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第4章 ユニバーサルデザイン推進にあたってのさまざまな主体の役割(テキスト版)

ユニバーサルデザイン社会を実現するためには、県民の日常生活をはじめ、経済活動や社会システムなどすべてにおいて、ユニバーサルデザインの考え方が浸透し、様々な営みに反映される必要があります。この考え方は、結果だけでなく、目標に向かって多くの人が参加し、できる限り良いものにしていこうとする過程や、その姿勢が重視されています。また、障害当事者をはじめとした様々な人による評価を行い、だれもがより利用しやすいものを目指して、絶えず必要な改良を続けていくという継続性も大切です。ユニバーサルデザインの取組を進めていくにあたっては、常にこれらのことを念頭に置き、県、市町、県民、事業者、民間団体などが自らの役割を認識したうえで、互いに連携、協働して、主体的、積極的に取り組み、県全体のこととして広げていくことが重要です。

1 県の役割

県は、「だれもが住みたくなる福祉滋賀のまちづくり条例」を基本に福祉のまちづくりに取り組むほか、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、より広い施策について、各組織が連携し、率先して取組を進めます。推進にあたっては、市町、県民、事業者、民間団体の理解と主体的な活動が欠かせないことから、様々な普及活動や取組を行うと同時に、意見、情報の交換の機会を設けてより多くの方々の意見を反映していきます。また、調査、研究などにより情報収集を行うとともに、広報誌やホームページの活用、フォーラムの開催などを通じて、県民への情報提供に努めます。さらに、学校教育をはじめとした様々な学習の場を通じて、ユニバーサルデザインの考え方を学ぶ機会を設けるとともに、研修会の開催などにより、様々な業種や職種の方を対象とした意識啓発に努めます。国に対しては、様々な面からユニバーサルデザインの推進について働きかけます。

2 市町に期待される役割

市町は、住民の積極的な参画を得て、ユニバーサルデザインの考え方や、この指針の趣旨および内容を踏まえ、国や県、事業者、民間団体などと連携しながら、主体的、積極的にまちづくり、教育、交通などの様々な分野において施策を展開することが期待されます。施策の推進にあたっては、ユニバーサルデザインの考え方を導入し、ユニバーサルデザインの推進に関する指針や、バリアフリー法に基づく基本構想をはじめ、まちづくりに関する基本計画を策定することなどが期待されます。また、住民に様々な機会や手段を通じて啓発を図ることや、学校教育をはじめとした様々な学習の場において理解を深める場を設けることなど、だれもがユニバーサルデザインについて知り、学ぶ機会を提供することが期待されます。

3 県民に期待される役割

ユニバーサルデザインの推進にあたって何より大切なことは、県民一人ひとりが、年齢、性別、病気・障害の有無、国籍などにかかわらず、お互いの個性や違いを理解し、認め合い、尊重する意識を持つことです。このため、常に相手の立場に立って考えたり、相手の思いを聞いて考えたりすることが大切で、子どものときから、それぞれの家庭や地域において、そうした気持ちを育てることが必要です。こうした心を持つことによって、高齢者や障害者等の行動の妨げとなることを行わないことはもとより、困っている人がいたら助けるということが当然のこととして行われるようになることが期待されます。また、ユニバーサルデザインを効果的に推進するには、県民が理解を深め、行政や事業者、民間団体などが行う取組に協力するとともに、その取組の問題点や改善点について積極的に意見、提言を行い、取組を評価、支持することが重要です。このため、県民一人ひとりが自ら、施設、製品、サービスなどの使いやすさを点検することにより、暮らしの中にユニバーサルデザインの視点を取り入れ、身近なことから主体的に行動していくことが期待されます。

4 事業者に期待される役割

事業者は、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、多様な利用者のニーズを踏まえた施設整備や製品開発、サービスの提供などに積極的に取り組むことが期待されます。そのためには、事業所内や業界内において、ユニバーサルデザインの考え方の普及啓発、リーダーの育成など、具体的な取組が望まれます。事業実施にあたっては、企画立案の段階から、またできあがった後も、できるだけ多くの利用者から意見を聴き、反映させるという仕組みづくりを進めることや、職場環境の整備にあたっては、だれもが活躍でき、ともに働くための環境づくりに努めることが期待されます。また、利用者、他の事業者、民間団体、大学、行政などと交流、連携して、ユニバーサルデザイン推進に関する民間活動の中心的な役割を果たしていくことが期待されます。

5 民間団体に期待される役割

様々な分野で市民が自発的に社会貢献活動などを行うNPOなどの民間団体は、県民のニーズが多様化、高度化する現在にあって、ユニバーサルデザイン社会を支える重要な担い手です。民間団体には、ユニバーサルデザインの普及、行政や事業者、他の民間団体などとの連携、ネットワーク化など、ユニバーサルデザインを推進するためのより積極的な活動が期待されます。また、民間団体の立場から、行政や事業者などの取組に対して積極的に協力すること、より良い取組への提案を行うこと、また自ら実践することが期待されます。