○滋賀県がん対策の推進に関する条例

平成25年12月27日

滋賀県条例第74号

滋賀県がん対策の推進に関する条例をここに公布する。

滋賀県がん対策の推進に関する条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 がんの予防および早期発見の推進(第7条―第10条)

第3章 質の高いがん医療の提供の推進(第11条―第15条)

第4章 がん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上(第16条―第19条)

第5章 がん患者およびその家族の安心を支える社会の構築(第20条―第22条)

第6章 がん対策の推進(第23条―第27条)

付則

健康に安心して暮らせる社会を実現することは、私たちみんなの願いである。

がんは、我が国および滋賀県における死因の1位を占め、男性の2人に1人、女性の3人に1人が、生涯のうちでがんに患する可能性があると推定されている。がんは、まさに、県民の生命、健康および生活を脅かす重大な問題となっている。

滋賀県では、がん対策の様々な取組を進めてきたが、がんに患する者は年々増加する傾向にある。

こうした状況から、がんの予防を推進し、がん検診の受診率を向上させるとともに、がん患者本人の意向を十分に尊重した良質ながん医療を提供する体制を整備することが、ますます必要になっている。

このためには、県と市町による啓発活動や保健医療福祉関係者の取組はもちろんのこと、県民ががんに関する正しい知識を身につけ、がんの予防や早期発見、治療に主体的に取り組むことが欠かせない。

さらに、医療の進歩によりがんに患した者の就労、就学等の問題が従来にも増して大きな課題となっている。がん患者とその家族を社会全体で支え、治療と生活を両立させることができるための取組を進めることも重要である。

私たちは、全ての県民が健康に安心して暮らせるよう、がん対策を推進することを決意し、ここに滋賀県がん対策の推進に関する条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、がん対策の推進について、基本理念を定め、県、保健医療福祉関係者(がんの予防および早期発見の推進またはがん医療もしくはがん患者に対する介護に従事する者をいう。以下同じ。)、県民および事業者の責務を明らかにするとともに、がん対策の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民の健康の保護を図るとともに、より安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 がん対策は、がんが県民の生命、健康および生活にとって重大な問題となっている現状に鑑み、がん患者およびその家族を含む県民の立場に立って推進されなければならない。

2 がん対策は、がんの予防および早期発見のための県民の自主的な取組を促進するとともに、がん患者が居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)が提供されること等により、がんによる死亡者を減少させることを旨として推進されなければならない。

3 がん対策は、がんが、身体的苦痛のみならず精神的苦痛、経済的負担その他社会生活全般にわたる苦痛をがん患者およびその家族に与えるものであることに鑑み、その苦痛を可能な限り軽減するとともに、療養生活の質の維持および向上を図り、がん患者が安心して治療を受けながら充実した生活を営むことができるようにすることを旨として推進されなければならない。

4 がん対策は、県、保健医療福祉関係者、がん患者およびその家族を含む県民ならびに事業者の適切な役割分担による協働により推進されなければならない。

(県の責務)

第3条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、がん対策に関する施策を総合的に策定し、および実施するものとする。

2 県は、がん対策の推進に当たっては、国、市町、保健医療福祉関係者および患者団体(がん患者、その家族等が組織する団体をいう。以下同じ。)と相互に連携を図るものとする。

3 県は、がん対策の推進に市町が果たす役割の重要性に鑑み、市町ががん対策に関する施策を策定し、および実施するために必要な助言、支援または調整を行うものとする。

(保健医療福祉関係者の責務)

第4条 保健医療福祉関係者は、基本理念にのっとり、がんの予防および早期発見の推進ならびにがん患者に必要な介護の提供に努めるとともに、がん患者の意向を十分尊重した良質ながん医療の提供に努めなければならない。

2 保健医療福祉関係者は、県が実施するがん対策に関する施策に協力しなければならない。

(県民の責務)

第5条 県民は、基本理念にのっとり、がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うとともに、がん検診を積極的に受けるよう努めるものとする。

2 県民は、がん患者およびその家族が置かれている状況を深く認識し、がん患者が安心して治療を受けながら充実した生活を営むことができる社会づくりに寄与するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、がん対策に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるとともに、県が実施するがん対策に関する施策に協力しなければならない。

第2章 がんの予防および早期発見の推進

(がんの予防および早期発見の推進)

第7条 県は、がんの予防および早期発見を推進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 喫煙、食生活、運動等の生活習慣、ウイルス等の感染および生活環境が健康に及ぼす影響その他のがんの予防に関する啓発および知識の普及

(2) 禁煙に取り組もうとする者への支援

(3) がん検診の受診を促進するための施策

(4) がん検診の結果の把握、点検および評価の実施その他のがん検診の質の向上を図るための施策

(5) がん検診に従事する者の資質の向上および確保を図るための施策

(受動喫煙の防止)

第8条 県は、学校、病院、官公庁その他の公共性の高い施設において、受動喫煙を防止するために必要な施策を講ずるものとする。

2 事業者は、その事業の用に供する事務所、店舗その他の施設に勤務する者および当該施設を利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

3 県は、前項の規定により事業者が講ずる措置を促進するため、情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。

(事業者によるがん検診の受診機会の確保)

第9条 事業者は、その雇用する者のがん検診を受診する機会が確保されるよう、市町が実施するがん検診の受診を容易にするための就業環境を整備し、またはがん検診を実施するよう努めなければならない。

(がんに関する教育)

第10条 県は、市町と連携し、学校その他の教育機関において児童、生徒および学生ががんに関する理解(患者の人権に関するものを含む。)を深めるための教育を推進するものとする。

第3章 質の高いがん医療の提供の推進

(医療従事者の確保)

