○近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例

平成28年3月23日

滋賀県条例第12号

近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例をここに公布する。

近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例

滋賀県は、古来、近江国と称され、数少ない一国からなる県である。古くから交通の要衝となり、常に人やもの、情報が行き交うといった地理的な条件や琵琶湖とこれを取り囲む山々をはじめとする豊かな自然環境等に基づく独特の風土、文化等の中から、固有の原材料、生産の技術や方法等を用いて、地域に密着した産業や独自の産品が生まれ、発展してきた。

その近江の地場産業は、長い歴史の中で先人の知力によって育まれ、地場産業から生み出される地場産品の価値を全国に発信するとともに、地域の雇用を支える等、地域経済の中心的な役割を果たしてきた。

しかし、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に伴い、国内の需要、雇用や就業の形態等が多様化し、産業構造が変化する中で、地域を基盤とする地場産業は、経営の規模が小さく、生産の効率を高めにくく、その取り巻く環境は極めて厳しいものがある。

近江の地場産業や近江の地場産品は、地域を代表し、地域の住民にとっては誇りであり、その持つ力を最大限に発揮し、地場産業を活性化し、雇用の機会を創出できる成長産業となるように更に育成していくとともに、関係者が互いに連携を図りながら協働して、地場産業が主体となった豊かな地域づくりを進め、地域の個性と特色を生かした地方創生を実現していくことが必要である。

私たちは、長い歴史や独特の風土、文化等の中で生まれ、固有の原材料、生産の技術や方法等を継承してきた近江の地場産業や近江の地場産品が果たしてきた役割の重要性を認識し、近江の地場産業事業者等の競争力を強化し、近江の地場産品に対する新たな需要を開拓することはもとより、これまで近江の地場産業や近江の地場産品で培われた優秀な技術や技能を活用しながら、消費者の需要に即した新商品の開発や新たな事業の展開を図る等の時代の変化に適合していくための新たな取組を積極的に推進していくことにより地域経済および地域社会の発展に寄与できるよう、近江の地場産業や近江の地場産品を振興していくことを決意し、ここに近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関し、県の責務ならびに近江の地場産業事業者および近江の地場産品製造等事業者(以下「近江の地場産業事業者等」という。)ならびに県民の役割を明らかにするとともに、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策の基本となる事項を定め、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、これまで培われた優れた技術および技能を活用して、近江の地場産業および近江の地場産品が時代の変化に適合していくための新たな取組の積極的な推進を図り、もって地域経済および地域社会の発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「近江の地場産業」とは、歴史、風土その他の地域の特性、経営資源等に基づき県内の地域に密着した中小企業に係る企業群であって、次の各号のいずれかに該当するものが行う事業をいう。

(1) 1の市町の区域または2以上の市町の区域にわたる区域において一定の業種に係る工業出荷額が5億円以上であるもの

(2) 1の市町の区域における工業出荷額または工業に属する中小企業の割合が100分の10以上である業種であるもの

(3) 1の市町の区域における一定の業種についての工業に属する中小企業の数が10以上であるもの

2 この条例において「近江の地場産業事業者」とは、県内において近江の地場産業に係る事業を行う者をいう。

3 この条例において「近江の地場産品」とは、次の各号のいずれかに該当する物品をいう。

(1) 近江の地場産業で製造される物品

(2) 伝統的な技術、技能等を用いて県内で製造される工芸品であって、次のいずれかに該当するもの

 伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)第2条第1項の規定により経済産業大臣が指定した伝統的工芸品

 に掲げる伝統的工芸品に準ずるものとして知事が別に定める伝統的な工芸品

(3) 県内で生産され、本県を代表する農産物、林産物、畜産物および水産物ならびにこれらを原料または材料として製造し、または加工した物品であって、知事が認めるもの

4 この条例において「近江の地場産品製造等事業者」とは、前項第2号および第3号に掲げる物品を製造し、もしくは加工し、または生産する事業を行う者をいう。

(基本理念)

第3条 近江の地場産業および近江の地場産品の振興は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 近江の地場産品の価値を高め、その新たな価値を生み出すとともに、その価値を広く周知すること等により、近江の地場産品の需要を拡大すること。

