○滋賀県歯および口くうの健康づくりの推進に関する条例

平成26年12月26日

滋賀県条例第70号

滋賀県歯および口くうの健康づくりの推進に関する条例をここに公布する。

滋賀県歯および口くうの健康づくりの推進に関する条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 推進計画等(第8条・第9条)

第3章 歯および口くうの健康づくりに関する施策の推進(第10条―第21条)

第4章 財政上の措置(第22条)

付則

食べることは、生きることである。最後まで人としての尊厳を保持しながら、生涯にわたり心身ともに健康で、質の高い生活を送るためには、自分の歯でんで食べることが大切であり、何よりもめる歯をいつまでも保つことが重要である。

歯と口くうの健康は、むし歯や歯周病の予防だけでなく、糖尿病等の生活習慣病の予防に寄与する等、全身の健康の保持や増進に大きな役割を果たしている。

本県では、これまで全国に先駆けて県民の歯と口くうの健康づくりに取り組んできたが、高齢者人口の増加等の県民を取り巻く社会環境の大きな変化に伴い、在宅歯科医療の推進、障害者の歯科保健医療の充実、医科と歯科との連携等に向けての対策の充実が求められている。

私たちは、県民一人ひとりが、歯と口くうの健康づくりの重要性を理解し、主体的に歯と口くうの健康づくりに取り組むとともに、県民誰もが、乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期に応じた歯科検診や歯科保健指導等の歯と口くうの健康に関するサービスを受けることができる環境が整備されることにより、全ての県民が人としての尊厳を保持しながら健康寿命の延伸を図り、生涯にわたり心身ともに健康で質の高い生活を営むことができるよう、歯と口くうの健康づくりを推進していくことを決意し、ここに滋賀県歯および口くうの健康づくりの推進に関する条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、歯および口くうの健康を保持し、もしくは増進し、またはその機能を維持し、もしくは向上させる取組(以下「歯および口くうの健康づくり」という。)の推進に関し、基本理念を定め、ならびに県の責務および県民等の役割を明らかにするとともに、歯および口くうの健康づくりに関する施策の基本となる事項を定めることにより、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民が人としての尊厳を保持しながら健康寿命の延伸を図り、生涯にわたり心身ともに健康で質の高い生活を営むことができる社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 歯および口くうの健康づくりは、歯および口くうの健康が全身の健康を保持し、または増進していくために大きな役割を果たしているという認識の下に、県民一人ひとりが、歯および口くうの疾患(以下「歯科疾患等」という。)を早期に発見し、早期に治療を受けることを促進するとともに、日常生活において歯科疾患等の予防その他歯および口くうの健康づくりに主体的に取り組むことを旨として推進されなければならない。

2 歯および口くうの健康づくりは、乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期に応じた口くうおよびその機能の状態ならびに歯科疾患等の特性に応じて、適切かつ効果的に行うことを旨として推進されなければならない。

3 歯および口くうの健康づくりは、全ての県民が生涯にわたり歯科に係る検診(健康診査および健康診断を含む。以下「歯科検診」という。)、歯科保健指導、口くうに係る健康相談その他の歯および口くうの健康づくりに関するサービス(以下「歯科保健サービス」という。)および歯科医療を円滑に受けることができる環境の整備を図ることを旨として推進されなければならない。

(県の責務)

第3条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的に策定し、および計画的に実施するものとする。

2 県は、歯および口くうの健康づくりに関する施策の策定および実施に当たり、県民、市町その他の関係者に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(県民の役割)

第4条 県民は、基本理念にのっとり、歯および口くうの健康づくりに関する知識および理解を深め、生涯にわたり日常生活において自ら歯科疾患等の予防に向けた取組を主体的に行うよう努めるものとする。

2 県民は、基本理念にのっとり、定期的に歯科検診を受け、および必要に応じて歯科保健指導を受けることにより、歯および口くうの健康づくりに努めるものとする。

3 父母その他の保護者は、基本理念にのっとり、子どもの歯および口くうの健康状態に注意し、当該子どもの歯科疾患等の予防ならびに早期発見および早期治療の促進その他歯および口くうの健康づくりに努めるものとする。

4 県民は、県が実施する歯および口くうの健康づくりに関する施策に協力するよう努めるものとする。

(歯科医療等関係者等の役割)

第5条 歯科医療等関係者(歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士その他の歯科医療または歯科保健指導に関する職務に従事する者をいう。以下同じ。)は、基本理念にのっとり、歯および口くうの健康づくりに資するように、良質かつ適切な歯科医療または歯科保健指導を提供するとともに、歯および口くうの健康づくりに関する知識の普及啓発を行うよう努めるものとする。

