更新日:2015年3月5日

一句詠んでみませんか

「びわこにも マラソンきたきた 春が来た」


皆さんおはようございます。いよいよ3月です。滋賀県公館の庭にも梅が咲き、草木の息吹が感じられる季節となりました。

昨日は、雨の中、春の到来を告げます「びわ湖毎日マラソン」が開催されました。第70回という節目の大会でもありました。沿道でも多くの皆さんが声援を送っていただきました。雨の中、大会を無事終えるためにご尽力いただきました関係者の皆様方に敬意を表したいと存じます。

本格的な春の季節を迎えるにあたりまして、今日は俳句についてお話したいと思います。

7月の知事就任時に「蝉しぐれ 沸き出る思い おさえつつ」と一句詠んで以来、折に触れて俳句を詠むことを始め、時には「知事、一句詠んでください」とお声掛けもいただけるようになりました。近頃は歳時記を持ち歩き、ふと気づいた自然の営みや、滋賀の人々の暮らしの中に息づく美や心を言葉に残すよう努めております。

さて、『奥の細道』で知られる俳聖・松尾芭蕉も、近江で多くの句を詠みました。芭蕉はその生涯で1,000近い句を詠んだと言われておりますが、その一割近くの89句が大津を中心としたこの地域で詠まれているのだそうです。大津へ向かう峠の途中で詠まれた

山路来て 何やらゆかし 菫草

(やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ)

という代表的な句をはじめ、

蛍見や 船頭酔うて おぼつかな

(ほたるみや せんどうようて おぼつかな)

といった、思わず口許が弛んでしまうような句まで、近江で過ごす時間をこよなく愛した芭蕉。その芭蕉の滞在を支えていたのは、近江蕉門とも呼ばれる近江の人々でした。石山国分の幻住庵を提供した菅沼曲翠(すがぬま・きょくすい)や、大津での滞在をサポートした河合智月(かわい・ちげつ)をはじめ、芭蕉を温かく迎える近江の人々の姿は、

行く春を 近江の人と 惜しみける

(ゆくはるを おうみのひとと おしみける)

という晩年の句になって表れています。芭蕉の足跡をたどってみましても、思いを共にできる「ひと」の存在が、昔から変わらない滋賀の強みなんだと改めて思います。

そして、これら人々との交流・つながりをより深めるスパイスとして、琵琶湖や山々、そして里の田園風景をはじめとする景観の美しさも、滋賀ならではの強みです。

錠あけて 月さし入れよ 浮御堂

(じょうあけて つきさしいれよ うきみどう)

と詠んだ芭蕉たちのように湖上に舟を浮かべ、月見の宴を催すことは、現代の我々にはなかなか叶わないかもしれませんが、日々の生活における一瞬の情景に心をとめ、感動や想いとともにつづることは、自分の心の安らぎとともに、その時、その場所、その人々の魅力を改めて発見することにもつながると思います。

職員の皆さんも滋賀の情景や暮らしの美などを、五・七・五の言葉で詠んでみませんか。俳句は全国で300万人もの愛好者がいらっしゃるそうで、今や海外においても「世界で最も短い詩」として人気を集めているといいます。英語や中国語など様々な言語であっても、3行の中に「春夏秋冬の季節感を入れること」「自分の世界や心を映し出すこと」「“時”をつかまえること」といった簡単な約束事だけで、気軽に自由に詠めることが人気の理由だとも伺っております。

年度末の業務が慌ただしいと思います。卒業、引っ越し、異動のシーズンでもあります。ひととき、日々の情景に心を委ねてみては、また一句詠んでみてはいかがでしょうか。

今月の知事談話はこれで終わります。ともに元気に頑張りましょう。