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【コラム】体育とスポーツの移り変わり

今年は、4年に一度開催されるオリンピックの年にあたり、これを機に本県の明治以降のスポーツについて振り返ってみました。明治5年(1872)、明治政府は国民の体格・体力改善を目的に小学校の教科に「体術」(体育)を取り入れます。この教科は、翌6年に「体操」と改められますが、この語の元になった “gymnastics”は、器械運動や格闘技など軍事目的の身体運動を意味していました。しかし、当初は子どもたちの興味を引くものでなく、後に徒競走や野球などのスポーツ(遊戯)や、体の曲げ伸ばしを行う軽体操(普通体操)を採用し、体育に含めたのです。
今回は、明治~昭和初期の体育やスポーツ、総力戦体制に向けた対策で行政事務効率化の一つとして取り入れられたラジオ体操などを見ていきたいと思います。

学校教育における体育

明治5年(1872)8月、政府より発せられた「学制」の中に現在の体育を意味する「体術」が記載されています【明あ19(214)】。しかし、導入当時この内容を説明できる人は少なく、指導者もいませんでした。同6年に「体術」は「体操」へと改称され、政府は1日1~2時間実施することや、体操の絵図が描かれた『東京師範学校板体操図』を手本とするよう指示を出します。ただ、それでも十分な指導はなされなかったようです。
明治11年10月、東京に体操指導者を育成する体操伝習所が設置されると、学校体育も全国に普及しました。同25年作成の「滋賀県小学校規則草按」にある「体操」を見ると、尋常小学校においては「遊戯」を初めに行い、しばらくして「普通体操」を加え、男児には、整列や行進など隊列運動を主とする「兵式体操」の一部を教えることとあります。そして高等小学校では、男児には主として「兵式体操」を、女児には「普通体操」もしくは「遊戯」を教える定めとしました【明し174(33)】。当時の中学校や実業学校など中等学校における「兵式体操」では、銃器を用いた実弾訓練も行われました。
大正14年(1925)、公立の中等学校以上の学校に陸軍現役将校が配属され、従来の「兵式体操」からより軍事教育の要素をふまえた「教練」が教科に導入されます。そして昭和7年(1932)10月、県は規律厳守・武力向上を目的に、皇子山射撃場(現在の大津市山上町)で第1回県下中等学校連合射撃大会を計画しました【明し157(15)】。

スポーツイベントの誕生

明治20年代後半より、中等学校生徒や大学生を中心に競技スポーツのイベントが盛んに開催されるようになります。県内でも、ボート競漕や野球が対校で多く催されています。例えば、明治28年、県が琵琶湖連合競漕会を主催し、短艇競漕の対抗試合を実施しました【明お58合1(41)】。また、大正13年に京都帝国大学学友会端艇部が作成した競漕大会競路略図によると、大会には近隣府県の学校の参加もあり、中等学校が1100m、高等専門学校が1300mで争われたことがわかります【大ぬ21(79)】。
一方、野球に関しては、明治35年から大正9年の間、「東海五県連合野球大会」が開かれます。滋賀・愛知・三重・岐阜・静岡の各県における中等学校数校の有志が定期的に集まり試合を行いました。同大会は、現在の全国高等学校野球大会に影響を与える一つとなります。そして県内初となる中等学校の専用球場も、昭和2年7月、現在の大津市藤尾地区に設けられました。名前を緑ヶ丘球場といい、地元地主の土地を借り京阪電鉄が建設します。この球場は、昭和17年頃まで全国中等学校野球大会京津予選などに使用されました【大と20(15-1)】。
また、県にはオリンピックに関する史料も残されています。日中戦争(昭和12~20年)の影響で中止になりますが、昭和15年のオリンピックは東京で予定されていました。史料には、全国的に有名な県の競技は端艇(ボート)競漕であること、県が最も力を入れるスポーツは水泳であることが記されています。琵琶湖では当初、水泳よりも競漕が盛んに行われていました。県は、県内からオリンピック選手を輩出させるため、陸上と水泳の2種目について講師を招き、講習会を開く計画を立てています【昭お45(24)】。

県庁ラジオ体操の導入

ラジオ体操は、アメリカの生命保険会社により考案されたものを、昭和3年に日本放送協会(NHK)などが取り入れたもので、同9年に全国放送されました。県庁でラジオ体操を導入したきっかけは、同12年5月、戦時下における行政業務の簡素効率化を要求する「第一線行政事務刷新」が政府より出されたことにあります。県は、大阪市が先に作成した「事務改善運動の概要」の中に、健康維持のためラジオ体操を奨励する内容が記載されていたことから、これに倣い導入したのです【昭お30(5)】。同年6月15日、県庁舎は改築のため大津市別所に仮庁舎として移転しますが、その日の正午から、県庁職員全員でラジオ体操を開始することになりました。
ラジオ体操は、現在も毎朝開庁前に放送されていますが、昭和12年6月にもすでに実施されていたのです。

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