○滋賀県子ども条例

平成18年3月30日

滋賀県条例第3号

滋賀県子ども条例をここに公布する。

滋賀県子ども条例

私たちの滋賀は、母なる琵琶湖を抱き山々に囲まれ、豊かな風土、歴史、文化に恵まれた地であり、多くの人が住み続けたいと思う暮らしやすく活力のある県である。この滋賀の地において生まれ育つすべての子どもが健やかに成長していくことは、県民すべての願いである。この滋賀の未来に向けて、私たちは、子どもが大きく夢をはぐくみ社会の希望として心身ともに健全に育てられる環境づくりに取り組んでいかなければならない。

これまで、私たちは、大人中心に物事を考え、豊かさや便利さを追い求めてきた。その結果、家庭では、過保護、子どもの虐待など養育力や教育力の低下がみられるようになり、地域社会では、人間関係や社会意識の希薄化が見受けられ、子どもが安全に安心して育つ場が失われつつある。また、情報技術の進歩やその普及が、無防備に子どもが有害情報に触れる機会をもたらし、目的意識を持たない子どもの増加などがニートの問題などを生み出すなど、子どもに様々な影響を及ぼしている。

私たち県民は、今こそ、子どもが将来自立した社会の担い手として育つためには、何をなすべきか、子どもにとって何が幸せかを社会全体で考えていかなければならない。家庭では、家族の深い愛情と理解によって子どもの豊かな人格を形成するとともに、自立性を培い、地域社会では、子どもの社会性を養うとともに、地域全体で子どもの安全を守り、育ち学ぶ施設では、自ら学び、考え、行動する「生きる力」や勤労観を育成することが求められている。また、県は、子どもの虐待の防止など子どもの人権を保障する取組を進めるとともに、地域の人々の子どもへの関心を高める施策や子どもの居場所づくりなどの取組を進めなければならない。

私たち県民は、ともに手をとりあって、子どもが人権を尊重され夢を持って健やかに育ち、子どもを安心して育てることのできる環境づくりに取り組み、滋賀で生まれたことの良さと滋賀で子どもを生み育てることの良さを実感できる社会である「子どもの世紀」の実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、子どもが人権を尊重され夢を持って健やかに育ち、子どもを安心して育てることのできる環境づくり(以下「育ち・育てる環境づくり」という。)について、基本理念を定め、県等の責務を明らかにするとともに、県の施策の基本となる事項を定め、育ち・育てる環境づくりのための施策を総合的かつ計画的に推進することにより、もって次代の社会を担うすべての子どもを健やかにはぐくむ社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「子ども」とは、18歳未満の者をいう。

2 この条例において「育ち学ぶ施設」とは、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設および学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他の施設のうち、子どもが入所し、通所し、または通学する施設をいう。

(基本理念)

第3条 育ち・育てる環境づくりは、子どもが愛情深く大切に育てられるとともに、様々な人々とかかわり、多様な体験をし、および学ぶことにより人間性と能力を豊かにはぐくみ、自立した社会の担い手として育つことを旨として推進されなければならない。

2 育ち・育てる環境づくりは、子どもが次代の社会を担う大切な存在であるという認識の下に、社会全体で子どもを育てるとともに、子どもの成長を支援することを旨として推進されなければならない。

3 育ち・育てる環境づくりは、子どもにとって最善の利益が考慮されることを旨として推進されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める育ち・育てる環境づくりについての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、育ち・育てる環境づくりに関する基本的かつ総合的な施策を策定し、および実施するものとする。

2 県は、前項の施策を推進するに当たっては、国および市町との適切な役割分担を踏まえるとともに、相互に連携を図るものとする。

(保護者の責務)

第5条 父母、里親その他の保護者(以下「保護者」という。)は、家庭が子どもの育つ基盤であり、自らが子育てについて第一義的な責任を有するという認識の下に、基本理念にのっとり、深い愛情の中で子どもを健やかに育てなければならない。

(県民の責務)

第6条 県民は、子どもが地域住民、地域で様々な活動を行う事業者または団体等とかかわりを持ちながらはぐくまれるという認識の下に、基本理念にのっとり、子どもの成長および子育てに関心を持ち、地域社会において、育ち・育てる環境づくりに相互に協力して取り組むよう努めるとともに、県が実施する育ち・育てる環境づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(育ち学ぶ施設の責務)

第7条 育ち学ぶ施設は、基本理念にのっとり、保護者および地域社会との連携を図りながら、子どもが安心して育ち、学ぶ環境づくりに努めなければならない。

(大綱の策定)

第8条 知事は、県、保護者、県民および育ち学ぶ施設が一体となって育ち・育てる環境づくりに取り組むための指針として、育ち・育てる環境づくりに関する大綱(以下「大綱」という。)を策定するものとする。

2 大綱には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 育ち・育てる環境づくりに保護者、県民および育ち学ぶ施設(以下「県民等」という。)が取り組むに当たっての行動の基本となる指針

(2) 育ち・育てる環境づくりに関する施策の総合的な推進を図るための指針

(3) その他育ち・育てる環境づくりの取組に関し必要な事項

3 知事は、大綱を策定するに当たっては、あらかじめ県民の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、大綱を策定したときは、これを公表するものとする。

5 前2項の規定は、大綱の変更について準用する。

(広報活動等)

第9条 県は、育ち・育てる環境づくりに関する県民等の理解を深めるため、広報活動、情報の提供、学習機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の活動に対する支援)

第10条 県は、育ち・育てる環境づくりに関する活動への県民等の主体的な参画を促進するとともに、県民等またはその組織する団体が行う育ち・育てる環境づくりに関する活動に対して、情報の提供、交流機会の提供その他の必要な支援を行うものとする。

(市町に対する助言等)

第11条 県は、市町に対して、育ち・育てる環境づくりに関する施策の策定および実施について、必要な助言および協力を行うものとする。

(計画の策定)

第12条 知事は、子どもの虐待の防止その他の育ち・育てる環境づくりに関し必要となる施策を計画的に実施するために必要があると認めるときは、当該施策に関する実施計画を策定するものとする。

(相談の処理)

第13条 知事は、子どもの虐待、いじめその他の育ち・育てる環境づくりを推進するに当たっての各般の問題について、子どもをはじめとする県民等から相談の申出があった場合は、当該申出の適切な処理を行うものとする。

2 知事は、前項の申出に係る相談に応じ、必要な調査および助言を行うほか、関係行政機関への通知その他申出の処理のため必要な措置を講ずるものとする。

(拠点の整備)

第14条 県は、県民等による育ち・育てる環境づくりのための活動等を推進するための拠点を整備するものとする。

(その他)

第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成18年4月1日から施行する。

滋賀県子ども条例

平成18年3月30日 条例第3号

(平成18年4月1日施行)