○滋賀県県産材の利用の促進に関する条例

令和5年3月22日

滋賀県条例第3号

滋賀県県産材の利用の促進に関する条例をここに公布する。

滋賀県県産材の利用の促進に関する条例

私たち滋賀県民は、古くから琵琶湖とともに、その水源となる森林からの恵みを享受し、豊かな生活を営み、木材を利用する文化を育んできた。森林から得られる木材は、様々な工夫を凝らして建築物、日用品などの用途に応じた利用が行われてきた。

特に、古来の近江国は比叡山延暦寺をはじめとする自国の建築物だけでなく、京都や奈良などの都に近い立地を生かして近江国以外の宮殿や寺院の造営および維持のための木材の供給地にもなっていた。

しかしながら、近年、県産材を取り巻く環境は、外国産木材および鉄やプラスチック製品などの木材の代替品との競合により、非常に厳しいものとなっている。また、都市部への人口の流出により、農山村における人口の減少および高齢化が進展し、森林の管理やその基盤となる集落の維持が大きな課題となっている。

滋賀の森林は、琵琶湖の水源のかん養、地球温暖化の防止その他の多面的機能を有しており、健全で緑豊かな森林を未来に引き継ぐことは現代に生きる我々の責務である。

このため、素材としての木の良さを見直すとともに、戦後に植栽され本格的な利用期を迎えている人工林の伐採、県産材の供給体制の整備を図ることにより、県と民間が一体となって県産材の利用を促進することが急務となっている。また、林業および木材産業と他の産業との連携を図り、森林資源の価値の向上を図ることにより、森林所有者の森林の管理に対する意識を高めるとともに、農山村の活性化を図り、農山村における人口の減少に少しでも歯止めをかけることも必要である。

このような中、令和4年6月に本県で第72回全国植樹祭が開催され、木材を利用してきた滋賀の文化を再認識し、木材の利用に対する気運が高まっている。

ここに、私たちは、琵琶湖森林づくり条例および滋賀県CO2ネットゼロ社会づくりの推進に関する条例と相まって、県産材の利用を促進することにより、私たちの暮らしを支えるかけがえのない滋賀の森林を健全な姿で未来に引き継ぐことを決意し、滋賀県県産材の利用の促進に関する条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、県産材の利用の促進について、基本理念を定め、および県の責務等を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の必要な事項を定めることにより、県産材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって森林の多面的機能の発揮に重要な役割を果たしている林業および木材産業の持続的な発展を図るとともに、木材の利用に対する意識の高揚を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 県産材 県内で生産された木材をいう。

(2) 森林の多面的機能 琵琶湖森林づくり条例(平成16年滋賀県条例第2号)第2条第2号に規定する森林の多面的機能をいう。

(3) 森林所有者 琵琶湖森林づくり条例第2条第3号に規定する森林所有者をいう。

(4) 林業事業者 造林、保育、伐採その他の森林における施業を行う事業者をいう。

(5) 木材産業事業者 木材の加工または流通に関する事業を行う事業者をいう。

(6) 関係事業者 林業事業者および木材産業事業者以外の事業者であって、木材の利用に関する事業を行うものをいう。

(基本理念)

第3条 県産材の利用の促進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 県産材の価値を高め、または新たな需要を開拓することにより、林業または木材産業に係る所得の増大につなげることその他の森林所有者、林業事業者および木材産業事業者(以下「森林所有者等」という。)が意欲と誇りを持って林業または木材産業を営むことができる環境を整備すること。

(2) 森林の多面的機能が持続的に発揮されることが重要であることに鑑み、森林における造林、保育および伐採、木材の加工および利用ならびに森林における伐採後の造林という循環が安定的かつ持続的に行われるよう配慮すること。

(3) 前号の循環が森林の有する水源のかん養機能を維持し、および増進するとともに、森林の有する二酸化炭素の吸収作用を保全し、および強化することに鑑み、環境の保全に資するものとしての木材の利用の意義に対する県民の理解と関心を深めること。

(4) 木材を利用する文化が県民の生活に深く浸透し、県民の心豊かな生活の実現に重要な役割を担っていることに鑑み、木材を利用する文化の継承を推進すること。

(5) 国、県、市町、森林所有者等、関係事業者および県民の適切な役割分担および連携が確保されること。

(6) 森林所有者等の自主的かつ主体的な取組が尊重されること。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、県産材の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、および計画的に実施するものとする。

2 県は、県産材の利用の促進に関する施策の策定および実施に当たっては、国、市町、森林所有者等、関係事業者との連携に努めるとともに、市町、森林所有者等、関係事業者、県民に対し必要な情報の提供、助言および支援を行うものとする。

(森林所有者の役割)

第5条 森林所有者は、基本理念にのっとり、県が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるとともに、県産材の利用の促進に関する取組を主体的に行うよう努めるものとする。

