋とか考えたけど、これといって自分がすごい得意やっていうのはなかったし。
そういえば私たち名古屋にずっといて、喫茶店文化の中にいたけど、当時日野にはカフェが1軒しかなくて日曜日がお休みやったんです。私たち日曜日しか来れないのに来たら休み・・・。名古屋から1時間半かけて日野まで来て、また30分ぐらい行かないと日曜日に開いてる喫茶店がないんですよ。
きたがわさん:名古屋から日野に見に来たときにはいつも閉まってると。
祥子さん:日野まで来てやれやれと思ったときに、まだ行かなあかんっていうのも大変で、そういえば日野町にカフェが無いからカフェやったらいいかなって。
きたがわさん:それがきっかけなんですか。大丈夫ですか?もっと「コーヒーが好きで」とか、それっぽい理由言わなくて(笑)。
「こだわりの」とか「スペシャリティー」とかコーヒーの袋に書いちゃってますけど。
祥子さん:好きは、好き(笑)。
誠さん:好きは、好きやったんですよ。だけど、カフェやろうなんて気はこれっぽっちもなかったです。
きたがわさん:それは言っちゃっても大丈夫なんですか。
誠さん:もちろんです。
きたがわさん:それにしてもちょっとガチ!すぎません?
誠さん:凝りすぎるところがあって。どんどんハマっていくんです・・・。
祥子さん:最初はコーヒーも自家焙煎とか全然考えてなくて、よく知ってる名古屋のお店のマスターが焙煎してるから、そこから買ってきた安定したクオリティの美味しい豆でいいやんって言ってたのに、ちょっとやってみようかなって。
ばばちゃん:スイッチ入っちゃった。
誠さん:こちらに来て、初めて焙煎体験みたいなものをやって、それからですね。おもしろかったんですよ。自分で作るコーヒーはやっぱり違う感じがするんですよね。
きたがわさん:はじめは焙煎機はなかった?
祥子さん:無い!無い!
誠さん:無かったです。
祥子さん:最初玄関に置いてある小さい焙煎機を買ったんですけど、それでは足りない・・・。もっと大きいやつって・・・。
きたがわさん:いま使ってる焙煎機はいつからですか?
誠さん:一年半ぐらい前です。
きたがわさん:まだ最近なんですね。念願のってやつですか。
誠さん:最近はね、もうちょっと大きいやつが・・・ほしい(笑)。
きたがわさん:なんと!(笑)発展し続けるんですね。すごいですね。
きたがわさん:移住を先に決めてて、家を探してたらいいところを見つけちゃったんですよね。そのときは仕事をする気はなかったんですか?
祥子さん:定年でしょ。彼はなんの仕事をする気だったのかわかんないけど・・・。
誠さん:ぼーっとしてようと。
きたがわさん:ぼーっと(笑)。ずっとお勤めされて、ひと段落しようかみたいな感じですね。
祥子さん:私は都会で仕事をずっとやってて、帰りも夜10時にオフィスを転がり出るみたいな生活をしてたので。
きたがわさん:けっこうバリバリやってたんですね。
祥子さん:なので、ちょっとゆっくりしたいわっていうのもあったし、パートぐらいの仕事やったら、どこかにあるんじゃないかなとか。
きたがわさん:もともと会社にお勤めされてた時は、何をされてたんですか?
誠さん:企業内のSEやってました。
きたがわさん:あ!エンジニアさんなんですね。
誠さん:システムエンジニア。
きたがわさん:システムエンジニア!?
祥子さん:凝り性。
誠さん:プログラムやってました。
きたがわさん:じゃ、職人気質はもともとあるんですね。
誠さん:たぶんそうですね。
きたがわさん:らっこやさんを始められてどれぐらいになるんですか?
誠さん:丸6年経って、7年目に入ったところです。
きたがわさん:ネット販売とかもされてるんですか?
誠さん:ネット販売もしています。
きたがわさん:すごいですね。着実に忙しくなってる感じはあるんですか?
誠さん:のんびりしようと思ってたのに、どんどん忙しくなってる・・・。
きたがわさん:確かに、「ぼーっとしよう」っておっしゃてたのに(笑)。
誠さん:私たちだけの力じゃないんです。近くにね、たまたまデザインをされる作家さんが住んでおられて、偶然の出会いでこんなに素晴らしいものが出来たと思ってます。
きたがわさん:なにか良い出会いを引き寄せられてるんですかね~。
きたがわさん:カフェをやってて、いいことってどんなことがありますか?
祥子さん:カフェをしててよかったなと思うこととはちょっと違うけど、滋賀は景色が本当に綺麗。お買い物に出るときとかでも、ちょっと町から離れると珍しくもなく綺麗な景色がいっぱいある。
ばばちゃん:日常の中にいっぱいありますよね。
祥子さん:例えば、夕暮れだったり朝だったり、そのときそのときで。
きたがわさん:それめっちゃわかります。滋賀って景色の美しさ、豊かさがすごくありますよね。僕らも湖岸を通って彦根から長浜とか行くんですけど、月1以上、車を停めて琵琶湖の写真撮ってます。
ばばちゃん:撮ってる。撮ってる(笑)。
きたがわさん:どんだけ琵琶湖見てんねんって思うけど。
ばばちゃん:今日の琵琶湖いいわーって。
祥子さん:私も車停めて見たい、景色が見たいってなる(笑)。
きたがわさん:ね。本当に毎日表情が違うし、色も違うし、滋賀の豊かさの1つですよね。それは求めてきたというよりも、来てみたら見つけたみたいな。
祥子さん:滋賀に来てから、毎日いろんなところで感じます。
きたがわさん:都会から移住して来られてとなると、人間関係に不安はありませんでしたか?
