本県では、2005年3月に「淡海ユニバーサルデザイン行動指針」を策定し、だれもが一人の人間として尊重され、安心して暮らせるユニバーサル社会の実現を目指し、各種施策に取り組んできました。
指針策定から18年が経過し、人口減少・少子高齢化の進展、外国人住民の増加や多国籍化など社会情勢が急速に変化してきています。
この間の、制度改正による「障害の社会モデル」の推進などの新たな概念や考え方を踏まえ、共生社会の実現に向けた指針に見直す必要があります。
また、2025年に本県で開催される国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会や大阪・関西万博の開催を好機として捉え、社会全体に一層ユニバーサルデザインの推進を図るため、指針を改定することとしました。
〔注釈〕障害の社会モデル:障害のある人が日常生活または社会生活において受ける制限は、心身の機能障害のみによって生じるものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるものとする考え方。
【位置づけ】
「だれもが住みたくなる福祉滋賀のまちづくり条例」(1994年)に基づき、福祉のまちづくりに関する施策を総合的に実施するために、施策の方向やその他必要な事項に関する「指針」として策定します。
【性格】
「淡海ユニバーサルデザイン行動指針」は、ユニバーサルデザインの考え方を様々な場面で浸透させ、みんなの参加と協働による一体となった取組を主体的に進めるためのものであり、次の2つの性格をもっています。
1 県においては、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、事業を実施するにあたっての基本的な考え方や方向性などを示した総合的な取組方針
2 市町、県民、事業者、民間団体にあっては、現状や課題、それぞれに期待される役割などについて理解し、県と連携してユニバーサルデザインを推進するためのガイドライン
滋賀県はこれまで1994年に「住みよい福祉のまちづくり条例」の制定、2004年に改正版となる「だれもが住みたくなる福祉滋賀のまちづくり条例」の制定、2005年に「淡海ユニバーサルデザイン行動指針」の策定を行ってきました。しかし、指針策定から18年以上が経過し、下記のとおり社会情勢は大きく変化してきました。
(1) 制度や概念の変化
障害者政策における大きな転換点は2006年の「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」の国連採択です(日本は2014年に批准しています)。
「障害の社会モデル」や、「私たち抜きに私たちのことを決めないで(Nothing about us, without us)」のスローガンのもと、障害当事者の参画など障害の有無によって分け隔てられることのないインクルーシブな社会づくりが提起されました。
これを受けて日本では「障害者基本法」の改正(2011年)、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の制定(2013年)など、国際的な動向に合わせて障害の社会モデルを採用した障害者に関する法律の整備がされてきました。また、2017年に「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が策定され、国において心のバリアフリーやユニバーサルデザインのまちづくりについての取組が推進されてきました。
本県においても、2019年に「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」が全面施行され、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、合理的配慮の提供を義務化することなどが規定されました。
なお、「障害者差別解消法」は2021年に改正され、合理的配慮の提供の義務化が2024年4月から民間事業者に拡大されましたが、滋賀県では当該条例において、事業者、個人における合理的配慮の義務化が先んじて実施されています。
そのほか、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」の施行(2019年)や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の施行(2022年)などがあり、また、公共交通施設や建築物等のバリアフリー化を推進する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」の改正(2020年)では、新設する公立小中学校が整備基準の義務対象となり、改正後の法令への対応が必要となっています。
〔注釈〕合理的配慮の提供:障害のある人から、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担の重すぎない範囲で、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行うこと。
〔参考〕障害者権利条約
●ユニバーサルデザイン(第2条抜粋)
「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。
●アクセシビリティ(第9条第1項抜粋)
締結国は、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、障害者が、他の者との平等を基礎として、都市及び農村の双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信並びに公衆に開放され、又は提供される他の施設及びサービスを利用する機会を有することを確保するための適当な措置をとる。
(2) 社会的環境の変化
1 少子高齢化の進展
滋賀県の人口は、2020年頃をピークに減少局面に入り、今後も減少していくことが見込まれています。2021年の本県の合計特殊出生率は1.46で、全国1.30を上回っています(出典:人口動態統計 厚生労働省2021年)が、人口置換水準(現在の人口を長期的に維持するための水準)である、おおむね2.07を下回っており、出生数も減少傾向となっています(出典:国立社会保障・人口問題研究所人口統計資料集(2020))。一方、65歳以上人口は2045年頃まで、一貫して増加すると予測しています。
急速に少子高齢化が進む現在において、建物、製品、サービスや情報提供媒体等にユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、身体機能の低下により制約が多くなる高齢者が安全で快適に暮らしていくことができる環境づくりや、子どもを安心して生み育てることができる子育てしやすい環境づくりが必要とされています。
