○ビワイチ推進条例

令和4年3月25日

滋賀県条例第3号

ビワイチ推進条例をここに公布する。

ビワイチ推進条例

私たちのふるさと滋賀県には、琵琶湖を始めとした雄大な自然のほか、琵琶湖と共生してきた農林水産業、発酵食に代表される食文化、滋賀ならではの歴史、文化芸術、地場産品等の魅力的な観光資源が豊富に存在している。

こうした本県の魅力は、これまでも国内外の多くの人々をきつけてきたが、中でも、自転車を利用して琵琶湖を一周する周遊と湖岸周辺から離れた県内各地の観光地等を周遊するといういわゆるビワイチ・プラスを合わせた、地域を代表する観光ブランドの一つであるビワイチは、本県の旅行業、旅館業や飲食業だけでなく、商工業、農林水産業等の幅広い産業の発展に寄与するとともに、本県の歴史や文化に関する理解を深め、健康、環境、教育などの面からも多様な展開が期待されている。

本県においては、平成30年4月から県内の一般公道において2人乗りのタンデム車で走行することが可能となり、視覚に障害のある人が同乗してビワイチを楽しむことができるようになるなど、ビワイチの楽しみ方は広がりを見せている。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は多くの人々に夢や感動をもたらし、本県でもホストタウンにおける選手団との交流等を通じて、観戦だけでなく体験することも身近に感じられるようになり、さらに、令和7年には本県で国民スポーツ大会および全国障害者スポーツ大会が開催されるなど、これまで以上にスポーツや身体を動かすことへの関心の高まりが期待されている。

こうした中、令和元年11月にビワイチのうち琵琶湖を一周する経路が国からナショナルサイクルルートの指定を受けたことを好機と捉え、ビワイチを本県を特徴づけるブランドとして最大限に活用して、今後更に国内外からサイクリストが本県に来訪する機会を増加させ、地域住民との交流の機会を増やすことは、観光振興のみならず、本県の地域活性化のために極めて重要である。

私たちは、国、県、市町、県民、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等の多様な主体が自主的にビワイチに取り組むとともに、これまで以上に連携して、本県の観光の振興を図り、地域の愛着と誇りに根ざした活力ある地域づくりを進めていくことができるよう、ビワイチを推進していくことを決意し、ここにビワイチ推進条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、ビワイチの推進について、基本理念を定め、および県の責務等を明らかにするとともに、ビワイチの推進に関する施策(以下「ビワイチ推進施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、ビワイチ推進施策を総合的かつ計画的に推進し、もって滋賀が誇る観光資源であるビワイチの魅力を高め、本県の観光の振興および活力ある地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) ビワイチ 琵琶湖を一周することまたは琵琶湖その他県内の観光地、景勝地等を周遊することのうち、自転車を利用して行うものをいう。

(2) 自転車 道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第11号の2に規定する自転車をいう。

(3) 自動車等 道路交通法第2条第1項第9号に規定する自動車および同項第10号に規定する原動機付自転車をいう。

(4) サイクリスト ビワイチその他の自転車を利用したレクリエーションを行う者をいう。

(5) ビワイチ関係事業者 旅行業、旅館業または飲食業を営む者、自転車の貸付けを業とする者、サイクルツアーガイド(自転車を利用した旅行に関する案内を行う者をいう。)および鉄道事業、船舶運行事業その他の交通に関する事業を行う者(以下「交通事業者」という。)その他のビワイチに関する事業を営む者をいう。

(6) ビワイチ推進関係団体 ビワイチの推進に関する活動を行う団体をいう。

(基本理念)

第3条 ビワイチの推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 琵琶湖の周辺地域のみならず、県の全域で観光の振興および地域の活性化が図られるものであること。

(2) 県内のサイクリストはもとより、国内外から本県を訪れるサイクリスト一人ひとりが安全で、安心して、快適にビワイチが楽しめる環境を整備すること。

(3) 地域の生活環境、自然環境および景観を維持しつつ、これらとの調和に配慮すること。

(4) 本県の自然、文化、歴史、食その他の地域の魅力を再発見し、その情報を共有するとともに、その魅力を大切にしながら、創意工夫して活用すること。

(5) 県民の健康の増進および環境の保全に関する意識の向上に資するよう配慮すること。

(6) 国、県、市町、県民、ビワイチ関係事業者およびビワイチ推進関係団体の適切な役割分担および連携が確保されること。

(7) ビワイチ関係事業者およびビワイチ推進関係団体それぞれの自主的かつ主体的な取組が尊重されること。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ビワイチ推進施策を総合的に策定し、および計画的に実施するものとする。

2 県は、ビワイチ推進施策の策定および実施に当たっては、国、市町、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等との連携に努めるとともに、県民、市町、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等に対し必要な情報の提供、助言および支援を行うものとする。

(ビワイチ関係事業者の役割)

第5条 ビワイチ関係事業者は、基本理念にのっとり、サイクリストに対し心のこもった誠実なサービスの提供に努めるものとする。

2 ビワイチ関係事業者は、基本理念にのっとり、サイクリストが安全で安心して快適にビワイチができる環境の整備に資するよう、連携および協力を図りながら事業活動を行うよう努めるものとする。

3 ビワイチ関係事業者は、県および市町が実施するビワイチ推進施策に協力するよう努めるものとする。

(ビワイチ推進関係団体の役割)

第6条 ビワイチ推進関係団体は、基本理念にのっとり、ビワイチに関する情報の発信その他のビワイチの推進に関する取組を行うよう努めるものとする。

2 ビワイチ推進関係団体は、県および市町が実施するビワイチ推進施策に協力するよう努めるものとする。

(県民の役割)