誠さん:はじめはありましたが、全く気持ちが変わってきます。
きたがわさん:変わってきます?
誠さん:ここに住むと地元の人たちとも色々話をして、自治会も出席しなきゃいけないですしね。町内会、それから日野町には祭りがあるんですよ。盛大に祭りをする町なんです。当然出席しなきゃいけないんですよ。でも、出席しなきゃいけないって思うんじゃなくて、自分の生活の変化を楽しむ。
きたがわさん・ばばちゃん:おー。
誠さん:全く問題ないです。
祥子さん:あまり人付き合いのいいタイプではなかったから、どうかなと思ってたんですけど意外と楽しそうに出かけて行くので、やってみたら意外とよかったなって。
きたがわさん:やってみたら意外とよかったっていうのはありますよね。
祥子さん:同年代の方が多くいらっしゃって話も合う。私はもともとずっと都会暮らしだったから、隣の人とも挨拶するぐらいでなんのお付き合いもなかったけど、ここに来てご近所のおじさんとかおばあちゃんとかが何かと話しかけてくださります。表に立って色々見ててくれるので、まぁここの町内で孤独死は絶対にないかなと(笑)。
誠さん:孤独死はできません(笑)
きたがわさん:みなさん丁寧にね、面倒見てくれるし。
祥子さん:大変丁寧に。私はそういう繋がりのあるところに来たかったから丁度よくて。
誠さん:住民の方もいい人ばかりです。普通にのんびりやっていくつもりで来れば、なんとかなると思います。
きたがわさん:カフェをしようとなって、なんで「らっこや」さんになったんですか?
誠さん:「らっこや」というのは、「気楽に過ごせる楽しい古い家」というイメージです。楽しい古い家。「楽古家(らっこや)」なんです。家内のこともいつからか「らっこ」って呼ぶようになり、もうそれが定着しちゃって。
ばばちゃん:古民家のいいところと困っているところがあればお聞きしたいです。
祥子さん:家を探してるときは古民家を探してるわけじゃなかったけど、一歩入ったときに空気感が違うっていうか。人工的なもので作られてないので、神社とかお寺とかに入ったときに感じるみたいな。
きたがわさん:すーっていう神聖な感じですか?
祥子さん:すごく素直に、古民家ってすごいなって思って。住んでからも特別な手入れはしてないんですけど、温かみとか艶とかが出てきて、家が喜んでくれてる感じがする。
きたがわさん:すごいな。それほんまにあるんでしょうね。住んでるうちにだんだん家が喜んでくれて、家が艶を出してくれるみたいな。家と人間の心が通いあうみたいなことがあるんやろな~。
祥子さん:古民家って結構寒くて、ここの家も確かに寒いんですけど、断熱は床下しか入れてなくて。壁とかその辺は何も触ってないですけど、お客さんとかに古民家なのに暖かいですねって言われます。
きたがわさん:お二人が温かいんですかね?
祥子さん:いや、多分・・・。
誠さん:障子が温かい。
一同:(笑)。
きたがわさん:若い人で移住したいなって人も増えてるみたいですね。
祥子さん:日野町は若い移住者の方が、私が知っているだけでもどんどん増えてる。古民家とかを借りて、自分なりにちょっと直したりして。
きたがわさん:子育て世代ぐらいの方ですか?
祥子さん:子育て世代とか、まだそれよりもうちょっと若い人とかが多い。音楽やってる子とか、手芸とか色んな手仕事をやってる子とか。個性的な人たちがたくさんですね。
きたがわさん:いいですね。若い人たちが移住してくれているってことは今から移住を考える人からしても頼り先もあるよねとか、いいきっかけになるかもしれないですね。
ばばちゃん:最後に、移住しようかなと考えている人に、背中を押してあげられるような一言をいただければなと思います。
誠さん:まあ、なんとかなります(笑)。ほんとになんとかなります。
きたがわさん:さっきの話だと、何するかも決めてなかったっていうところからですからね。
祥子さん:若い人ならなおのこと、意外と来てみてから色々できたりとか繋がりのなかにいろんな人がいたりだとか。
誠さん:私たち、60過ぎて始めましたから。だから若い人たちだったら実行力がありますから間違いなくやっていけると思います。
きたがわさん:滋賀ぐらしチャンネルで色んな方にお話聞かしていただきましたけども、皆さん共通しておっしゃるのは「とにかく現地に行こう!」「まずは足を踏み入れてみよう!」「移住先の人と会話してみよう」とおっしゃてるなと。あとは不便も含めてどう楽しむかっていうことが、共通してるのかなって改めて思いました。
ということで、今回は楽しいお話を五百木さんご夫妻にお伺いしました。どうもありがとうございました。
五百木さん夫妻・ばばちゃん:ありがとうございました!