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滋賀に気づいた人INTERVIEW#41 山口翔太郎さん

山口さんの画像

山口翔太郎さん

一般社団法人栗東市観光協会 事務局長
滋賀県→大阪府→京都府→滋賀県


 

この地域に
かっこいい大人がいるように
“故郷”を感じてもらえる場所づくり

暮らす場所を選ぶことは、生き方を選ぶこと。「ここで生きていきたい」と思う場所に、滋賀を選んだ人たちがいます。

今回ご紹介するのは、栗東市に住む山口翔太郎さん。栗東市で生まれ、再びこの地に戻ってきた山口さんには、“地域のかっこいい大人になりたい”という強い思いがありました。
生まれた場所で地域の魅力を伝える役割や、Uターン移住者としての目線から、この地で暮らすことについて教えていただきました。


 

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今の自分が地元に戻ることに意味があった

栗東市生まれ栗東市育ちの山口さんは、大学進学をきっかけに一度地元を離れ、再び栗東市で暮らす“Uターン移住者”です。栗東市を出たのは18歳の頃。アーチェリー選手として世界を目指すためでした。

「歴代のオリンピック選手を輩出してきた大阪の強豪校に進学しました。当時はバリバリのアスリートでしたね。寮生活で、朝は始発の電車に乗って練習場に行って、夕方までみっちり練習して、夜に大学で授業を受けるという生活を4年間続けました。それでも、日本代表としてメダルを取るようなレベルでないと、実業団に入って選手として生きていくことは非常に難しい世界でした」

大学卒業と同時に選手を引退し、京都にある国内外の一流ゲストが利用する会員制のホテルに就職。高いホスピタリティやおもてなしの精神を学びます。

「子どもの頃に家族で行った有馬温泉の旅館で、スタッフの方に『虫が好きだ』と何気なく話したら、翌日クワガタを捕まえてきてくれた思い出があるんです。子ども心にすごく印象に残っていて、こういうカッコイイ大人になりたいという思いが自分の中のどこかにずっとあった気がします。ホテル時代には、ゲストのお子さんから感謝の手紙をもらったり、『将来はお兄さんみたいになりたい』と言ってもらったりして、あの時のスタッフの方のような“カッコイイ大人”に少しは近づけたかな、という実感がありましたね」

社会人選手としてアーチェリーは続けつつ、趣味としてスノーボードを本格的に始めた山口さんですが、多忙な日々のなか趣味に時間を割くこともままならず。一流に触れる経験や、子どもの頃に憧れたかっこいい大人に近づくことができて、「やり切った」と感じた山口さんは退職を決意し、人生の息抜き期間としてスノーボードに没頭するため国内外を旅します。

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「北海道のニセコで働きながらスノーボードをしたり、カナダやニュージーランドにも訪れました。こうして訪れた先の文化や風習に触れることができたり地域の人と交流を持ったりした経験は今に活きています」

滋賀に戻り、東近江市の臨時職員として『やまのこ事業』の指導員の手伝いや施設スタッフを経験。子どもたちと触れ合う仕事をするなかで感じたのは、「子どもたちに、自分たちの地域にある価値をどう感じてもらうか」ということでした。その後、NPO法人の職員を経て、栗東市観光協会の職員に。生まれ故郷の栗東市に戻ります。

「僕たちから上の世代だと、定年まで都会で働いてから地元に戻って第二の人生を……という方も多いのですが、定年後に戻ってきても、地域や住んでいる人のことが全然わからないかもしれないし、地域のイベントに参加するなど体力的にも難しくなっていくんじゃないかと。それなら、元気で動ける今のうちに地元に戻って、積極的に地域と関わって、たくさんの人とつながりを深めていく方が面白いんじゃないかと思ったんです。いつかではなく、今この自分が地元に帰ることに意味があると思いました」


 

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外部を受け入れる包容力と、豊かな自然を身近に感じる場所

「栗東市は、東海道、中山道の交通の要衝として栄えてきた歴史があり、県外から入ってくることに対して比較的寛容な地域だと思いますね。近年で見れば、JRAのトレーニングセンターができたことで人口が増え、現在も栗東市全体で見ると人口は今も微増しているので、外部の人を受け入れる包容力みたいなものが他の地域に比べてあると感じます」

人口が少しずつ増えている栗東市は、インフラや生活に必要なものが一通り揃う便利な部分もあり、なおかつ自然が身近にあることも魅力の一つ。田んぼや山に囲まれたこの地域では季節ごとの変化を日々の中で感じる機会が多くあるといいます。

「子どものころは山や田んぼが遊び場で、祖父がウサギを素手で捕まえたりするほど自然豊かな場所でした。今では流石に難しいですが、それでも栗東市にはまだまだ豊かな自然がたくさん。季節を感じながら過ごす体験をより多くの人に知っていただきたいですね」

