犯罪被害者やその家族を支える社会をつくるために温かく寄り添う心を広げよう

娘「こないだの夜マス美ちゃんがバイトの帰りにかばんをひったくられたんだって!」母「まあ、マス美ちゃんにけがはなかったの?」父「最近は女の子も夜遅く一人で出歩くからなぁ。だから危ない目にあうんだよ。」母「お父さん、それは違うわ。時間の問題じゃないのよ。ひったくりをした人が悪いのよ。そういう言い方は被害にあった人をさらに傷つけることになるのよ。」父「…………。」被害にあった人をさらに傷つけたり困らせる

犯罪被害者やその家族は、犯罪などにより身体を傷つけられたり、家族の命を奪われるといった直接的な被害だけでなく、被害後に生じる様々な二次的被害に苦しめられることがあります。
二次的被害には捜査や裁判などにおける精神的、時間的負担、医療費の負担や職を失うことによる経済的な問題があります。また、友人、近隣の無責任なうわさ話やマスコミによる過剰な取材、報道などがあげられます。
私たちの普段の会話でも、知らず知らずのうちに犯罪被害にあった人などを傷つけることもあります。例えば、ひったくりの被害を受けた人に対して、「夜、一人歩きをするから悪いんじゃないのか」と、被害者本人に落ち度があるような言い方をするのもその一つです。
このような二次的被害を起こさないために、普段から私たちができることは、犯罪被害にあった人の立場に立って、考えることです。「支えてあげよう」という気持ちはとても大事ですが、言葉に出して伝えることだけが手段ではありません。もし、あなたのそばに犯罪被害にあって苦しんでいる人がいるなら、その人のことを思いながらそっと寄り添ってあげてください。それが、どんな一言よりも相手の心を温かく支える大切なことかも知れません。

犯罪被害者等を傷つけてしまう言葉…

不適切な応答例

  • 気を強く持って、前向きに生きましょう。
  • あなた一人が苦しいのではありませんよ。
  • つらいことは早く忘れましょう。
  • あなたは強い人だから大丈夫ですよ。
  • あなたにも悪いところがあったのではないですか。

滋賀県発行「びわさん一家のこころつながるおはなし 人権問題を考える10のストーリーから」

「命の大切さを学ぶ教室」

若い世代に犯罪被害者やその家族の痛みを伝える

少年犯罪被害当事者の会 一井彩子さん

犯罪被害者やその家族を社会で支え、被害者も加害者も出さないために、滋賀県警察本部では、将来を担う中学生、高校生を対象に犯罪被害者などが犯罪から受けたさまざまな痛みを語る「命の大切さを学ぶ教室」を行っています。集団暴行事件で息子さんを亡くされた「※少年犯罪被害当事者の会」の一井彩子さんは、犯罪被害等の現状を多くの人たちに知ってもらおうと全国で講演されています。

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平成7年(1995年)、当時中学3年生(15歳)だった長男が、少年ら4人から集団暴行を受け、病院からの連絡で、何も分からないまま駆けつけました。そこで警察から事態の大きさを知らされ、とても不安な気持ちになりました。
結局一度も意識を取り戻すことなく息子は病院で亡くなりました。息子を看取り、自宅に帰ってきたときに目に飛び込んできたのは、大勢のマスコミ。ワイドショー番組のレポーターからは、勝手に部屋に入り込むなど、プライバシーを無視した過剰な取材を何度も受けました。
当時、ある新聞社に息子の暴行死事件のことを「けんかごっこ」と書かれたことがあります。一方的に暴力を受けて亡くなったのだから報道は間違いだと、息子の同級生たちが抗議してくれましたが、取り合ってもらえませんでした。たとえ事実と異なる情報でもひとたび報道されてしまえば、世間のイメージとして固まってしまう、マスコミ報道の怖さを思い知りました。
また、追い打ちをかけるように周囲の態度や私たちを見る目も冷たくなり、友人から「殺された側にも理由がある」と、言われ傷つきました。
そのような中で、息子の友だちはずっと変わらない態度で私たち家族をそばで支えてくれました。彼らと事件について話し合うことで、「互いの気持ちが通じ合い、思いが伝わる」ことに気づき、亡くなった息子と同じ年代の子どもたちに私の思いを伝えたいと思いました。
私も息子が亡くなるまでは、事件や事故のニュースを他人事で見ていました。自分のように被害者の立場にならないと当事者の気持ちは分からないと思いますが、誰も被害者や加害者になってほしくありません。
私が一番伝えたいことは、「命の大切さ」です。言葉では分かっていても命を大切にするためにどう行動すべきか、私は「人に対して思いやりの心を持ち、人の痛みを理解すること、それが命を大切にすることにつながる」と常に伝えています。自分がされたら嫌なことは、相手も嫌。相手の立場になって考えることができれば、人を傷つける事件が少なくなるのではと思います。

※「少年犯罪被害当事者の会」は、被害者の権利を守ることを目的に未成年の加害者によって殺害された家族により平成9年(1997年)に結成。少年犯罪の実態や被害者の現状を多くの人に知ってもらおうと、全国各地で講演会や集会などの活動を行っています。

「普段から友達との接し方を見直したい」

9月27日、守山中学校(守山市)で行われた一井さんの講演を聞き、生徒たちは、「今までニュースで事件を見聞きしても身近なことに思えず、深く考えられなかったけれど、一井さんのお話を聞いて事件の深刻さを実感しました」、「お子さんを亡くされたことを話されるのはつらいし、勇気のいることだと思います。私も一井さんの思いを人に伝えたい」という感想がありました。
また、「相手の立場に立って一生懸命考え、お互いの命を尊重できるようにすることが大切」、「普段からの友達との接し方などを見直して、助け合っていきたい」など、命の大切さを学ぶとともに、これから自分たちに何ができるか真剣に考える生徒の意見が聞かれました。

犯罪被害に関する相談

  1. NPO法人おうみ犯罪被害者支援センター(犯罪被害者総合窓口) 電話:077-525-8103
  2. 犯罪被害者サポートテレホン(NPO法人おうみ犯罪被害者支援センター内) 電話:077-521-8341
  3. 警察総合相談電話「県民の声110番」(警察県民センター) 電話:077-525-0110

□お問い合わせ

犯罪被害者支援に関するお問い合わせは

滋賀県警察本部警察県民センター

電話:077-522-1231(内2942、2943)

キャッチコピー「母なる湖・琵琶湖。-あずかっているのは、滋賀県です。」