第11条 県は、手術、放射線療法、化学療法、緩和ケア(がん患者の身体的または精神的な苦痛の緩和、社会生活上の不安の軽減等を目的とする医療、看護、介護その他の行為をいう。以下同じ。)、リハビリテーションその他のがん医療に携わる専門性の高い知識および技能を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師その他の医療従事者が確保されるよう、当該医療従事者の育成、専門性の高い知識および技能の習得に対する支援その他必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療体制の整備等)

第12条 県は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく質の高いがん医療を受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) がん診療連携拠点病院およびこれに準じるがん医療等の提供を行う医療機関の機能の分担の促進

(2) 前号に規定する医療機関相互間およびこれらと地域における医療機関との連携協力体制の整備および強化の促進

(3) 手術、放射線療法および化学的療法を効果的に組み合わせた医療を提供する体制の整備の支援

(4) 保健医療福祉関係者が、専門性を生かしつつ、相互に連携しながらがん医療を提供する体制の整備の支援

(5) がん患者の求めに応じて先進的ながん医療が早期かつ適切に提供されるために必要な情報提供、助言その他の支援

(6) がん医療を行う上で必要な医薬品および医療機器の研究開発を促進するための事業者および医療従事者の連携協力体制の整備の支援

(セカンドオピニオン)

第13条 県は、がん患者がセカンドオピニオン(診断または治療に関する担当医師以外の医師の意見をいう。)を取得しやすい環境の整備、情報の提供その他の支援を行うものとする。

(在宅医療)

第14条 県は、がん患者が居宅または地域で適切ながん医療を受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 在宅でのがん医療およびがん患者に対する介護の提供のための保健医療福祉関係者相互間の連携協力体制の整備および強化の促進

(2) 在宅でのがん医療に従事する人材の確保および育成の支援

(骨髄移植およびさい帯血移植の促進)

第15条 県は、白血病等の血液がんに対し有効な治療法である骨髄移植およびさい帯血移植を促進するため、保健医療福祉関係者と連携し、骨髄バンク事業およびさい帯血バンク事業に関する啓発および知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

第4章 がん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上

(緩和ケア)

第16条 県は、がん患者ががんと診断された時からその病状等に応じた緩和ケアを受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 緩和ケアに関する啓発および知識の普及

(2) 緩和ケアの継続的な提供のための保健医療福祉関係者相互間の連携協力体制の整備および強化の促進

(3) 緩和ケアの専門的な知識および技能を有する人材の確保および育成の支援

(相談支援体制)

第17条 県は、がん患者およびその家族を支援するため、市町、保健医療福祉関係者、患者団体等と連携し、がん患者およびその家族に対する相談支援体制の充実を図るための施策を講ずるものとする。

2 県は、がんに患した者またはその家族が、その経験を基にがん患者またはその家族の相談に応ずる活動を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(がん対策に係る活動の促進)

第18条 県は、患者団体およびがん患者を支援することを主たる目的とする団体が行うがん対策に係る活動を促進するために必要な支援を行うよう努めるものとする。

(がんに関する情報の収集および提供)

第19条 県は、がん対策に資する情報を収集し、整理し、および分析するとともに、県民に対し、がん医療またはがん患者の療養生活に関する情報その他のがんに関する正確で分かりやすい情報を提供するものとする。

第5章 がん患者およびその家族の安心を支える社会の構築

(就労等の支援)

第20条 県は、がんに患した者の就労、就学および社会活動への参加に資するよう、がんの患および治療の現状、治療後の健康の回復等に関し、事業者、その雇用する者その他県民の理解を深めるための啓発活動を推進するものとする。

2 県は、がんに患したことによって離職した者に対し、その円滑な再就職を図るため、就労に関する相談、情報の提供その他の必要な支援を行うように努めるものとする。

(事業者の措置)

第21条 事業者は、その雇用する者のうち、本人またはその家族ががんに患した者について、就労を継続しつつがんの治療を受け、および療養し、またはその家族を看護することを容易にするための措置を講ずるよう努めるものとする。

2 県は、前項の規定により事業者が講じる措置を促進するため、医療機関と連携し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(小児がん患者等に対する支援)

第22条 県は、市町および保健医療福祉関係者と連携し、小児がん患者に対して適切ながん医療その他必要な医療が提供され、および適切な教育環境が確保されるとともに、小児がん患者およびその家族に対する支援が行われるよう、必要な施策を講ずるものとする。

第6章 がん対策の推進

(がん登録)

第23条 県は、効果的ながん対策の立案およびがん医療の水準の向上に資するため、がん登録(がん患者のがんの患、転帰その他の状況を把握し、分析するためにがんに係る情報を登録する制度をいう。)を推進するものとする。

2 県は、前項の施策を実施するに当たっては、がん患者の個人情報の保護が適切に行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

(滋賀県がんと向き合う週間)

第24条 県民および事業者の間に広くがんに関する理解と関心を深めるとともに、がんの予防、早期発見等に関する自主的な取組への意欲を高めるため、滋賀県がんと向き合う週間を設ける。

2 滋賀県がんと向き合う週間は、2月4日から同月10日までとする。

3 県は、滋賀県がんと向き合う週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(推進体制の整備)

第25条 県は、がん対策に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(がん対策推進協議会)

第26条 県、市町、保健医療福祉関係者、患者団体等その他のがん対策に取り組むものは、がん対策の効果的な推進に関し必要な措置について協議するため、がん対策推進協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。

2 協議会において協議が整った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。

3 前2項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

(財政措置)

第27条 県は、がん対策に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

滋賀県がん対策の推進に関する条例

平成25年12月27日 条例第74号

(平成25年12月27日施行)

体系情報
第5編 生/第3章 公衆衛生/第1節 予防衛生
沿革情報
平成25年12月27日 条例第74号