(2) 近江の地場産業事業者等の育成および自立を図ることができるよう、近江の地場産業事業者等の経営基盤の強化を図ること。

(3) 関係者が相互に連携を図りながら協働して、地域の特性を生かし、社会経済情勢の変化に的確に対応した新商品の開発、新たな販路の開拓および多様な分野における事業の展開を推進すること。

(4) 近江の地場産業および近江の地場産品の振興の担い手となる人材(以下「担い手人材」という。)の確保、育成および資質の向上を図るとともに、近江の地場産業および近江の地場産品に係る優れた技術および技能(以下「優れた技術等」という。)の継承を推進すること。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する総合的な施策を策定し、および計画的に実施するものとする。

2 県は、前項の規定による施策の策定および実施に当たっては、近江の地場産業事業者等、市町、大学等の研究機関その他関係者との連携協力に努めるものとする。

3 県は、基本理念にのっとり、近江の地場産品の需要の拡大を図る社会的気運を醸成するとともに、近江の地場産品を積極的に活用し、または使用するよう努めるものとする。

4 県は、市町が近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策を策定し、および実施するときは、必要な情報の提供、助言、支援または調整を行うものとする。

(近江の地場産業事業者等の役割)

第5条 近江の地場産業事業者等は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、優れた技術等を活用して、常に創意工夫を行い、その能力を十分に発揮すること等により、時代の変化に適合していくための新たな取組を積極的に行うよう努めるものとする。

(県民の役割)

第6条 県民は、基本理念にのっとり、近江の地場産業および近江の地場産品に対する関心および理解を深め、近江の地場産品の価値に関する有用な情報を広く発信するとともに、近江の地場産品に愛着を持ち、日常生活において近江の地場産品を積極的に使用するよう努めるものとする。

(基本指針)

第7条 知事は、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策の総合的な推進を図るため、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を策定しなければならない。

2 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する基本的な方向

(2) 近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する目標

(3) 近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策の内容

(4) その他近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する重要事項

3 知事は、社会経済情勢の変化その他事情の変化により必要が生じたときは、基本指針を変更するものとする。

4 知事は、基本指針を策定し、または変更したときは、遅滞なく、これを適切な方法により公表しなければならない。

(基本的な施策)

第8条 県は、基本指針に基づき、近江の地場産業および近江の地場産品を振興するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 近江の地場産品の需要の拡大を図るため、新商品の開発に関する支援、インターネットその他情報通信技術の活用による情報の提供、国内外の多様な需要に応じた商品の販売および商談会等の開催による新たな販路の開拓の促進その他必要な措置を講ずること。

(2) 近江の地場産業事業者等の経営基盤の強化を図るため、経営の改善および合理化、資金の供給の円滑化その他必要な措置を講ずること。

(3) 近江の地場産業事業者等の競争力を強化し、近江の地場産品に対する新たな需要を開拓するため、消費者の需要に即した新商品の開発等を図るための調査研究、優れた技術等を活用した多様な分野における事業の展開の促進その他必要な措置を講ずること。

(4) 担い手人材の確保、育成および資質の向上に対する支援、伝統的な工芸品を製造する技術および技能をはじめとした優れた技術等の継承の推進その他必要な措置を講ずること。

(5) 近江の地場産業および近江の地場産品に対する関心および理解を深めるため、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に向けた普及啓発、多様な学習の機会の提供その他必要な措置を講ずること。

(6) 近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する実態について定期的に調査を行い、当該調査に係る情報および資料を分析し、ならびに提供すること。

(顕彰)

第9条 県は、近江の地場産業および近江の地場産品の振興を図るため、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に寄与したものに対する顕彰を行うものとする。

(実施状況の公表)

第10条 知事は、毎年度、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策に係る実施状況を公表しなければならない。

(推進体制の整備)

第11条 県は、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、体制の整備、関係者による協議会の設置その他必要な措置を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第12条 県は、近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

近江の地場産業および近江の地場産品の振興に関する条例

平成28年3月23日 条例第12号

(平成28年3月23日施行)