本県においても、2019年に「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」が全面施行され、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、合理的配慮の提供を義務化することなどが規定されました。
なお、「障害者差別解消法」は2021年に改正され、合理的配慮の提供の義務化が2024年4月から民間事業者に拡大されましたが、滋賀県では当該条例において、事業者、個人における合理的配慮の義務化が先んじて実施されています。
そのほか、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」の施行(2019年)や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の施行(2022年)などがあり、また、公共交通施設や建築物等のバリアフリー化を推進する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」の改正(2020年)では、新設する公立小中学校が整備基準の義務対象となり、改正後の法令への対応が必要となっています。
〔注釈〕合理的配慮の提供:障害のある人から、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担の重すぎない範囲で、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行うこと。
2 障害者の社会参加の状況
滋賀県の人口は、2020年頃をピークに減少局面に入り、今後も減少していくことが見込まれています。2021年の本県の合計特殊出生率は1.46で、全国1.30を上回っています(出典:人口動態統計 厚生労働省2021年)が、人口置換水準(現在の人口を長期的に維持するための水準)である、おおむね2.07を下回っており、出生数も減少傾向となっています(出典:国立社会保障・人口問題研究所人口統計資料集(2020))。一方、65歳以上人口は2045年頃まで、一貫して増加すると予測しています。
急速に少子高齢化が進む現在において、建物、製品、サービスや情報提供媒体等にユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、身体機能の低下により制約が多くなる高齢者が安全で快適に暮らしていくことができる環境づくりや、子どもを安心して生み育てることができる子育てしやすい環境づくりが必要とされています。
本県においても、2019年に「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」が全面施行され、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、合理的配慮の提供を義務化することなどが規定されました。
なお、「障害者差別解消法」は2021年に改正され、合理的配慮の提供の義務化が2024年4月から民間事業者に拡大されましたが、滋賀県では当該条例において、事業者、個人における合理的配慮の義務化が先んじて実施されています。
そのほか、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」の施行(2019年)や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の施行(2022年)などがあり、また、公共交通施設や建築物等のバリアフリー化を推進する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」の改正(2020年)では、新設する公立小中学校が整備基準の義務対象となり、改正後の法令への対応が必要となっています。
〔注釈〕合理的配慮の提供:障害のある人から、現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担の重すぎない範囲で、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行うこと。
3 国際化の進展
滋賀県の外国人人口は、2014年以降、概ね増加傾向にあり、2022年12月末時点で36,158人となっています。国籍別では、108の国・地域となり、多国籍化が進展しています(出典:住民基本台帳に基づく外国人人口(2022年12月末現在))。2014年以降、東南アジア地域出身の技能実習生を中心に、外国人人口が増加し、国籍の構成も変化してきています。
2022年10月末現在において、県内の外国人雇用者数は23,096人、外国人を雇用する事業所数は、2,576事業所となり、いずれも過去最高を更新しています(出典:厚生労働省滋賀労働局発表資料)。
今後、更なる多国籍化の進展や外国人住民の滞在の長期化・定住化が進むものと考えられており、滋賀県で暮らすすべての人が、国籍や民族などの違いにかかわらず、同じ地域で一緒に生活する一員として生活していくためには、多様な言葉や文化、風習、価値観などを理解し合い、相互に人権と個性を尊重しながら、多様性を生かして活躍できる地域社会となっていくことが望まれます。
4 その他
2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界的なパンデミックとなり、経済活動をはじめ、私たちの日々の暮らしや働き方、価値観に及ぶまで大きな影響を与えました。また、様々な理由でマスク着用が難しい方に対する理解の不足によって日常生活が送りづらくなるなど、生活上の困難を抱える人たちへの配慮の欠如や理解不足等の課題が浮き彫りになりました。
また、ICT(情報通信技術)の普及は着実に進んでおり、本県におけるインターネット利用率は8割を超えています(出典:総務省「令和3年度通信利用動向調査」)。近年は、だれでも情報を発信することができるソーシャルメディアの利用が拡大しており、身近な情報伝達手段として浸透しつつあります。そうしたICTの進展によって利便性が高まる中、最新のICTを活用しつつ、様々な利用者が迅速かつ的確に情報を得られる環境整備が求められます。
さらに、LGBT等の性の多様性についての理解が求められるようになってきています。他方で、トイレなどの利用にあたっての環境整備の課題が指摘されています。
性別、年齢、病気・障害の有無、国籍などにかかわらず、だれもがその人らしく活躍できる社会を実現するためには、そうした社会環境の変化を踏まえ、ユニバーサルデザインの考え方を推進していくことが今後ますます重要になっていきます。
様々な当事者団体で構成する福祉のまちづくり推進会議において、ユニバーサルデザインに関する県の取組をはじめ、参画団体の取組の報告や意見交換を行いながら、ユニバーサルデザインを推進します。
なお、指針については、急速に変化する国際情勢や国内情勢、変化する課題、県民ニーズに対応するため、必要に応じて、5年程度で見直しを行います。