○琵琶湖森林づくり条例

平成16年3月29日

滋賀県条例第2号

琵琶湖森林づくり条例をここに公布する。

琵琶湖森林づくり条例

滋賀の森林は、県土のおよそ2分の1を占め、すぎ、ひのきなどの人工林、あかまつ、こなら、ぶななどの天然林が豊かに広がり、琵琶湖と一体となった滋賀独特の四季折々の風景をつくりだしている。

これらの森林は、生命の源である清らかな水をたくわえ、県土を保全して洪水などから私たちの暮らしを守るとともに、多様な動植物の生息または生育の場を提供するなど様々な役割を果たしてきた。

そして、これらの森林に取り囲まれ、豊かな水をたたえる琵琶湖から、私たちをはじめその下流域の人々も多くの恩恵を受けてきた。その琵琶湖の水を育んでいるのは、周りを囲む山々の森林であり、琵琶湖の恵みはとりもなおさず緑豊かな森林からの恵みである。

まさに、滋賀の森林は、森、川、里、湖のつながりにおいて一体となった生態系、自然界の循環等に育まれた琵琶湖や人々の暮らしと切り離すことができない、何ものにも代えがたい貴重な財産である。

我が国では、戦後、国土の保全、拡大する木材需要等に対応するため、積極的にすぎ、ひのきなどの植林が行われてきたものの、生活様式の変化などによる薪炭から化石燃料への転換や高度経済成長期からの木材輸入の増加などにより、木材等の林産物の生産を通じて森林づくりを支えてきた林業が大きな打撃を受け、今日まで構造的な不振の状況にある。その結果、県内においても適切な手入れがされないまま放置されている森林が見られるようになってきた。このままでは琵琶湖の水源かん養はもとより、県土の保全や地球温暖化の防止などの森林の多面的機能が損なわれ、私たちの暮らしに深刻な影響をもたらすことが危される。

今こそ私たちは、利便性や効率性を追求するあまり忘れかけてきた森林を慈しむ心の大切さを再認識し、持続可能な社会の構築に寄与する森林の多面的機能を見つめ直す必要がある。ここに、私たちは、森林づくりに主体的に参画し、琵琶湖の下流域の人々とともに、長期的な展望に立ち、その多面的機能が持続的に発揮されるよう緑豊かな森林を守り育て、琵琶湖と人々の暮らしを支えるかけがえのない滋賀の森林を健全な姿で未来に引き継ぐことを決意し、琵琶湖森林づくり条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、森林づくりについて、基本理念を定め、県の責務等を明らかにするとともに、県の施策の基本となる事項を定めて、森林づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、森林の多面的機能が持続的に発揮されるようにし、もって琵琶湖の保全および県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 森林づくり 森林を守り、または育てることをいう。

(2) 森林の多面的機能 水源のかん養、県土の保全、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、木材等の林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能をいう。

(3) 森林所有者 県内に所在する森林の所有者(国および市町を除く。)をいう。

(一部改正〔平成16年条例38号〕)

(基本理念)

第3条 森林づくりは、森林の多面的機能が持続的に発揮されるよう、長期的な展望に立ち、地域の特性に応じて推進されなければならない。

2 森林づくりは、森林がその多面的機能により広く県民に恵みをもたらしていることに鑑み、県民の主体的な参画により推進されなければならない。

3 森林づくりは、森林所有者、森林組合、県民、事業者および県の適切な役割分担による協働により推進されなければならない。

4 森林づくりは、森林の多面的機能が持続的に発揮されるためには森林と人との継続的な関わりが重要であることに鑑み、農山村の活性化のための取組と一体的に推進されなければならない。

5 森林づくりは、木材をはじめとする森林資源が再生産可能な資源であることに鑑み、森林資源の環境に配慮した新たな利用その他の県内の森林資源の有効な利用を促進し、適切な森林施業の実施を確保することにより、推進されなければならない。

6 森林づくりは、持続的な森林の整備を図るに当たり、その担い手を将来にわたり確保することの重要性に鑑み、次代を担う青少年をはじめとする県民の森林の多面的機能についての理解を深め、森林づくりを支える人材の育成を図ることにより、推進されなければならない。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める森林づくりについての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、森林づくりに関する基本的かつ総合的な施策を策定し、および実施するものとする。

