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移住前に知っておきたい!そんな話を先輩移住者にぶっちゃけてもらう「滋賀ぐらしチャンネル」。「移住にどれだけお金がかかるの?」「どんな暮らしをしてるの?」など、気になる移住生活のリアルな実態を探ります。第2回は滋賀県東近江市の限界集落に移住した前川 真司(まえがわ しんじ)さんです。
きたがわさん・ばばちゃん:こんにちは~。お邪魔します。
前川さん:おはようございます。
きたがわさん:すごいな!これ何の足跡ですか?
前川さん:たぶん小動物。うさぎかキツネの足跡です。
きたがわさん:うさぎかキツネの足跡!ほんまにここに住んでるんですよね。
前川さん:いや、もうここですから。
きたがわさん:ここまで登ってきながら「ここ、人がほんまに住んでんのかな?」って思ってたら、バッと開けたから驚いた!ここに何人ぐらい住んでるの?
前川さん:ここは50軒ぐらい家があるんですけど、40軒が空き家で・・・。
きたがわさん:40軒空き家!?
前川さん:10軒に15~16人ぐらい住んでます。僕の一つ年上の人はもう65歳です。
きたがわさん:一つ年上の方が65歳!?前川さん、ダントツ若いね。ヤバイやん!30年後、自分しかおらへんかも・・・。
前川さん:いやいや、そういう集落なんです(笑)。
きたがわさん:いやぁ~、ほんまの限界集落やね。
前川さん:ちょうど奥に見えているあの山が藤原岳と言いまして、あの山の山頂から向こう側はもう三重県です。
きたがわさん・ばばちゃん:広っ!
前川さん:君ヶ畑町は長方形みたいな形で、甲良町の約2倍の大きさ、豊郷町の約3倍の大きさの1つの字(あざ)です。でもその中に住んでるのは、15~16人ぐらい(笑)。
きたがわさん・ばばちゃん:(笑)今日はいろいろ聞かせてください!
きたがわさん:改めまして、滋賀ぐらしチャンネル2人目は、奥永源寺君ヶ畑町にお住まいの前川さんです。よろしくお願いします!
きたがわさん:いやぁ~しかしね、まずは寒い!(笑)ここはどこですか?
前川さん:ここは、君ヶ畑町の氏神様が祀られている「大皇器地祖神社(おおきみきじそじんじゃ)」なんですけど、おそらくマイナス3℃くらいの気温かなと(笑)。
きたがわさん:もう、ビリビリというか、寒さと神様の神々しさと・・・。
ばばちゃん:両方ね!
きたがわさん:もう全部が神木っていうくらいにすごいね!
ばばちゃん:すごい立派な木が多いですね。
前川さん:樹齢がおそらく千年近く経っているものばかりなので。
きたがわさん:スケール感がすごい!この場所から今日はお届けします。
ばばちゃん:まずは前川さんが移住したきっかけを教えてください。
前川さん:出身は兵庫県の宝塚市なんです。2011年に東近江市内の八日市南高校という農業高校に教員として赴任したのをきっかけに、滋賀県の農業であるとか、地域の文化であるとか、色んなことの面白さに気付きました。
また、東近江市に「ムラサキ」という植物がありまして、これを栽培して地域活性化に挑戦したいという思いを抱くようになり、教員を辞めて地域おこし協力隊という制度にのっとって、2014年に兵庫県から君ヶ畑町に移住し、今年で8年目を迎えました。
きたがわさん:実際の生活って、かなりの山奥だし困ることはないんですか?
前川さん:暮らす上で特に困ることはないですね。のびのびと生活させていただいています。
きたがわさん:たとえば、買い物とか交通とかは?
前川さん:山奥のインパクト感はすごいんですけど、実は奥永源寺からだいたい1時間くらいで名古屋駅に行けてしまう。
きたがわさん:え?車で?
前川さん:車で。不便なんだか便利なんだか、不思議な山奥でして(笑)。車で30分ぐらい走れば東近江市の中心地にも下りていけるので、買い物も含めてなんら困ったことはないかなと。
初めて来た人はね、車1台しか通れない道に木が生い茂っているので、「この奥にほんま人が住んでいるのかな?」と思われることもあるみたいですけど。ただ、山奥の先にパッと開けて、日当たりも良くて、夏は涼しくて天国みたいな楽園のような場所です。
きたがわさん:自然と共に生きているような感じですよね。
前川さん:そうですね。冬は「雪とか大変じゃないですか」って言われるんですけど、夏は暑いもので冬は寒いものなんですよ(笑)。この自然の豊かさを都会で感じられないから、人間の心も体も不調をきたすだとか、辛い思いをされている方がいると思うとね、やっぱり夏は汗をかいて、冬は寒いって縮こまることが、人間らしさを取り戻すという意味でも必要じゃないかと。
そういった意味でも、君ヶ畑町は一番人間らしい暮らしができる場所だなと思ってます。心と体のふるさとみたいなところに居を構えるというのは、お金では買えない豊かさが味わえます。
きたがわさん:実はすごく豊かだったってことですね。
前川さん:そういうことです。奥永源寺は名古屋から1時間程度で来られることもあって、夏のキャンプ地としてすごく人気なんですよ。キャンプ場が8か所ぐらいあって、1シーズンで3万人ぐらいの人が来てるみたいなんですよ。
交通費と時間をかけてここでキャンプをすることが、都会の人にとっての贅沢であるならば、そこに毎日住んでいる私はどんだけ贅沢な暮らしをしているのかなって思います。
きたがわさん:確かに!めっちゃ贅沢やん!!
