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ふれあいプラスワン

一人ひとりの人権を大切に

同和問題強調月間特集

近江の食文化 そのルーツを探って

みなさんは「近江の食文化」と聞いて何を思い浮かべますか?鮒寿司やホンモロコを使った料理など琵琶湖に関わるものを挙げる方も多いと思います。また、近江牛に代表されるように滋賀県では古くから食肉産業も盛んに行われてきました。そこで、今回の「ふれあいプラスワン」では、地元に根付く食肉文化とその背景について田中政明さんにお話を伺いました。

近江の食肉文化

田中政明さん

京都大学国際部非常勤講師
田中 政明さん

元滋賀県立高校教諭。
県内各地の生活文化史の聞き取り調査を行う。

著書

田中さんの著書
「どろぉ 食文化・・屠場のある街」

昔は牛を解体するのは御法度であり、食べる文化もなかったといわれています。ですが、実際には江戸時代から彦根藩が薬という名目で、肉の味噌漬けを将軍に献上していました。

近江は米どころだったので多くの牛を飼い、食べることが解禁されてからは、農耕で働き終えた牛が食されていました。滋賀では琵琶湖に関わる食材のほうに目が向きがちですが、今では近江牛は市場においても高く評価されています。

「ナカノモン」と呼ばれる内臓を調理して食す

牛は「正肉」と「ゴミ皮」と呼ばれるものの2種類に分けられます。ゴミ皮は皮や足、頭、内臓で、皮は太鼓に使われます。正肉は食肉ルートに乗りますが、ゴミ皮は捨てられることも多く、「ナカノモン」と呼ばれるホルモンは、あまり食されることはありませんでした。ただし、有益な動物性タンパク質ですから、地元の人々は、捨てずにいろいろな調理の仕方で食してきたのです。

地元の人々にとって合理的で懐かしい料理

現在、ホルモンは「焼く」がメインですが、昔から食べている人々の間では、今でも「湯がく」「煮る」という調理が中心です。地元の人々が、売られずに残ったものを分かち合い、地域に根ざした食文化を育んできました。

たとえば「さいぼし」は馬肉をスライスし、竿にぶら下げて燻しながら焼いた料理で、味つけは塩だけという非常においしいつまみです。

地元にはもっと様々な料理があります。和牛のスジ肉を煮詰めて固めた「凍り」という料理があります。これは切り干し大根を炊く際の調味料代わりにも使われます。

その他にはスジ肉を入れた「どろぉ」というお粥。30年くらい前まで、法事などの振る舞いとして出され、人が集まる場で一役買っていました。また、「ナカノモン」は、婚約の披露で祝い膳として振る舞われたもので、2、3日宴会が続く時に牛一頭分を湯がき、それをスライスして醤油や生姜を付けて食べます。時間が経ち乾いてくれば、再度湯通しし、殺菌して食べていました。

それらを味わう人々は、食材を隅々まで使い切り、傷む前に再び湯がき、凍りを使って出汁をとるなどして、流通ルートに乗らない食材を無駄なく使って、長く食べる知恵を持っていたのです。今ではなかなか材料を手に入れることが難しくなり、そうした食文化や習慣にも陰りが見えてきました。それでも昔から常備食や祝い膳に使われたのは、いつでも手に入り新鮮で安価、工夫すれば長く食べられたからで、スジやナカノモンは合理的な食材でもあったのです。

それぞれの土地の知恵がつまったものとして

一般に、自分が知らないものだと「なぜそんなものを食べるのか」と思いがちです。それは自分を物差しにしているからで、知らないものに対して「こんなものを?」と特別視してしまう。それが差別につながるということが、歴史の中でもありました。琵琶湖の近くの町には淡水魚の料理が多くあるように、それぞれの土地にそれぞれの調理法や知恵があり、食材を有効に使っているのです。それを「なんだあんなもの」というのはおかしいと思いませんか。世界中を見ても同じことです。捨ててはもったいないと思い、うまく使って命をおいしくいただく。近江の食文化はそのような習慣の中で生まれたものとして知り、理解してほしいと思います。

インタビューを終えて

田中さんのお話を読んでみなさんはどう感じられましたか。

田中さんが地元の方に聞き取りをされた際には、昔受けた差別を思い出され声を詰まらせながらお話になる方もいらっしゃったそうです。

残念ながら同和問題に対する誤った認識や偏見が未だに残っています。

そのため県と市町では、県民のみなさんが同和問題についての正しい理解と認識を深め、県民一人ひとりが部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消に向けて主体的に行動できるよう、様々な取組を行っています。

今回「どろぉ」の写真については地元の方に料理をご提供いただきました。ありがとうございました。

料理の紹介

どろぉの写真
どろぉ

スジ肉を湯がいて湯を捨て、肉を一口大に切って野菜を入れ、火が通ったところで、洗っておいた小米※を入れ味つけします。“どろどろ”のお粥です。
※小米…くだけた米

堀越 昌子さん

赤ちゃんからお年寄りまで食べられる、バランスのとれた一品。すじ肉はコラーゲンが豊富です。命を丸ごといただき、部位に合わせて調理する技術はすばらしいですね。

さいぼしの写真
さいぼし

馬肉を繊維に沿ってスライスし、竿にぶら下げ燻製にしたもの。味つけは塩だけ。おつまみとしてそのまま、あるいは好みで生姜醤油などをつけて食べます。

堀越 昌子さん

馬肉は牛肉に比べて脂身が少なくヘルシー(牛肉の赤身の脂肪分は12%、馬肉は2.5%)。高タンパク低カロリー、鉄分も多く含まれています。一つの食材を多様な手法で調理する技術はアジア特有ですね。

京都華頂大学教授 堀越 昌子さん 専門:食物学・食文化

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