牛に異常行動、運動失調をきたす病気で、1986年に英国で初めて報告されました。これは、プリオンと呼ばれるタンパク質の異常な蓄積が原因とされ、顕微鏡で見ると、脳の組織がスポンジのように見えることから牛海綿状脳症(BSE)といわれています。この病気が牛の間で広まったのは、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を飼料として使ったことが原因と考えられています。
このようにプリオンタンパク質が異常化することによって引き起こされる病気をプリオン病といい、BSEのほかに、羊のスクレイピーや、鹿の慢性消耗病、人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などを総称して伝達性海綿状脳症と呼びます。なお、直接的な科学的根拠はありませんが、BSEプリオンは人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の原因と考えられています。
わが国では、2001年9月の国内発生を受け、その年の10月より牛由来の肉骨粉を全ての家畜用飼料として利用することが法律で禁止されています。また、食用に供される牛全頭について、プリオンが蓄積する特定危険部位(※SRM)をと畜解体時に除去し、さらにはBSE検査を実施してBSE陽性牛を摘発してきました。
これらの対策によりBSEの発生は激減し、わが国では2002年1月生まれの牛に感染が認められたのを最後にBSEの発生は確認されていません。
BSE発生リスクが低下したことから、2017年2月13日の牛海綿状脳症特別措置法施行規則改正に伴い、同年4月1日から健康牛のBSE検査は廃止され、比較的発生リスクの高い24か月齢以上の牛のうち生体検査において行動異常または神経症状を呈する牛を対象にBSE検査を実施してきました。
国際獣疫事務局総会において牛海綿状脳症国際基準の改正が採択され、BSEサーベイランスに関する国際基準が見直されたこと等から2024年2月14日に伝達性海綿状脳症検査実施要領が改正されたのを受け、同年4月1日から、全月齢の牛のうち生体検査において行動異常または神経症状を呈する牛についてBSE検査を行っています。
このようにBSE発生防止およびBSEに感染した牛が食用とならないよう対策を行うことで、牛肉等の安全性は確保されています。
BSE感染は異常プリオン蛋白の摂取が原因と考えられています。異常プリオン蛋白の蓄積する場所は体内で決まっていると考えられており、それらの部分を特定危険部位(SRM)と呼んでいます。この部位を食べないことがBSE感染を防ぐ上で重要です。牛の筋肉については、BSE感染性が証明されたという研究報告はありません。SRMの範囲はこれまで、舌・頬肉を除く頭部、脊髄、脊柱、回腸遠位端とされてきましたが、平成25年4月1日より、扁桃を除く頭部、脊髄、脊柱は30か月齢以下の牛のものは、分別管理を前提に食用として使用可能となりました。
BSE対策に伴い、牛肉の輸入についても規制が行われました。BSE発生国からの牛肉の輸入は、一旦全面的に中止となり、その後、それぞれの国での対策や発生の有無、科学的な知見に基づいて輸入が再開されてきました。
以前にBSEの発生があった国の中で、現在日本が輸入をおこなっているのは、アメリカ、カナダ、フランス、オランダの4か国であり、30か月齢以下、扁桃及び回腸遠位端を含まない、という条件となっています。
日本国内では、これまでのBSE対策により、飼料規制開始(2001年10月)直後に生まれた1頭の牛(2002年1月生まれ)を除き、飼料規制以降に生まれた牛には、BSE検査陽性牛は確認されていません。