ばばちゃん:暮らす中で、ぶっちゃけお金ってどれぐらいかかるのか、気になるのですが・・・。
前川さん:自宅兼事務所の月の家賃がだいたい1万2500円。
ばばちゃん・きたがわさん:1万2500円!?
前川さん:年間にすると15万円ぐらいです。固定費としては3~5万円で収まってしまう。
きたがわさん:インターネットも引いてるんですよね?
前川さん:光回線も通ってますし、電気・ガス・水道・インターネット・携帯電話、なにもかもすべて問題なく通じます。
きたがわさん:じゃ、普通にネットショッピングとかしても?
前川さん:翌日に届きます。
きたがわさん・ばばちゃん:翌日!?
前川さん:はい。食料品に関しては、週に2~3回移動販売車も来てくれますし。
きたがわさん:インターネットがつながってることは、今はweb会議とかが増えてきてるし重要ですね。
前川さん:そうなんですよ。ソーシャルディスタンスどころじゃないくらい、人が少ない所でのびのびと農業しながら暮らし、仕事は全部テレワークです。東京や大阪含めて、全国の方とここにいながらにして仕事ができます。一番豊かな暮らしをこの1年間してきたなと思いますね。
きたがわさん:いま、仕事はどんなことをやってるのですか?
前川さん:移住してすぐは地域おこし協力隊として地域仕事をしてました。そこから独立して4~5年目になるんですけど、株式会社「みんなの奥永源寺」という会社を設立しまして、ムラサキという植物を使ったオーガニックコスメを開発・販売する事業を本業としてやらせてもらっています。
きたがわさん:すごいですよね!山奥でアンチエイジングの化粧品をつくっている・・・。僕も使わせてもらったことがあって、実は今朝もつけてきてるんですけど・・・。
ばばちゃん:え?どうですか??
きたがわさん:めっちゃ、いい!なんかしみわたる感じがすごいある!
前川さん:そうなんですよね。浸透率がすごく高いのと、100%植物性由来、食べても問題のない農産物エキスを使ってるんです。
限界集落でどうやって仕事を?って話ですけど、使用している「ムラサキ」は絶滅危惧種という特徴があって、暑さで枯れてしまうんです。奥永源寺のような標高が450~500mの山奥だと涼しくて枯れずに育てることができるんです。
きたがわさん:ムラサキは天然なんですか?
前川さん:私が栽培しています。耕作放棄地を開墾して、無農薬有機栽培で原材料からフルオーガニックで作っています。価値がないと言って見捨てられてしまった限界集落と耕作放棄地なんですけども、農薬や化学肥料に汚染されていないピュアな土壌が残っていたので、ここじゃないと栽培はできなかったと思います。
きたがわさん:限界集落に住んだこともすごいけど、それって実はすごいチャンスもいっぱいもらっていたということなんですね。
前川さん:そうです!そうです!都会で暮らす方が限界集落に移住となると「少子高齢化」や「不便」「将来どうなるの」と不安が多くなるかもしれないですけど、「SDGs」や「エシカル」が叫ばれるむしろいま、一番の価値が集まっているのがこの環境の整った君ヶ畑なんです。
きたがわさん:むしろ一番最先端の地ということですか?
前川さん:そういうことです!一周回って一番最先端です!
ばばちゃん:移住を考えている方へメッセージをお願いします。
前川さん:僕自身が都市部から移住してきたこともあって、都市部で満員電車に揺られて「働くために生きるのか」「生きるために働くのか」って考えながら一生を終えるのか、限界集落で人間らしい暮らしや自然環境と向き合いながら生きるのか、どっちが幸せだろうって。
自分の生き方や考え方、暮らし方を考えるきっかけがあったのならば、移住という手段を選んで自分の道を歩んでいただくのも一つかなと思います。
前川さん:もちろん、私みたいに起業するだけがすべてじゃないと思うので、市街まで30分、名古屋まで1時間だと思ったら、車の運転さえできれば通勤できるし、会社で働くこともできます。30分、1時間と満員電車に揺られる暮らしの方が僕は窮屈に思っています。
今回の話を聞いて、田舎暮らしも悪くないかなと思っていただけたらいいですね。
きたがわさん:はい、ありがとうございます。移住を検討している人も勇気をもらったと思います。今日はお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
ばばちゃん・前川さん:ありがとうございました!