○滋賀県防災対策の推進に関する条例
令和7年3月26日
滋賀県条例第1号
滋賀県防災対策の推進に関する条例をここに公布する。
滋賀県防災対策の推進に関する条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 災害予防対策(第8条―第22条)
第3章 災害応急対策(第23条―第31条)
第4章 災害復旧・復興対策(第32条)
第5章 推進体制の整備(第33条)
第6章 財政上の措置(第34条)
付則
本県は、比較的大規模な災害が少ない県と言われているが、過去には姉川地震や伊勢湾台風により甚大な被害が生じた。また、全国に目を向けると、令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では石川県等において多くの家屋が倒壊するなど甚大な被害が生じたことは記憶に新しいが、本県においても琵琶湖西岸断層帯や南海トラフを震源とした巨大地震、気候変動による豪雨災害が懸念され、平時から災害に備えておくことが必要である。
県では、滋賀県地域防災計画に基づき市町や防災関係機関と連携して防災対策を進めてきたが、受援体制、ライフライン途絶時の対応、災害関連死への対策等に課題が残っているため、更なる防災対策の推進が必要である。また、被害を最小限度にとどめるには、行政が進める公助だけではなく、県民が自らの安全を自ら守る自助や地域において相互に助け合う共助の取組も求められる。そして、自助、共助および公助が相互に連携することが重要であり、県全体で防災に関する意識を高める必要がある。
ここに、私たちは一丸となって防災対策に取り組むことにより、災害から県民の生命、身体および財産を守り、県民が安全に安心して暮らすことができる地域社会の実現を図るため、滋賀県防災対策の推進に関する条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、防災対策に関し、基本理念を定め、ならびに県の責務および県民等の役割を明らかにするとともに、防災対策の基本となる事項を定めることにより、防災対策を総合的に推進し、もって県民が安全に安心して暮らすことができる地域社会の実現を図ることを目的とする。
(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象により生ずる被害をいう。
(2) 防災対策 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、ならびに災害の復旧および災害からの復興を図るために行う対策をいう。
(3) 自主防災組織 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第2条の2第2号に規定する自主防災組織をいう。
(4) 要配慮者 高齢者、障害者、乳幼児、外国人その他の災害が発生した場合に特に配慮を要する者をいう。
(5) 指定避難所 災害対策基本法第49条の7第1項の規定により指定された避難所をいう。
(基本理念)
第3条 防災対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
(1) 自助、共助および公助が適切に組み合わされること。
(2) 国、県、市町、県民、自主防災組織および事業者の適切な役割分担および連携が確保されること。
(3) 県民の防災に関する意識を高め、自発的な防災活動への参加を促進すること。
(4) 被災者の生命および身体を最も優先して保護すること。
(5) 被災者の基本的人権を尊重すること。
(6) 男女共同参画、要配慮者に対する適切な配慮その他の多面的な視点に立ち、多様な意見が反映されるようにすること。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、防災対策を総合的に推進し、および実施するものとする。
2 県は、防災対策の推進に市町が果たす役割の重要性に鑑み、市町が防災対策を推進し、および実施しようとするために必要な助言、支援または総合調整を行うものとする。
(県民の役割)
第5条 県民は、基本理念にのっとり、防災に関する意識を高め、自ら災害に備えるための手段を講ずるよう努めるものとする。
2 県民は、基本理念にのっとり、地域における防災活動に積極的に参加するよう努めるものとする。
3 県民は、県および市町が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。
(自主防災組織の役割)
第6条 自主防災組織は、基本理念にのっとり、県民、事業者および消防団と協力して地域における防災活動を行うよう努めるものとする。
2 自主防災組織は、県および市町が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は、基本理念にのっとり、従業員および施設の利用者等の安全を確保するよう努めるものとする。
