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滋賀に気づいた人INTERVIEW #03 前川真司さん

写真:前川真司さん/兵庫県→滋賀県/東近江市在住/会社経営

「限界集落で見つけた理想の暮らし。地域資源を生かしたビジネスモデルで、本当の意味の地域活性化を目指す」

「限界集落で見つけた理想の暮らし。地域資源を生かしたビジネスモデルで、本当の意味の地域活性化を目指す」中学時代の山村留学をきっかけに農山村に興味を持った前川さん。2014年4月から東近江市地域おこし協力隊に就任し、過疎化が進む奥永源寺で住民と生活を共にしながら、地域がもつ可能性を追求してきました。現在は「株式会社みんなの奥永源寺」を立ち上げ、ムラサキを使った町おこし等に取り組んでいます。

二度の『気づき』で奥永源寺へ

――農業高校教員から地域おこし協力隊員へ。そのきっかけは?

僕は中学校3年間を高知県大川村で過ごしたことで、農山村の魅力に気がついたんです。大川村の自然環境と温かい村人たちが僕を育ててくれた。その恩返しがしたいと、高校・大学では農業を勉強し、世界の農業を知るためアメリカにも渡りました。
帰国後、八日市南高校の農業教員として東近江市にきたのですが、授業で使っていた東近江市の花「ムラサキ」の希少価値に気づきました。これは農山村の活性化につながる!恩返しするのは今だ!と確信して、教員を辞めて地域おこし協力隊になりました。

地元の人には当たり前のことも、外の人間にはすごく新鮮!

――実際に地域おこし協力隊として奥永源寺での生活はいかがでしたか?

僕が住んでいる君ヶ畑はいわゆる限界集落。現在は、50軒ある家のうち40軒が空き家です。僕が最年少でそのひとつ上の世代は60代ですから、地域の人は僕をうまく活用してくれました(笑)。

でもね、ここは知れば知るほど奥深い魅力のある場所なんですよ。
「木地師のふるさと」、「政所茶」、「ムラサキ」、「鈴鹿山脈の大自然」など、この地で脈々と受け継がれてきたものは、都会の生活では触れることができない貴重なものばかり。
朝日とともに目覚め、家族で食卓を囲み、暗くなれば眠る。ひと昔前には当たり前に育まれていた豊かな暮らしがいまも営まれています。

田舎だから不便は間違い!なにを不便に感じるかは人それぞれ

――生活に不便はありませんか?

よくその質問されます(笑)。限界集落っていうだけでマイナスイメージが強いですよね。でもそれって都会目線な勝手なイメージだと思います。車で30分ほど走ればスーパーもあるし、インターネット注文すれば翌日には商品が届く。不便と感じることはほとんどありません。たくさんの人とモノに溢れた都会で、24時間365日、定年まで働きつづける方が僕にとっては不便。これは感じ方の違いですよね。

地域にある宝物を使って、本当の意味の地域活性化を目指す

――現在の活動は?

地域おこし協力隊任期終了後に、「みんなの奥永源寺」という株式会社を立ち上げました。
政所茶や木地師のことを学ぶツアーなどを開催し、より多くの人に奥永源寺の魅力に触れてもらっています。また、耕作放棄地を開墾して、ムラサキの栽培にも取り組んでいます。

――ムラサキとは?

ムラサキ(紫草)という植物の根っこが、古来より染料や薬草として重宝されてきたシコン(紫根)です。
実はムラサキの種が現存しているのは国内では東近江市だけなんですよ!ムラサキは絶滅危惧種にも指定されていて発芽率はわずか3%。しかも100株植えても95株は枯れてしまうほど生存率も低い。でも、不思議なことに奥永源寺の気候だと3~5割は育つんですよ。
シコンは火傷の治療にも使われるほど肌の再生効果が高く、殺菌・抗菌作用もあります。そこに着目して、シコンエキスを使った化粧品を開発しました。先日、東京ビッグサイトであった美容イベントに出展したのですが、「国産シコンが現存するとは!」と、すごく大きな反響をいただいています。


 

ただ、僕は単に化粧品を売って儲けたいわけじゃないんです!会社をNPO法人とかじゃなく株式会社にしたのもそう。きちんと法人として利益をだして、限界集落でも生きていくための生業ができるんだという証明がしたいと思っています。
まだまだ耕作放棄地はたくさんありますので栽培する場所には困らないし、従業員を雇えるようになれば、まわりにある空き家に住んでもらえるかなと(笑)。

気づけたから今の暮らしがある

――移住を考えている人へアドバイスをお願いします

移住にあたっては、その地域で暮らしていく意味に気づく必要があると思います。自分が求めている生活、生き方はどのようなものかを真剣に考えた先に、移住という選択肢があるのではないでしょうか。
実は今年の春に結婚したのですが、奥さんも大阪出身。田舎に住んでいると伝えてはいましたが、初めて来たときは想像以上でびっくりしてました(笑)。でも、奥さんも僕と同じように、求めていた暮らしは都会でなく、ここにあると気づいてくれた。暮らしの豊かさを感じる価値観が同じだったからうまくいったのかもしれないですね。

前川真司さんのある一日のスケジュール

  • 7時00分起床 日の出とともに起きる感じ
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