○持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例

令和2年12月28日

滋賀県条例第54号

持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例をここに公布する。

持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例

滋賀の農業は、世界屈指の古い湖である琵琶湖の周りにおいてその営みが始まり、山々からの豊かな水、肥沃な土、穏やかな気候といった自然環境に恵まれながら、人々の命の糧となる食料として、近江米をはじめとする安全で安心な農産物を生産するとともに、集落を基本とした営農活動を通じて豊かな農村社会と地域文化を築き、県土や自然環境を保全し、美しい田園景観を形成するなど、私たちの暮らしや地域の発展に重要で多面的な役割を果たしてきた。

一方で、近年、農業就業人口の減少や米の産地間競争の激化に加え、地球温暖化等の気候変動が農業に与える影響の顕在化など、滋賀の農業を取り巻く環境は大きく変化しつつある。

また、本県では全国に先駆けて環境こだわり農業をはじめとする環境と調和のとれた農業に取り組んできたが、農業生産活動に伴って生ずる廃プラスチック類の排出の抑制なども新たな課題となっている。

このような状況の中、私たちの暮らしにとって不可欠であり、かつ、多面的な役割を有する滋賀の農業を将来にわたって持続的なものにするためには、気候変動に適応しつつ自然環境に与える負荷の軽減に配慮して農業の生産性を向上させ、農業所得の増大につなげることにより、全ての農業者が意欲と誇りを持って農業を営むことができるようにするとともに、環境との一層の調和に努めることが必要である。

引き続き安全で安心な農産物を生産するという前提の下、私たちは、これらの取組を推進することによって、県民が一体となって滋賀の農業を健全な姿で次の世代に引き継いでいくことを決意し、ここに持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、持続的で生産性の高い農業の推進に関し、基本理念を定め、県の責務等を明らかにするとともに、県の行う施策の基本となる事項等を定めることにより、持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策を総合的に推進し、もって滋賀の農業の健全な発展に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 持続的で生産性の高い農業 多様な農業者等により、農地の生産力の向上、良質な農産物の安定的な生産の確保、農作業の省力化等による安定的かつ効率的な経営が行われ、かつ、環境との調和が図られる農業をいう。

(2) 農業者等 農業を営む者および農業を営む者が組織する団体であって農業生産活動を共同して行うもの(法人を除く。)をいう。

(3) 農業関係団体 農業協同組合、農業協同組合連合会その他の農業に関する団体(農業者等である団体を除く。)をいう。

(基本理念)

第3条 持続的で生産性の高い農業の推進は、農地の生産力を最大限引き出し、農業所得の増大につなげることその他の多様な農業者等が意欲と誇りを持って農業を営むことができる環境を整備することを旨として行われなければならない。

2 持続的で生産性の高い農業の推進は、琵琶湖およびその周辺地域の環境保全に特に配慮するとともに、地球温暖化その他の気候の変動の農業への影響に積極的かつ効果的に対応することを旨として行われなければならない。

3 持続的で生産性の高い農業の推進は、国、県、市町、農業者等、農業関係団体および県民が適切な役割分担の下に連携し、および協力することを旨として行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策を総合的に策定し、および実施するものとする。

2 県は、持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策の策定および実施に当たっては、国、市町、農業者等、農業関係団体および県民と連携し、および協力するものとする。

(農業者等および農業関係団体の努力)

第5条 農業者等は、基本理念にのっとり、持続的で生産性の高い農業の推進のための取組を主体的に行うよう努めるとともに、県が実施する持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

2 農業関係団体は、基本理念にのっとり、県が実施する持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(県民の努力)

第6条 県民は、基本理念にのっとり、持続的で生産性の高い農業の重要性に対する理解を深めるよう努めるとともに、県が実施する持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

2 県民は、県内で生産される農産物の消費その他の利用がなされることが、持続的で生産性の高い農業の推進において重要であることに鑑み、県内で生産される農産物の消費その他の利用に努めなければならない。

(農地の生産力の最大化)