2 保健医療関係者(保健および医療に関する職務に従事する者(歯科医療等関係者を除く。)をいう。第5項において同じ。)は、基本理念にのっとり、医科および歯科における予防および治療の連携、情報の共有等により、歯科疾患等の予防その他歯および口くうの健康づくりに努めるものとする。

3 教育関係者(教育および保育に関する職務に従事する者をいう。第5項において同じ。)は、基本理念にのっとり、幼児、児童、生徒等の歯および口くうの健康状態に注意し、歯磨きその他歯および口くうの健康づくりに資する取組の実施により、当該幼児、児童、生徒等の歯科疾患等の予防その他歯および口くうの健康づくりに努めるものとする。

4 社会福祉関係者(社会福祉に関する職務に従事する者をいう。次項において同じ。)は、基本理念にのっとり、介護、介助等を通じて、障害者、高齢者等の歯および口くうの健康状態に注意し、当該障害者、高齢者等の歯科疾患等の予防その他歯および口くうの健康づくりに努めるものとする。

5 歯科医療等関係者および保健医療等関係者(保健医療関係者、教育関係者および社会福祉関係者をいう。以下同じ。)ならびに保健医療等団体(保健、医療、教育および社会福祉の業務を行う団体をいう。以下同じ。)は、相互に緊密な連携協力を図りながら、県が実施する歯および口くうの健康づくりに関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者および医療保険者の役割)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者に対する歯科保健サービスを受ける機会の確保その他雇用する労働者に対する歯および口くうの健康づくりを推進するよう努めるものとする。

2 医療保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいう。以下同じ。)は、基本理念にのっとり、被保険者(同条第8項に規定する医療保険加入者をいう。以下同じ。)に対する歯科保健サービスを受ける機会の確保その他被保険者に対する歯および口くうの健康づくりを推進するよう努めるものとする。

3 事業者および医療保険者は、県が実施する歯および口くうの健康づくりに関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市町との連携等)

第7条 県は、歯および口くうの健康づくりに市町が果たす役割の重要性に鑑み、歯および口くうの健康づくりに関する施策の推進に当たっては、歯科保健サービスの提供を行っている市町および保健医療等団体との連携協力を図るものとする。

2 県は、歯科保健サービスの提供を行っている市町が歯および口くうの健康づくりに関する施策を策定し、および実施するときは、必要な情報の提供、助言、支援または調整を行うものとする。

第2章 推進計画等

(推進計画)

第8条 知事は、歯および口くうの健康づくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(以下「推進計画」という。)を策定するものとする。

2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 歯および口くうの健康づくりに関する基本的な方針

(2) 歯および口くうの健康づくりに関する施策の長期的な目標

(3) 歯および口くうの健康づくりの推進に関し、県が総合的かつ計画的に講ずべき施策

(4) 前3号に掲げるもののほか、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、推進計画の策定に当たっては、あらかじめ、県民、市町および歯科医療等関係者の意見を反映することができるよう、必要な措置を講じなければならない。

4 知事は、推進計画の策定に当たっては、あらかじめ、歯科保健サービスに関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。

5 知事は、推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6 知事は、歯および口くうの健康づくりに関する施策の進捗状況を踏まえ、おおむね5年ごとに、推進計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

7 第3項から第5項までの規定は、推進計画の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 知事は、毎年度、推進計画に基づく施策の実施状況の概要を取りまとめ、これを公表しなければならない。

第3章 歯および口くうの健康づくりに関する施策の推進

(定期歯科検診の受診等の促進)

第10条 県は、歯科疾患等を予防し、口くう機能の維持向上を図るため、県民が、生涯にわたり日常生活において自ら歯科疾患等の予防その他歯および口くうの健康づくりに向けた主体的な取組を行うとともに、乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期に応じて、定期的に歯科検診を受け、および必要に応じて歯科保健指導を受けることが促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(配慮を必要とする障害者等の歯科保健サービス等の機会の確保等)

第11条 県は、障害者または障害児が、歯科疾患等に対する治療その他歯および口くうの健康づくりについて歯科医師から日常的に相談、指導等の支援を受けることができる体制の整備を促進するとともに、定期的にまたは必要に応じて歯科保健サービスおよび歯科医療を受けることができる機会を確保し、ならびに提供するための環境の整備その他必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、障害者または障害児が定期的にまたは必要に応じて歯科保健サービスおよび歯科医療を円滑に受けることができるよう、当該障害者または当該障害児の保護者に対し、歯科疾患等に対する治療その他歯および口くうの健康づくりに関する理解を深めるための研修の実施および普及啓発その他必要な措置を講ずるものとする。

(介護を必要とする高齢者等の歯科保健サービス等の機会の確保等)