第7条 県民は、基本理念にのっとり、ビワイチに対する理解と関心を深め、県および市町が実施するビワイチ推進施策に協力するよう努めるものとする。

(サイクリスト等の配慮)

第8条 サイクリストは、ビワイチの経路の周辺に居住する者、歩行者および自動車等の安全な通行ならびに地域の生活環境、自然環境等との調和に配慮するよう努めるものとする。

2 ビワイチの経路を走行する自動車等の運転者は、サイクリストが安全に通行することができるように配慮するよう努めるものとする。

(国、市町等との連携協力等)

第9条 県は、ビワイチ推進施策の推進に当たっては、国、市町、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等と連携協力するものとする。

2 県は、市町がビワイチ推進施策を策定し、および実施するときは、必要な情報の提供、助言、支援または調整を行うものとする。

(広域的な連携協力)

第10条 県は、広域的なビワイチ推進施策を効果的に実施するため、近隣の府県、大規模な自転車道等が所在する他の地方公共団体および国内外の関係機関等と連携協力するものとする。

(基本指針)

第11条 県は、ビワイチ推進施策を総合的かつ計画的に推進するための基本方針(以下「基本方針」という。)を策定するものとする。

2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) ビワイチの目指すべき姿

(2) ビワイチ推進施策に関する基本的な事項

(3) ビワイチ推進施策の内容

(4) 前3号に掲げるもののほか、ビワイチ推進施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 県は、基本方針の策定に当たっては、あらかじめ、県民、市町、ビワイチ関係事業者およびビワイチ推進関係団体の意見を反映することができるよう、必要な措置を講じなければならない。

4 県は、基本方針を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 県は、ビワイチ推進施策の進捗状況、社会経済情勢の変化等を勘案して、適宜、基本方針に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

6 第3項および第4項の規定は、基本方針の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。

(誘客の促進)

第12条 県は、ビワイチを活用した旅行商品の開発の支援、自転車に関するスポーツ行事の開催その他の国内外からのビワイチを目的としたサイクリストの本県への来訪の促進を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、ビワイチの推進に当たっては、琵琶湖を一周することと併せて琵琶湖岸周辺から離れた県内各地の観光地等の周遊が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(観光資源の活用)

第13条 県は、自然、文化、歴史等に関する観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力あるビワイチの推進を図るため、歴史的風土、優れた自然の景勝地、良好な景観等に関する観光資源の保護、磨き上げおよび活用に必要な施策を講ずるものとする。

(魅力情報の発信)

第14条 県は、国内外からのサイクリストの本県への来訪、周遊および滞在を促進するため、国、市町、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等と連携し、あらゆる機会を活用してビワイチの魅力に関する情報を広く国内外に向けて継続的に発信するよう努めるものとする。

(人材の育成等)

第15条 県は、ビワイチの推進に寄与する人材の育成およびビワイチ関係事業者の商品開発等に資するため、ビワイチに関する事業に従事する者、ビワイチ推進関係団体の従業員等の知識および能力の向上、地域の固有の文化、歴史等に関する知識の普及の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、大学等(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する大学、高等専門学校および高等学校をいう。)および青少年を支援する団体等がビワイチの推進に寄与する取組を実施する場合には、これに協力するよう努めるものとする。

(道路環境の整備)

第16条 県は、ビワイチの経路となっている道路のうち県が管理する道路について、その保全を適切に行うとともに、自転車通行空間(自転車が通行するための道路または道路の部分をいう。以下この条において同じ。)の整備、案内看板および路面表示(以下「案内看板等」という。)の設置その他必要な道路環境の整備を計画的に行うものとする。

2 県は、自転車通行空間の整備および案内看板等の設置の基準を定めたときは、これを速やかに公表しなければならない。

3 ビワイチの経路となっている道路のうち県が管理する道路以外の道路について、県は、当該道路を管理する者に対し、自転車通行空間の整備、案内看板等の設置その他必要な道路環境の整備を要請するものとする。

(拠点施設等の整備)

第17条 県は、サイクリストの利便性の向上および魅力ある観光地の形成を図るため、関係者との連携による良質なサービスの提供の確保ならびに拠点施設、宿泊施設その他のビワイチに関連する施設の整備等の促進に必要な施策を講ずるものとする。

(安全な利用に関する取組)

第18条 県は、ビワイチの経路の周辺に居住する者、歩行者およびサイクリストの安全を確保するため、自転車の安全な利用の啓発および指導その他必要な措置を講ずるものとする。

(サイクリストの利便性の向上)

第19条 県は、サイクリストの利便性の向上を図るため、サイクリングに資する地図の作成、アプリケーションソフトウェアの開発、交通事業者等と連携した移動手段の確保、レンタル自転車(観光等のために貸付けの用に供される自転車をいう。)に関する情報の提供等の必要な措置を講ずるものとする。

(ビワイチの日およびビワイチ週間)

第20条 県民、ビワイチ関係事業者、ビワイチ推進関係団体等の間に広くビワイチについての関心と理解を深めるとともに、ビワイチへの意欲を高め、愛着と誇りを育むため、ビワイチの日およびビワイチ週間を設ける。

2 ビワイチの日は11月3日とし、ビワイチ週間は同日から同月9日までとする。

3 県は、ビワイチの日およびビワイチ週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

(調査等)

第21条 県は、ビワイチ推進施策を総合的かつ計画的に推進するため、ビワイチの状況について調査を行い、その結果をビワイチ推進施策へ反映させるものとする。

(推進体制の整備)

第22条 県は、ビワイチ推進施策を総合的かつ計画的に推進するため、必要な体制の整備を図るものとする。

(財政上の措置)

第23条 県は、ビワイチ推進施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

1 この条例は、令和4年4月1日から施行する。

〔次のよう〕略

ビワイチ推進条例

令和4年3月25日 条例第3号

(令和4年4月1日施行)