2 事業者は、基本理念にのっとり、災害が発生した場合における事業活動を継続する能力の強化を図るよう努めるものとする。
3 事業者は、県および市町が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。
第2章 災害予防対策
(防災教育および防災訓練の実施等)
第8条 県は、県民の防災に関する知識および技能の習得を促進するため、防災教育および防災訓練の実施、県等が実施する防災に関する講習および防災訓練への参加の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県民は、防災に関する知識および技能を習得するため、県等が実施する防災に関する講習を受けるとともに、県等が実施する防災訓練に参加するよう努めるものとする。
3 自主防災組織は、地域住民に対して防災教育および防災訓練を実施するよう努めるものとする。
4 事業者は、従業員に対して防災教育および防災訓練を実施するよう努めるものとする。
(自主防災組織の充実等)
第9条 県は、自主防災組織の充実を図るため、市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
2 県は、消防団への加入の促進その他の消防団の強化を図るため、市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(災害ボランティアの活動環境の整備等)
第10条 県は、災害が発生した場合において、防災に関する専門的な知識経験を有する災害ボランティアが果たす役割の重要性に鑑み、災害ボランティアによる防災活動の支援および調整を行う組織の整備その他の環境の整備、人材の育成、災害ボランティアとの連携の強化その他の必要な施策を講ずるものとする。
(建築物の耐震改修および火災防止に係る取組)
第11条 県民および事業者は、自己の所有に係る建築物について、必要な耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条第1項に規定する耐震診断をいう。)を行い、必要に応じ、当該建築物について耐震改修(同条第2項に規定する耐震改修をいう。)を行うよう努めるものとする。
2 県民および事業者は、災害による火災を防ぐため、地震が発生した場合に電流を自動的に遮断する装置の設置、火を使用する器具の周辺の整理等を行うよう努めるものとする。
3 県は、前2項の規定による取組の実施に関し、必要な支援を行うものとする。
(地震保険等への加入)
第12条 県民は、災害により被害を受けた場合における生活の安定を図るため、地震保険、水災によって生ずる損害を填補することを約する火災保険等に加入するよう努めるものとする。
(物資等の備蓄)
第13条 県民は、自らが災害時に必要とする物資を備蓄するよう努めるものとする。
2 事業者は、従業員および施設の利用者等が災害時に必要とする物資を備蓄するよう努めるものとする。
3 自主防災組織は、地域の住民が災害時に必要とする物資および応急的な措置に必要な資機材を備蓄するよう努めるものとする。
4 県は、災害応急対策または災害復旧に必要な物資および資機材(第19条において「物資等」という。)を備蓄するものとする。
(事業継続計画の策定)
第14条 事業者は、災害が発生した場合における主要な事業の継続または早期の再開を図るための計画を策定するよう努めるものとする。
(公共施設の整備等)
第15条 県は、その設置し、または管理する道路、港湾、水道、下水道、庁舎その他の公共の用または公用に供する施設について、災害が発生した場合における被害の最小化を図るため、適切な維持管理を行うとともに、計画的な整備を図るものとする。
(指定避難所の良好な居住性の確保のための措置)
第16条 県は、災害が発生した場合における指定避難所の良好な居住性の確保を図るため、次に掲げる措置その他の必要な措置を講じようとする者に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うとともに、必要に応じて、自ら当該措置を講ずるものとする。
(1) 衛生面および快適性に配慮したトイレの確保
(2) プライバシーの確保に配慮するために必要な物資の確保
(3) 暑熱または寒冷による人の健康に係る被害の発生を防止するための対策
(要配慮者の保護)
第17条 県は、要配慮者の生命または身体を災害から保護するため、個別避難計画(災害対策基本法第49条の14第1項に規定する個別避難計画をいう。)の作成の支援、要配慮者に配慮した物資の備蓄その他の必要な措置を講ずるものとする。
(災害情報の収集および伝達に係る体制の整備)
第18条 県は、国、市町その他の関係者と連携して、災害に関する情報の収集および伝達に係る体制を整備するものとする。
(事業者等との災害応急対策等に関する協定の締結)
第19条 県は、物資等の供給、緊急輸送の確保、工事等の実施その他の災害応急対策および災害復旧が的確かつ迅速に行われるよう、あらかじめ事業者等との協定の締結に努めるものとする。