(林業事業者の責務)

第6条 林業事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するとともに、地域における森林の経営の中核的な担い手として、県産材を安定的に供給しなければならない。

(木材産業事業者の責務)

第7条 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するとともに、県産材の供給の重要な担い手として、県産材を安定的に供給するとともに、県産材の利用を促進しなければならない。

(関係事業者の役割)

第8条 関係事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるとともに、その事業活動において、県産材の積極的な利用に努めるものとする。

(県民の役割)

第9条 県民は、基本理念にのっとり、県が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるとともに、日常生活において、県産材の積極的な利用に努めるものとする。

(基本計画)

第10条 知事は、県産材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 県産材の利用の促進に関する施策の基本的な考え方

(2) 県産材の利用の促進に関する具体的な施策

(3) 県産材の利用の促進に関する目標

(4) 前3号に掲げるもののほか、県産材の利用の促進を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、基本計画の策定に当たっては、あらかじめ、森林所有者等および県民の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 前2項の規定は、基本計画の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。

(県産材の安定供給の促進)

第11条 県は、県産材の安定供給の促進を図るため、伐採および伐採後の造林の計画的な実施の支援、性能が優れている林業機械の導入の促進、森林の施業の集約化の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(県産材の加工および流通の体制の整備)

第12条 県は、県産材の加工および流通の体制の整備を図るため、必要な施設の整備、木材の加工に係る生産性および木材の品質の向上のための取組への支援、木材の流通の円滑化のための環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、前項の施策を講ずるに当たっては、温室効果ガス(滋賀県CO2ネットゼロ社会づくりの推進に関する条例(令和4年滋賀県条例第7号)第2条第3項に規定する温室効果ガスをいう。)の排出の量の削減について適切な配慮をするものとする。

(県の県産材の利用)

第13条 県は、公共建築物(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号)第2条第2項に規定する公共建築物をいう。以下この項において同じ。)の整備に当たっては、県産材を利用するものとする。ただし、建築基準法(昭和25年法律第201号)その他の法令の規定により木材を利用して公共建築物を整備することが困難であると認められる場合その他特別の事由がある場合は、この限りでない。

2 前項に定めるもののほか、県は、県産材の利用を促進するため、自ら率先して県産材の利用に努めるものとする。

(建築物における県産材の利用の促進)

第14条 県は、建築物(建築基準法第2条第1号に規定する建築物をいう。以下この条および第18条第2項において同じ。)における県産材の利用を促進するため、木造の建築物の設計および施工に係る先進的な技術の普及の促進、建築物の新築または増築、改築、修繕もしくは模様替における県産材の利用に対する支援、市場に関する調査研究および情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(木質バイオマスの有効利用)

第15条 県は、県内の木の伐採または間伐により発生する未利用の木質バイオマス(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律第23条に規定する木質バイオマスをいう。以下この条において同じ。)を有効に利用するため、農業、観光業その他の産業における木質バイオマスのエネルギー源としての利用の促進、技術等の研究および開発の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(森林所有者等による事業の多角化および高度化等への支援)

第16条 県は、県産材または森林資源を利用した新たな事業の創出等によりこれらの価値を高め、またはこれらの新たな価値を生み出すことが森林所有者等の所得の確保を通じて持続的な森林の施業を可能とすることに鑑み、森林所有者等が必要に応じて森林所有者等以外の者の協力を得て主体的に行う県産材または森林資源を利用した事業の多角化および高度化その他の取組への支援、これらの者の交流の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(新製品等の研究開発の促進)

第17条 県は、県産材に係る新製品および新技術の研究および開発の促進を図るため、森林所有者等、国、県および市町の関係機関ならびに大学その他の研究機関の連携の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(人材の確保および育成)

第18条 県は、林業または木材産業を担うべき人材の確保および育成を図るため、新たに林業または木材産業に就業しようとする者に対する就業に関する相談等の援助、新たに林業または木材産業に就業した者の就業の継続のための支援、研修の実施の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、木造の建築物の設計および施工に関する知識および技能を有する者、木材を利用する文化の継承を推進する者その他の県産材の利用の促進に寄与する人材の確保および育成を図るため、技術の普及指導、研修の実施の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(県民の理解および関心の増進ならびに社会的気運の醸成)

第19条 県は、県産材の利用の意義に対する県民の理解と関心を深めるとともに、県産材の利用に主体的かつ積極的に取り組む社会的気運が醸成されるよう、木材を利用する文化を伝承する活動に対する支援、県産材および県産材を利用した木製品との触れ合いの場および機会の提供、広報活動の充実、県産材の利用に関する情報および意見を交換する機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第20条 県は、県産材の利用の促進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

滋賀県県産材の利用の促進に関する条例

令和5年3月22日 条例第3号

(令和5年3月22日施行)