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滋賀に気づいた人INTERVIEW#31 尾﨑考さん

尾崎さん

「自分のやりたいことをできる環境が、滋賀にはあります。」

「農業をするバンドマン」として音楽の場で活躍されてきた尾﨑さん。30歳を前に本格的に農業の道に進むことを決意し、現在は大津市の棚田で農薬・化学肥料不使用の野菜やお米を育てられています。棚田の自然や湧き水で育った野菜は、皮ごとおいしく食べられると評判です。

滋賀で農業を始めたきっかけは、ひとめぼれでした。

___今、どんな仕事をしていますか?

大津市にある棚田で、年間約3、40種類の野菜やお米を農薬・化学肥料不使用で育てています。育てやすい作物というよりは、季節ごとの野菜や土地や気候にあった作物を山の湧き水を利用して育てています。特に滋賀は水がきれいなので、おいしいお米ができますね。そうしてできた野菜などは主にECサイトで販売しているほか、市内のレストランや保育園、大阪の居酒屋で使っていただけていますし、フ ァーマーズマーケットなどで直売することもあります。

尾崎さんの畑


 

___なぜ農業を始めようと思われたのですか?

大阪府寝屋川市という都会の中で生まれ育ち、大学卒業後からもずっとバンドで音楽活動をしていたこともあって、農業とは無縁の生活を送っていました。ですが、ある時知人から「空いた土地があるから畑をやってみないか」と誘われた際、子どもの頃に父親の家庭菜園を手伝った思い出もあったので、面白そうだと感じて畑を始めたのがきっかけでした。それからは「農業をするバンドマン」として県内のラジオにも出演させてもらうなど、しばらくは家庭菜園もやりつつバンド活動を続けていたのですが、30歳手前で音楽を続けていくかどうか悩んだ時に、音楽よりも農業をやりたい気持ちが強くなっていたので、専業農家の道を選びました。

___滋賀に来ることになったきっかけは何ですか?

バンドを辞めた後、大阪府枚方市にある農園レストランで働きながら農業の勉強をしていた時に、バンド時代からお世話になっていたラジオのパーソナリティさんの親類の方から、滋賀県にある畑を貸していただけることになったんです。利便性が悪そうだと最初は迷いましたが、実際に畑がある棚田に足を運んだ瞬間、「ここでやろう」とその環境にひとめぼれしました。その後は休みの日に少しずつ畑を整備するなどして準備を整え、1年後に勤め先を退職しました。それからすぐに移住したわけではなく、畑を手に入れてから最初の3年くらいは現地まで通っていましたし、畑に建てた小屋に野宿することもありました。

尾崎さん

自分のやりたいことをできるのが滋賀の魅力。

___滋賀のいいところは何ですか?

自然が多いです。空気もおいしいし、水もきれいで、自分のやりたいことをできる環境がそろっています。湖も山もあって、どちらも楽しめるのが面白いポイントですね。街の方も道路の整備が進んでいて便利になってきていますし、大阪や京都にも近いので、通勤や都市部の企業との取引がとてもしやすい環境だとも思っています。

また琵琶湖沿いの田んぼでは、農薬を使わずに湖から来た魚が子育てできるような環境を作る「魚のゆりかご水田プロジェクト」という取り組みが行われていることを初めて知ったのですが、そういった無農薬や環境に対する理解が街の方でもあるというのがいいですね。

尾崎さん


 

___京都府出身である奥さまの由香さんにとって、滋賀の魅力は何ですか?

由香さん:歩きで買い物に行くのは難しいですが、マルシェもよく開かれていますし、パン屋さんやオーガニックカフェのほか、ロケーションのいいおしゃれなお店なども多い印象です。今は赤ちゃんを育てているのですが、大津市には産後のメンタルケアを支援してくれる制度もあります。日常で出会う滋賀県の人たちは優しく、子どもを連れて歩いていたらよく声をかけてもらえますし、近所の方から手編みのセーターをいただいたこともありました。子どもには自然に囲まれた場所でのびのびと活発な子に育ってほしいですし、いつか「滋賀でよかった」とか「お父さんの野菜おいしい」と言ってもらえたら嬉しいですね。

 

奥さん


 

滋賀で作る、皮ごと食べられる野菜。

___なぜ農薬を使用しない栽培にこだわっているのですか?

子どもの頃に一時期兵庫県に住んでいたのですが、近所の山で遊んでいたら立派に実った自然のザクロの実などを見つけたことがありました。それからバンド時代に家庭菜園について勉強していた際、「なんで肥料や農薬をやらないといけないんだろう」と疑問に思った時に、ふとあの山で見たザクロの実などを思い出して、「無農薬・無肥料でも育つんだ」と納得できたことが農薬不使用栽培を始めたきっかけでした。

柿


 

___ほかにもこだわっていることはありますか?

一般的なスーパーで売られているような同一規格が生まれやすい「 F1種」の野菜よりも、自然の交配サイクルを繰り返す「固定種」の野菜のほうが風味が豊かに感じることから、育てる野菜は固定種・在来種にこだわり、肥料も有機質のものを使用しています。農薬不使用なので皮を剥く必要もなく、皮と身の間にある一番栄養の詰まった部分も含めてまるごと食べられるのが特徴です。

___やりがいを感じるのはどんな時ですか?

農薬不使用なので収穫量が安定せず、野菜が病気にかかることもあります。また山の湧き水は農業用水のため池より肥沃ではないので、どうしても農薬やため池の水を使った野菜より収穫量が劣ります 。棚田という難しい環境で育った野菜ですが、どれもおいしいですし 、そこはしっかりアピールしていきたいです。今はレンコンと白ねぎが特に自信作なのですが、卸している保育園の調理師さんに「レンコンって味と香りがあったんですね。概念が変わりました」と感想をいただけたり、普段野菜を食べない子どもが保育園の給食の野菜だと食べると教えてもらったりした時は嬉しかったですね。

 

湧き水

何事もやってみないとわからない。

___これから挑戦したいことはありますか?

高齢化などで徐々に空きが目立ちはじめている棚田には、天然のダムの役割があると言われています。ここで水を貯め、作物を育てることは琵琶湖の水位の安定に結びつきますし、農薬を使わないことで小川など周囲の自然には年中多様な生物が生息しています。私のやっていることに共感してくれる仲間がこれから増えてくれたら、この土地で一緒に農業を盛り上げていきたいですね。

尾崎さん


 

___滋賀への移住を検討している方に、メッセージはありますか?

移住してきた時に、私は棚田を守る地域のボランティア団体に入りました。その団体の方々の紹介があったおかげで今の住居を見つけられたり、耕作面積を増やせたりしました。そういう地域の方々とつながりを持つことが、移住先での生活を豊かにするカギかもしれませんね。また私の仕事は自然相手ということもあって、計画をどれだけ練っても実際にやってみないとわかりませんし、やってみて見えてくる課題もあります。なので滋賀に移住してみたいなと迷っている方がおられたら、考えるのは3割ぐらいにして、あとは思いきってチャレンジしてみたらどうでしょうか。

ご家族

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