(広域的な連携協力体制の構築)
第20条 県は、他の都道府県その他の関係機関との広域的な連携協力体制の構築を図るものとする。
(受援体制の整備)
第21条 県は、災害応急対策または災害復旧のために派遣された職員および被災者に配布する物資を円滑に受け入れるために必要な体制を整備するものとする。
(医療救護体制の整備)
第22条 県は、市町、医療機関その他の関係者と連携して、災害時における医療および救護の体制を整備するものとする。
第3章 災害応急対策
(円滑な避難行動等)
第23条 県民は、災害が発生し、または発生するおそれがある場合には、災害に関する情報の収集、円滑な避難の実施その他の危険を回避するために必要な行動をとるよう努めるものとする。
2 自主防災組織は、災害が発生し、または発生するおそれがある場合には、地域の住民に対し、災害に関する情報の伝達、避難誘導その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 事業者は、災害が発生し、または発生するおそれがある場合には、従業員および施設の利用者等に対し、前項の措置を講ずるよう努めるものとする。
(災害応急対策の実施)
第24条 県は、災害が発生し、または発生するおそれがある場合には、災害に関する情報の収集および伝達に努め、国、市町その他の関係者と連携して、被災者の救助、施設および設備の応急の復旧その他の災害応急対策を的確かつ迅速に実施するものとする。
(指定避難所の円滑な運営等の支援)
第25条 県は、災害が発生した場合に指定避難所の円滑な運営が確保されるとともに、指定避難所の良好な居住性が確保されるよう、市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
2 前項の支援を行うに当たっては、指定避難所において要配慮者、愛玩動物(愛玩動物看護師法(令和元年法律第50号)第2条第1項に規定する愛玩動物をいう。)の飼育者等の多様な被災者の生活環境にできる限り配慮しなければならない。
(避難が長期にわたる場合における避難所の設置に係る調整)
第26条 県は、被災者の避難が長期にわたる場合にあっては、ホテル、旅館その他の宿泊に適するように造られた施設を避難所として滞在できるようにすること等により、市町の区域を超えた広域的な見地から必要な避難所の設置に係る調整を行うものとする。
(災害時における感染症の発生の防止等)
第27条 県は、災害が発生した場合において、市町その他の関係機関と連携して、感染症の発生およびまん延の防止その他の公衆衛生上の危害の発生を防止するために必要な措置を講ずるものとする。
(災害廃棄物の適正な処理)
第28条 県は、災害により生じた廃棄物の適正な処理が円滑かつ迅速に行われるよう、市町に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(災害時における犯罪の予防)
第29条 県は、災害が発生した場合において、犯罪の予防を図るため、指定避難所その他の被災地における定期的な巡回その他の必要な措置を講ずるものとする。
(帰宅困難者対策)
第30条 県は、災害が発生した場合に多数の帰宅困難者(長時間にわたる公共交通機関の運行の停止等により、帰宅することが困難となった者をいう。以下この条において同じ。)が発生した場合には、国、市町その他の関係者と連携して、必要な情報の提供、帰宅困難者を一時的に滞在させるための施設の確保の調整その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 前項の措置を講ずるに当たっては、観光旅行者その他の一時的に本県に滞在する者にも配慮しなければならない。
3 事業者は、多数の帰宅困難者の発生による混乱を回避するため、従業員に対する施設内での待避等の指示その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(二次災害の発生の防止)
第31条 県は、二次災害の発生を防止するため、火気の使用に係る注意の喚起、危険な場所の周知その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県民は、災害が発生した場合において、火気の使用の自主的制限、避難する際の安全の確認その他の二次災害の発生を防止するために必要な行動をとるよう努めるものとする。
第4章 災害復旧・復興対策
第32条 県は、災害により被害を受けた地域の復旧および復興を図るため、国、市町その他の関係者と連携して、復旧および復興に係る措置を円滑に実施するものとする。
第5章 推進体制の整備
第33条 県は、防災対策に関する施策を総合的に推進するため、必要な体制の整備を図るものとする。
第6章 財政上の措置
第34条 県は、防災対策に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
この条例は、公布の日から施行する。