2 県は、森林づくりの推進に当たっては、市町および国と相互に連携を図るものとする。

3 県は、県内の森林の有する水源のかん養機能が琵琶湖等の下流域への安定的な水の供給について欠くことのできないものであることに鑑み、県の実施する森林づくりに関する施策について、当該下流域の人々の協力が得られるよう努めるものとする。

(一部改正〔平成16年条例38号・27年28号〕)

(森林所有者の責務)

第5条 森林所有者は、基本理念にのっとり、その所有する森林について、森林の多面的機能が確保されることを旨として、森林づくりに努めなければならない。

2 森林所有者は、県が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(森林組合の責務)

第6条 森林組合は、基本理念にのっとり、地域における森林の経営の中核的な担い手として、森林づくりおよび森林資源の有効な利用の促進に積極的に取り組むとともに、県が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(県民の責務)

第7条 県民は、基本理念にのっとり、森林がもたらす恵みを享受していることを深く認識し、森林づくりに関する活動に積極的に参加するとともに、県が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第8条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、森林の多面的機能の確保に配慮するとともに、県が実施する森林づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(基本計画)

第9条 知事は、森林づくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 基本計画には、森林づくりに関する中長期的な目標、基本となる方針、施策の方向その他必要な事項を定めるものとする。

3 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ県民、森林所有者等の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ滋賀県森林審議会の意見を聴くものとする。

5 知事は、基本計画を策定したときは、これを公表するものとする。

6 前3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(環境に配慮した森林施業等の推進)

第10条 県は、森林の多面的機能が持続的に発揮されるよう、地域の自然的条件および社会的条件を踏まえ、環境に配慮した森林施業その他の当該地域の森林の発揮すべき機能に応じた適切な森林施業を計画的に推進するため、次項から第7項までに定める措置その他必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、県内の森林整備の現状に鑑み、間伐の推進を図ることが特に重要であることから、総合的かつ計画的な間伐対策を講ずるものとする。

3 県は、継続的な森林資源の利用のためには森林が適切に更新されることが重要であることから、適時に、かつ、適切な方法で、伐採ならびに伐採後の造林および保育が行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

4 県は、風水害等による倒木の発生が県民生活に甚大な影響を及ぼすおそれがあることから、倒木による被害を防止し、または軽減することができるよう必要な措置を講ずるものとする。

5 県は、適切な森林施業が行われるためには森林の土地の境界の明確化が重要であることから、その境界の明確化が速やかに行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

6 県は、自ら適切な森林施業を行うことが困難である森林所有者が他の森林所有者との共同施業、森林組合に対する委託等により適切な森林施業を行うことができるよう、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

7 県は、鳥獣(鳥類または哺乳類に属する野生動物をいう。)による森林に係る被害に関し、ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例(平成18年滋賀県条例第4号)に定めるもののほか、必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(樹齢が特に高い樹木のある森林の保全)

第11条 県は、樹齢が特に高い樹木が相当数存在する森林が、多様な動植物の生息地および生育地であり、かつ、地域の人々の文化と密接に関わりのあるものであることに鑑み、滋賀県自然環境保全条例(昭和48年滋賀県条例第42号)その他関係法令に定めるもののほか、当該森林を保全するために必要な措置を講ずるものとする。

(追加〔平成27年条例28号〕)

(水源のかん養機能の維持および増進)

第12条 県は、森林の有する水源のかん養機能が琵琶湖等の下流域への安定的な水の供給について欠くことのできないものであることに鑑み、森林の有する水源のかん養機能の維持および増進を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(追加〔平成27年条例28号〕)

(県民の主体的な参画の促進等)

第13条 県は、森林づくりに関し県民の主体的な参画を促進し、および琵琶湖等の下流域の人々の協力を得るため、情報の提供、普及啓発その他の必要な措置を講ずることにより、森林の多面的機能についてこれらの者の理解を深めるとともに、これらの者またはこれらの者が組織する団体が行う森林づくりに関する活動に対して、必要な支援を行うものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号〕)

(里山の保全の推進)