第12条 県は、前条に定めるもののほか、介護を必要とする高齢者その他歯科保健サービスおよび歯科医療の提供について配慮を必要とする者が、これらの者の状態に応じた適切な歯科保健サービスおよび歯科医療を受けることができる機会を確保し、ならびに提供する環境の整備その他必要な措置を講ずるものとする。

(在宅歯科保健サービス等)

第13条 県は、前2条に規定する者が、医療機関等において歯科保健サービスおよび歯科医療を受けることが困難である場合には、居宅において歯科保健サービスおよび歯科医療を受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 居宅における歯科保健サービスおよび歯科医療の提供のための関係者相互間の連携協力体制の整備および強化の促進

(2) 居宅における歯科保健サービスおよび歯科医療の提供のための人材の確保および育成の支援

(学校等における歯科疾患等の予防の推進)

第14条 県は、幼児、児童および生徒に係る歯および口くうの健康づくりを推進するため、保育所、幼稚園、小学校、中学校等におけるフッ化物洗口(フッ化ナトリウム等を含む溶液を用いて口くう内を洗浄することをいう。以下同じ。)および歯磨きの普及その他歯および口くうの健康づくりに関する効果的な取組の推進のために必要な措置を講ずるものとする。

2 知事または県教育委員会は、幼稚園、小学校、中学校等においてフッ化物洗口が実施される場合には、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第5条の規定による学校保健計画またはこれに準ずる計画に位置付けて実施するように助言することその他フッ化物洗口の円滑な実施のために必要な援助の実施に努めるものとする。

(医科歯科連携の体制の構築)

第15条 県は、糖尿病、誤えん性肺炎、がんその他の歯科疾患等と関係を有する疾病を予防し、または改善するための施策と連携して、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、医師および歯科医師ならびにこれらの者を構成員とする保健医療等団体が相互に連携協力を図る体制の構築に努めるものとする。

(普及啓発等)

第16条 県は、県民が歯および口くうの健康づくりについての関心および理解を深め、歯および口くうの健康づくりに向けた主体的な取組を行う意欲を高めるため、学校、家庭、地域、職域その他の様々な場において、歯および口くうの健康づくりに関する知識および歯科疾患等の予防(生活習慣病および喫煙、食生活、運動その他の生活習慣による歯および口くうの健康への悪影響の防止を含む。)に関する普及啓発、多様な学習の機会の提供、相談体制の整備その他県民が歯および口くうの健康づくりに向けた主体的な取組を行う意欲を高めるために必要な措置を講ずるものとする。

(調査分析等)

第17条 県は、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、定期的に歯および口くうの健康づくりに関する実態について調査を行い、当該調査に係る情報および資料を分析し、ならびに提供するものとする。

(人材の育成、資質の向上等)

第18条 県は、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、歯および口くうの健康づくりを担う人材を育成するとともに、歯科医療等関係者、保健医療等関係者その他歯および口くうの健康づくりに関わる者に対する研修の実施その他資質の向上を図るための措置を講ずるものとする。

(滋賀県歯および口くうの健康づくり週間)

第19条 県は、歯および口くうの健康が生涯にわたる健康の保持および増進に欠くことのできないものであることについての県民の関心および理解を深め、歯および口くうの健康づくりに向けた主体的な取組を行う意欲を高めるため、滋賀県歯および口くうの健康づくり週間(以下「健康づくり週間」という。)を設ける。

2 健康づくり週間は、11月8日から同月14日までとする。

3 県は、健康づくり週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(推進体制の整備)

第20条 県は、歯および口くうの健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、体制の整備その他必要な措置を講ずるものとする。

(歯および口くうの健康づくり推進協議会)

第21条 県、市町、歯科医療等関係者、保健医療等関係者、保健医療等団体その他適当と認めるものは、歯および口くうの健康づくりの効果的な推進に関し必要な措置について協議するため、歯および口くうの健康づくり推進協議会(以下「推進協議会」という。)を組織することができる。

2 推進協議会において協議が整った事項については、推進協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。

3 前2項に定めるもののほか、推進協議会の運営に関し必要な事項は、推進協議会が定める。

第4章 財政上の措置

第22条 県は、歯および口くうの健康づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 この条例の施行の際現に策定されている滋賀県歯科保健計画は、第8条第1項の規定により策定された推進計画とみなす。

3 この条例の施行の際現に組織されている滋賀県生涯歯科保健推進協議会は、第21条第1項の規定により組織された推進協議会とみなす。

滋賀県歯および口腔の健康づくりの推進に関する条例

平成26年12月26日 条例第70号

(平成26年12月26日施行)

体系情報
第5編 生/第3章 公衆衛生/第1節 予防衛生
沿革情報
平成26年12月26日 条例第70号