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米原市曲谷に移住の柳生のびさんと麻里さん

DATA
氏名 柳生 のび 柳生 麻里
移住を始めた年月 麻里さん2011年より のびさん2012年より
現居住地 滋賀県米原市曲谷
前居住地 のびさん兵庫県神戸市 麻里さん京都府京都市
写真:柳生のびさん、麻里さん

「地域おこし協力隊」として移住

 柳生さん家族が住む米原市曲谷は、姉川上流・奥伊吹にある過疎高齢化が進む地域。二人が出会い、ここに住むきっかけとなったのが、市が募集した地域おこし協力隊「みらいつくり隊」だった。
第一期生として移住した麻里さんは、もともと大阪の実家を離れ、京都市内で暮らしていた。食への関心が高く、安心安全な食材を自給自足する田舎暮らしへの興味はあったものの、きっかけがなく、住んでみたいと思える場所もない。そんな中で音楽活動をする米原市出身の知人と出会い、その帰省によく同行するようになった。
 ある時、集落で田植え体験をした麻里さんは、その楽しさに感動し「ここに住む!」と宣言。しかし仕事も住む場所もない。そこにタイミングよく飛び込んできたのが地域おこし協力隊の募集情報だった。任期は2年間で住居と経費が支給される制度。審査に必要な企画提案の難しさに応募をためらったものの、思いの強さを知っていた知人に背中を押されて応募。面接で「この選考に落ちても移り住みます」と審査員に宣言した麻里さんの思いは通じ、憧れの田舎暮らしが始まった。

写真:もみの天日干し

 その1年後、のびさんが二期生として移住する。子どもの頃、アトピー性ぜんそくや食物アレルギーなどがあり、体が弱かったのびさんは、その改善を目的に家族で兵庫県から滋賀県朽木村に移住した経験を持つ。やがて体調も回復し、父親の転勤や自身の高校進学を機に神戸市内で暮らすようになったが、その頃から「自分には田舎での暮らしのほうが合う」と思い続けていた。
 社会人になり、不登校相談員として子どもたちの面倒をみたり、キャンプインストラクターや野外救命士などの資格を取得し、自然の中で子どもと関わる活動をライフワークにしたいと思い始める。働きながらチャンスを待っていたのびさんは、馴染みのある滋賀県がいいと思い、米原市の募集を知って迷わず応募した。

イベント「伊吹の天窓」で魅力を発信

 地域おこし協力隊の第一期生として、「この地で自分にできることは何か」と考えた麻里さんは、移住のきっかけを与えてくれた知人のミュージシャンの「地元のお寺でライブをやりたい」という一言からイベントの企画を思いついた。
 「豊かな自然や文化、食、この地には素晴らしいものがいっぱいある。他所から来た自分たちだから気づく魅力を、若い人の目線と発想で発信したい」、そんな思いから、まちおこしイベント「伊吹の天窓」が始まった。最初は地元の人たちも半信半疑で、理解を得るのに苦労したが、手づくりのイベントは大反響。回を重ねるごとに認知度が上がり、今では県内外から多くの人々が集まる伊吹の夏の風物詩となっている。

写真:田植えの様子

 「こんなに大きなイベントになるとは思ってもみなかった」と麻里さん。「すべて周りのみんなのおかげで、私はただここに来ただけ。スタッフは本業を持ちながら運営しているので、かなりの労力。でもせっかく大きく育ったのだから、できるカタチで続けていきたいですね」。

すべて人に助けられて実現できた

 のびさんと麻里さんは「伊吹の天窓」の運営を通して出会い、平成25年に結婚、翌年には家族も増えた。結婚式は、昔ながらの伝統的な花嫁行列を再現する地元公民館主催のイベントに応募し、実現。それが縁で、のびさんは公民館での仕事に就くことができた。
 「いまの自分たちがあるのは、すべて人との縁があってのこと。まちおこしという名目で来たけれど、助けてもらっているのは私たちのほうなんです」と話す二人。みんな親切で、いつも気にしてくれて、何かあれば助けてくれる。でも必要以上には干渉しない。みんなで一緒にやるときは力をあわせる。そんな環境が過ごしやすく、本当にありがたいと思っている。

写真:干し柿と麻里さん

 都会ではいろんな生活スタイルが可能だけれど、近所の人の顔も見えず、話す機会もない。以前は人付き合いに対して窮屈さと苦手意識を持っていたというのびさんも、「ここに住むようになってから、構えずに人と向き合い、気楽に話せるようになりました。まあ話したくない時でも話しかけられますけど(笑)、でもそれがいいんですよ」と、田舎ならではのお付き合いを楽しんでいる。

田舎だから叶う贅沢な暮らし

 現在の暮らしは家族3人と猫2匹。1匹はのびさんが神戸から連れてきた猫、もう1匹はいつのまにか棲みついたという。
 「移住してきた当時を思えば、今の状況は想像もつかなかったけれど、田舎で暮らしたいという思いが、うまく叶えられて本当にありがたい」と話すのびさん。子どもが大声で泣いていても近所を気にする心配もなく、通りかかったおばあちゃんが「泣いてるのかあ」と見に来てくれる。雨の降る中、手押し車で大根と白菜をわざわざ持ってきてくれることもある。そんな人々の優しさに包まれて暮らしている。

写真:柳生さん家族3人の写真

 「人からは、相当思い切って移住したと思われているけれど、私にすればごく自然な流れでここに来ただけ。そこでこうして家族をつくれたことは、すごく幸せだと思います」と麻里さん。ここに暮らして、より一層、何気ない日常が幸せだと思えるようになったという。「朝は鳥の声で目覚め、夜は星がきれい。季節の移り変わりを体感でき、それを子どもにも見せてあげられて、世代の違うおじいちゃん、おばあちゃんとも関われる環境はとても恵まれていると思います」。
のびさんが思う滋賀の魅力は、「いろんなタイプの田舎があること。米原は便利な田舎」だという。移住に不安もあるかもしれないけれど、麻里さんは「もし少しでも興味があるなら、まず行動してみることが大事。意外となんとかなるものですよ」とおおらかに笑った。

先輩移住者インタビュー一覧