そんな思いから、手作業による田植えや稲刈り・芋掘りなどの収穫体験、伝統行事への参加、身近な自然をめぐるツアーなど、地域住民の方々にも協力を仰いで、単に観光地を紹介するだけではない体験型・体感型のイベントをたくさん企画されています。

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「いきなり住むのではなく、まずはこうしたイベントに参加して、どんな雰囲気の地域かを知っていただいたり、地域の人や自然に触れてもらったりするといいなと思います。また、住んでみるからこそわかるものもあると思うので、あまり深く考えずにいっぺん住んでみていただいても良いんじゃないでしょうか。『引っ越してきてくれてありがとう〜』って喜んでくれる人も多く、すごくウェルカムな雰囲気のある地域ですよ」


 

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「あれば良かった」で終わらせない
地域にあるものをどう生かすかは今の人たち次第

現在山口さんは、栗東市観光協会の事務局長として、市の観光振興に関する業務全般に携わっています。
事業計画と予算の策定、国や県、民間団体との調整、国の補助事業や実証事業の申請・獲得の動きから採択後の実行、文化財の公開事業、イベントやマルシェの運営、季節限定のバスの運行など、事務局長の仕事は広範囲にわたります。

「自治体における“観光”は、市民生活を豊かにするために県外の外貨を獲得する手段です。その上で僕たち観光協会は、地域の課題を解決しながら、地域と来訪者が共生・共存できるような価値を創造することを目的としています。単に観光客を増やせばいいというだけでなく、誰のための観光か、なんのために観光客を増やす必要があるのかという部分を自問自答しながら、その方法を模索しています」

市の予算だけではできることに限りがあるため、外部の支援を取り付ける役割も山口さんが担っており、プロジェクトに関わるメンバーをアサインしたり団体同士を取りつないだりするのも大切な仕事のひとつです。
山口さんが仕事をする上で大切にしているのは、この地域にないものを、『あれば良かった』で終わらせないこと、だと言います。

「例えば、彦根市は彦根城をメインとした観光が進んでいる地域の一つです。でも、彦根城は江戸時代からあったわけで、それをうまく活用して観光を活性化させてきたのは、今いる人たちのアイデアや努力の積み重ねであり、今たくさんの人が彦根市に足を運んでいるんです。“ローマは一日にしてならず”ではないですけど、観光の仕事ってそうだと思うんです」


 

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故郷って何かを、感じてもらえるような場所に
この場所で生きていく、山口さんのこれから

「この仕事をしていて気づいたのは、“故郷がない”という人が意外と多いことです。親や祖父母の世代は、生まれ育った場所でそのまま暮らしているから故郷と言えるし、生まれ育った場所でなくても、おじいちゃんおばあちゃんの家があってそこで過ごした経験もあるので帰る場所があります。でも、親が転勤族だったり引っ越しが多かったりした人は、生まれた場所のことをほとんど知らないまま。結果として、“故郷”として帰る場所がない人が多いんです」

そんな人でも、気軽に訪ねてもらえる地域にしたい。故郷ってどういう感じなのかを感じてもらえるようにしたい。それにはやはり、今の山口さん世代が積極的に動くことに意味があります。

「少子化が進んでどうにもならなくなったときに何か手を打とうと思っても、手遅れです。子どもが少ない、同世代がいない地域は、若い人が帰ってくる理由や移り住む理由がなくなってしまう。ワクワクしませんよね。でも、かっこいい生き方をしているお兄さんお姉さんが住んでいて、地域を活性化させようといろいろな取り組みをやっていて、子どもたちものびのび育っているようなところって、なんだかワクワクするじゃないですか。やっぱりね、かっこいいお兄さんお姉さんがいる地域って絶対に廃れないと思うんです」

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山口さんご家族

地域ブランドは場所ではなく、人によってつくられる。地域に魅力的な大人がいると、子どもたちの選択肢が広がり、未来につながる活動が生まれます。その連鎖が、地域に残る力や次の世代の挑戦につながると山口さんは言います。

「今やっていることのほとんどは、すぐに結果が出るものではありません。でも、それでいい。すぐに結果が出て、悩んだり苦しんだりする経験は、選手のときに散々やりましたから。今は、いろんな人に会って、関わりや繋がりを積み重ねる時期。去年の自分、先月の自分、昨日の自分よりも少しでも前進していれば、きっと面白いことが生まれるはずです」

これまで国内外のたくさんの地域や人と関わってきた山口さん。観光や地域づくりは、地域の暮らしを育て、未来へ手渡していく営みでもあります。次の世代が「この場所に帰ってきたい」「この地域と関わりたい」と思える“故郷”をつくっていく。そんな歩みを重ねられるこの場所で、「かっこいい大人がいる地域は、簡単には廃れない」と信じ、今なお挑戦を続けています。


 

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