第7条 県は、農地の生産力を最大限引き出すため、県内の各地域における農地の土壌の性質に関する調査を行い、その結果に基づく土壌の性質を改善するための資材の施用その他の農地の土壌を適切に管理する方法の普及に努めるとともに、水田の多様な利用その他の農地の有効活用の促進に努めるものとする。

(消費者等の需要に対応した農産物の生産の促進)

第8条 県は、消費者等の需要に対応した農産物の生産を促進するため、農業者等、農業関係団体その他関係者の有する消費者等の需要に関する情報の収集、分析および提供、当該農産物の生産に必要な技術の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

(情報通信技術等の活用に関する調査研究および普及)

第9条 県は、良質な農産物の安定的な生産および農作業の効率化を促進するため、情報通信技術その他の技術の活用に関する調査研究を行うとともに、その成果の普及に努めるものとする。

(主要農作物の種子の安定生産等)

第10条 県は、主要農作物(稲、大麦、はだか麦、小麦および大豆をいう。第1号および次条において同じ。)の優良な種子の安定的な生産および供給を促進するため、次に掲げる措置その他必要な措置を講ずるものとする。

(1) 県内に普及すべき主要農作物の優良な品種(次号および第3号において「奨励品種」という。)の選定

(2) 奨励品種の優良な種子の生産を行うために必要な原種および当該原種の生産に必要な原原種の生産

(3) 奨励品種の種子の生産を行うほ場で生産される種子の品質を確保するために必要な審査の実施

(主要農作物等の品種の育成等)

第11条 県は、本県の地理的および自然的特性に応じ、かつ、新たな需要を開拓する主要農作物その他の農作物の品種の育成または選定および普及に努めるものとする。

(近江の伝統野菜の保護)

第12条 県は、近江の伝統野菜(県内において伝統的に生産されている野菜であって、味、形状等において固有の特徴を備えていると知事が認めるものをいう。)について、その生産を将来にわたって行うことができるようにするため、品種の維持のための種子の保存、需要の拡大のための情報の発信その他の必要な施策を講ずるものとする。

(多様な農業者等の確保および育成)

第13条 県は、意欲と誇りを持った多様な農業者等を確保し、および育成するため、新たに就農しようとする者に対する情報の提供および相談の実施、農業者等に対する農業の技術および経営方法の習得または改善に関する研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

(環境と調和のとれた農業の普及)

第14条 県は、環境と調和のとれた農業の普及を図るため、環境こだわり農業(滋賀県環境こだわり農業推進条例(平成15年滋賀県条例第4号)第2条第2号に規定する環境こだわり農業をいう。)の推進、農業生産活動に伴って生ずる濁水の流出の防止および農業生産活動に伴って生ずる廃プラスチック類の排出の抑制に関する啓発ならびにこれらに関する技術および知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

(気候の変動への適応)

第15条 県は、地球温暖化その他の気候の変動に起因する気温の上昇その他の自然環境に生ずる影響による農産物の生産量の減少、品質の低下その他の被害を防止し、または軽減するため、当該影響を受けにくい農作物の品種の育成等、当該影響に対応して良質な農産物を安定的に生産するための栽培方法の調査研究およびその成果の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

(新品種等の知的財産の保護)

第16条 知事は、県が育成した農作物の新品種、県が発明し、または考案した農作物の栽培方法に関する技術その他の県の有する農業に関する知的財産の適切な保護を図るため、育成者権、特許権、実用新案権その他の知的財産権の取得のための手続を行うとともに、取得した知的財産権を適正に管理するものとする。

(試験研究等を行う人材の育成等)

第17条 県は、持続的で生産性の高い農業の推進のためには試験研究および普及指導活動が重要であることに鑑み、試験研究または普及指導活動を行う人材の育成および試験研究が円滑に行われるための環境の整備に努めるものとする。

(財政上の措置)

第18条 県は、持続的で生産性の高い農業の推進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

付 則

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

持続的で生産性の高い滋賀の農業推進条例

令和2年12月28日 条例第54号

(令和3年4月1日施行)