文字サイズ

滋賀県ホームページ

高島市安曇川町に移住の高橋章隆さんと佳奈さん

DATA
氏名 高橋 章隆 高橋 佳奈
移住を始めた年月 2013年より
現居住地 滋賀県高島市安曇川町
前居住地 東京都
写真:高橋章隆さんと佳奈さん

会社員から農業へ

 高島市で農園を経営する高橋さん夫妻は、もともと東京で働く会社員だった。移住のきっかけは、「独立して農業をしよう!」という佳奈さんの熱い思い。大学卒業後、投資関連の会社を経て、NPO(特定非営利活動法人)に在籍していた佳奈さんは、森林資源の活用やフェアトレード、農業支援などの環境活動に取り組む個人やNPOに対し、融資を行う仕事に携わっていた。その中で「融資で支援するだけでなく、自分たちでも環境プロジェクトを立ち上げよう」という流れから、新規事業として千葉県での農業プロジェクトが始まった。これを機に農業との関わりを深めていくうちに、その素晴らしさと楽しさに開眼。これが大きな転機となった。

写真:農園にて野菜をとる佳奈さん

 独立の候補地として選んだのは、京都府から滋賀県にかけてのエリア。東日本大震災の影響を考えたこと、そして佳奈さんの実家が滋賀県大津市だったことから、その周辺で農地を探した。そして出会ったのが、畑作に適した高島市泰山寺地区の「土」だった。

念願の農園をオープン

 稲作が盛んな滋賀県には、田んぼの跡地を利用した畑が多い。しかし、田んぼの土は粘土質で水はけが悪く、畑に向いているとはいえない。一方、泰山寺地区には畑に適した「黒ボク」と呼ばれる土があった。ここは標高220mの小高い丘の上にある平地。戦後の食糧不足の時代に、入植者によって開拓された広大な畑が広がっている。
佳奈さんは、単身で地元滋賀に移住し、農業を開始。その1カ月後、章隆さんも会社を退職して合流。準備を整えて農園をオープンした。
 「もともと食に興味があって、妻が始めた農業を見に行ったり、手伝っているうちに、その魅力にひかれたんです」と章隆さん。「じゃ、一緒にやろうよ」と、二人の新しい暮らしがスタートした。

写真:農園にて野菜をとる章隆さん

こだわりの有機農法を実践

 農園の広さは5反(300坪)。一般的な品種から、地域の在来種「万木(ゆるぎ)かぶ」、自然薯、白いとうもろこし、チーマディラーパなど国内外の珍しい野菜まで、年間100種類以上の作物を栽培している。
 コンセプトは、「子どもに食べさせたいものをつくる」。そのために「化学合成農薬を使わない」「化学合成肥料を使わない」という大きな2つのポリシーを掲げている。
自然界には毒になるものも存在するため、「自然だからよい」とは言い切れない。ただ、健康な土づくりには微生物や、農作物の成長によい菌類を増やすことが大切であるため、このポリシーにこだわっている。

写真:農園に育つサニーレタスの様子

 農薬は、食酢など人間が口にしても問題のないもの、天敵微生物を利用した生物農薬、トラップ(虫をおびきよせるもの)の設置など、必要に応じて使用。肥料は、鶏糞や牛糞を使った堆肥が中心。米ぬかなど地域の素材で作る「ぼかし肥料」や、天然由来の微量要素肥料などを使い、良好な土壌環境づくりに取り組んでいる。

農園から広がる新しい未来

 農業は気候の変動に左右されたり、近くの山から下りてきた鹿に畑の作物を食べられてしまったりと、悩みも多い。そんな苦労と日々格闘しながらも、愛情込めて丁寧に育てられた高橋さんの野菜は、「野菜本来の味がとても濃く感じられる」と評価も高い。収穫量は限られているけれど、「おいしく安心して食べられる野菜がほしい」という顧客もいて、東京、地元のレストランや京都の有機野菜専門小売店などへ出荷している。
 今後も販路の拡大はもちろん、種まきから収穫まで体験できるワークショップ、農園で採れた野菜を調理して食べるイベントの開催、農園レストランの開業など、さまざまな試みに挑戦し、地域とのつながりをさらに深めていきたいと思っている。

写真:遠くから見た農園
先輩移住者インタビュー一覧