第14条 県は、集落周辺にあって、薪炭用材の採取等を通して維持もしくは管理がなされており、またはかつてなされていた森林(以下「里山」という。)の整備およびその多面的な利用を促進することにより里山の保全を図るため、里山の所有者および里山を整備し、または多面的に利用しようとする県民等が協働して行う活動に対して、必要な支援を行うものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号〕)

(流域における森林づくりに関する組織の整備の促進)

第15条 県は、流域における森林づくりを適切かつ効果的に推進するため、県、市町、地域住民、森林所有者、森林づくりに関する活動を行う団体等によって構成される組織の整備に努めるものとする。

(一部改正〔平成16年条例38号・27年28号・令和2年60号〕)

(びわ湖水源のもりの日およびびわ湖水源のもりづくり月間)

第16条 県民および琵琶湖等の下流域の人々が広く森林のもたらす恵みについての理解と関心を深め、森林づくりに関する活動に積極的に参加する意欲を高めるため、びわ湖水源のもりの日およびびわ湖水源のもりづくり月間を設ける。

2 びわ湖水源のもりの日は10月1日とし、びわ湖水源のもりづくり月間は同月とする。

3 県は、びわ湖水源のもりの日およびびわ湖水源のもりづくり月間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号〕)

(農山村の活性化)

第17条 県は、森林と人との継続的な関わりにおいて重要な役割を有する農山村の活性化を図るため、地域資源の活用による都市と農山村の間の交流の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。

(追加〔令和2年条例60号〕)

(県産材の利用の促進)

第18条 県は、自ら率先して県産材の利用に努めるとともに、その利用を促進するため、県産材に関する情報の提供および知識の普及、住宅、公共建築物等における県産材の利用の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、県産材の利用の促進に当たっては、県産材が適切に供給されることが重要であることに鑑み、県産材の生産、加工および流通の合理化および高度化の促進その他の県産材の適切な供給の確保のために必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、県産材の利用の意義に関する県民の理解と関心を深めるため、木育(木材または木製品に触れることを通じて行う木材の特性、木材を利用する文化および県産材の利用に関する啓発活動をいう。)を推進するものとする。

4 県は、市町が実施する県産材の利用の促進に関する施策に関し、市町に対し、必要な情報の提供、助言その他の支援を行うものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(森林資源の有効な利用の促進)

第19条 県は、森林資源の環境に配慮した新たな利用その他の有効な利用を促進するため、森林資源の有効な利用に関する調査研究および技術開発の推進に必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(森林所有者の意欲の高揚等)

第20条 県は、森林所有者の森林づくりに対する意欲の高揚を図るため、適切な森林整備に関する情報の提供、技術の指導その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、林業労働に従事する者の確保および育成を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(森林組合の活性化)

第21条 県は、森林組合が地域の特性に応じた森林の経営の中核的な担い手としての役割を果たすこととなるよう、組織体制の充実、人材の育成その他の森林組合の活性化のための取組に対して、必要な支援を行うものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(森林環境学習の促進)

第22条 県は、森林づくりを支える人材を育成するため、森林内での体験活動の場の提供、情報の提供その他森林の多面的機能についての理解と関心を深めることとなる森林環境学習の促進に必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(財政上の措置)

第23条 県は、森林づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(森林づくりの状況等の公表)

第24条 知事は、毎年、森林づくりの状況および県の森林づくりに関する施策の実施状況を公表するものとする。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

(規則への委任)

第25条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(一部改正〔平成27年条例28号・令和2年60号〕)

この条例は、平成16年4月1日から施行する。

(平成16年条例第38号抄)

1 この条例は、規則で定める日から施行する。

(平成16年規則第66号で平成17年1月1日から施行)

(平成27年条例第28号)

この条例は、平成27年4月1日から施行する。

(令和2年条例第60号)

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

琵琶湖森林づくり条例

平成16年3月29日 条例第2号

(令和3年4月1日施行)

体系情報
第9編 林/第5章 務/第1節
沿革情報
平成16年3月29日 条例第2号
平成16年10月25日 条例第38号
平成27年3月23日 条例第28号
令和2年12月28日 条例第60号