名称:有川家住宅【ありかわけじゅうたく】 員数:6棟
構造形式
所有者:有川吉孝、有川智子
所有者の住所:彦根市鳥居本町425
所在地:彦根市鳥居本町425
建物の概要
有川家住宅は、中山道の鳥居本宿に所在し、江戸時代に妙薬として広く知られた「赤玉神教丸」を製造販売する薬店の本店である。
土塀で囲われた敷地内には、主屋・書院・薬医門・粉挽蔵・文庫蔵が、また、粉挽蔵の北西には大蔵が建ち、いずれも建築時の形式を良く残している。
有川家所蔵の文書等から、主屋は宝暦9年(1759)、粉挽蔵は宝暦12年(1762)、文庫蔵は寛政7年(1795)、書院は文化5年(1808)、薬医門は文化7年(1810)、大蔵は文化12年(1815)に建築されたことがわかる。
主屋は良材を用いた規模の大きな建築で、一部に二階があり、屋根は町家としては珍しい入母屋造に破風(はふ)を二重に取り付けた形式である。また、正面庇の腕木(うでぎ)には繰形彫刻を施した持ち送りや獅子の彫刻を取り付けて装飾を施すなど、県内の一般の町家とは一線を画する建築である。
主屋東側には、書院と薬医門がある。書院は、主屋同様に良材を用い、上段の間を設けたり複雑な屋根形式を用いるなど意匠を凝らした建築である。薬医門は、書院に引き続いて建築されたもので、雲をモチーフにした蟇股(かえるまた)・懸魚(げぎょ)が特徴である。書院・薬医門は、薬剤製造販売業により財をなした有川家の歴史の一端を示す建築である。
有川家住宅は、主屋をはじめ、粉挽蔵・文庫蔵・大蔵等が建ち並び、保存状況が良好で、江戸時代後期から末期にかけての大規模な薬剤製造販売業の形態と変遷を具体的に知ることができる。また、各建物とも良材を用い、意匠を凝らした、質の高い建築である。さらに、往時の中山道の賑わいを今日に伝える建築としても貴重である。