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滋賀県公文書管理・情報公開・個人情報保護審議会の答申(答申(情)第3号~第5号)について

 滋賀県公文書管理・情報公開・個人情報保護審議会(会長 横田 光平)は、滋賀県知事(以下「実施機関」という。)が行った公文書一部公開決定に対する審査請求について、実施機関から諮問を受けておりましたが、本日、実施機関に対して次のとおり答申しましたのでお知らせします。

1 諮問案件

答申(情)第3号(諮問第146号)、答申(情)第4号(諮問第147号)、答申(情)第5号(諮問第149号)

 「優生保護審査会に係る審議録および提出文書等」の公文書一部公開決定に対する審査請求

2 審議会の結論

 

 実施機関は、非公開とした部分のうち、別表1に掲げる部分を公開すべきである。

 ※別表1の内容については、「6 審議会の判断の要旨」または各答申を参照

3 担当所属

 

・健康医療福祉部健康福祉政策課(TEL 077-528-3511)(裁決担当課)

・健康医療福祉部健康寿命推進課(TEL 077-528-3653)(主務課所)

4 審査請求人

(1) 諮問第146

 京都府在住の方

(2) 諮問第147

 愛知県在住の方

(3) 諮問第149

 京都府在住の方

5 事案の概要(審査請求の対象部分)

(1)公開請求のあった公文書の内容
 ア 諮問第146号、第147
 優生保護審査会の審議録や審査会の提出文書
 イ 諮問第149
 優生手術交付金関係文書

(2)実施機関の決定

 ア 公開をしない部分

 (ア) 諮問第146号、第147

 手術対象者の本籍地、住所、氏名、生年月日、発病後の経過および遺伝関係、申請医師の氏名ならびに審査委員の職氏名等

 (イ) 諮問第149

 ()に記載の情報のほか、手術対象者の診察料、投薬料、注射料および診療科目

 イ 公開をしない理由

 個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものに該当する情報であるため(条例第6条第1号該当)。

(3)審査請求の趣旨
 本件処分の取り消しを求める。

6 審議会の判断の要旨

(1) 本件における非公開部分の条例第6条第1号の適用について

ア 条例第6条第1号前段に係る部分

 同条同号前段で規定する「他の情報」とは、原則として、公知の情報、図書館等公共施設で一般に入手可能な情報など一般人が通常入手し得る情報等であると解される。

 しかしながら、個人のプライバシーに密接に関わる事案の場合など、一般人を基準に判断していては、個人の権利利益が十分保護されないことがあり、こうした場合については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、当該個人の関係者であれば入手可能であると考えられる情報についても「他の情報」に含めるものと解するのが相当である。
 本件対象公文書は、特定の者が手術対象者となったという事実に止まらず、手術対象者やその親族の生活状況や病歴、病状にまで及ぶような極めてプライバシー性の高い情報が多数記載されている。こうした情報の内容を考慮すれば、手術対象者やその親族の居住地の近隣住民や職場関係者といった特定の者であれば、これらの者を識別することができるという場合においても、手術対象者やその親族の権利利益を害することがないよう特段の配慮を要すべきものであると言える。
イ 条例第6条第1号後段に係る部分
 同条同号後段の適用については、当該規定は「個人が特定できない情報であっても、公開することで個人の正当な利益を害するおそれがある情報」を非公開とするものであり、一般的には、例えばカルテに記載されている病名、病歴、処置の状況等の情報はこの類型の情報に該当するとされている。ところで、この「正当な利益」とは、本件についてみれば、プライバシーとして法的に保護される利益であると解されるところ、プライバシーは、県民の知る権利や社会の関心等の公益と対抗関係にあるものであって、その内容は対抗する公益との比較衡量において法的に保護される範囲が決せられるべきものであると解するのが相当である。このことを前提とすれば、現在、旧優生保護法に基づく人権侵害の疑いに関する社会的関心が非常に大きく、事実解明が待たれている、あるいは「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(平成31年法律第14号)」が制定されたという状況のもとでは、プライバシーとして法的な保護に値する範囲は一般的な場合と比べて相当程度に縮小することとなるというべく、カルテに記載されている病名、病歴、処置の状況等の情報であるというだけの理由で、個人の権利利益を害するおそれがあるということはできないと判断した。

 

(2) 非公開情報該当性について

ア 滋賀県優生保護審査会委員に関する情報
 当審議会が本件対象公文書を見分したところ、滋賀県優生保護審査会の委員の氏名、職名、住所、電話番号および印影といった情報が非公開とされていることが認められる。
 実施機関は、氏名および職名について、条例第6条第1号ただし書アまたはウの規定に基づき公開される一部の委員を除き非公開としている。しかしながら、国が中央優生保護審査会委員名簿について、その住所を除き、氏名および職名を公表しているように、現在においては、行政機関に設置される附属機関の委員の氏名および職名は慣行として公にされている情報であると考えられることから、当該部分については、条例第6条第1号ただし書アに該当するものであると認められ、公開とすることが妥当である。
 一方で、住所、電話番号および印影については、条例第6条第1号前段の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものに該当するものであると認められ、非公開とすることが妥当である。ただし、住所および電話番号については、その一部において、明らかに審査会委員の所属する組織のものであると認められるものがあり、その部分については同条同号に該当するものとは認められず、公開とすることが妥当である。
 イ 手術対象者およびその親族に関する情報
 当審議会が対象公文書を見分したところ、手術対象者およびその親族について、氏名、本籍地、住所、居所、印影、年齢、続柄、生年月日、職業、生活状況、発病後の経過、病状、遺伝関係等といった情報が非公開とされていることが認められる。
 実施機関は、条例第6条第1号前段または同号後段の規定に基づき、これらの情報を非公開としている。そのうち、氏名、本籍地、住所、居所および印影については、条例第6条第1号前段の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものに該当するものであると認められ、非公開とすることが妥当である。
 一方で、年齢および続柄については、特定の個人を識別することはできないと考えられるため、条例第6条第1号前段に該当するものとは言えず、また、同号後段に該当するような情報でもないことから公開とすることが妥当である。
 次に、生年月日については、(1)アで述べたとおり、近隣住民等の特定の者であれば知り得る情報と照合することで、特定の個人を識別することが可能となり得ることから、生年月日の情報のうち特定の個人を識別することができない「生年」の部分に限り公開することが妥当である。
 そして、職業、生活状況、発病後の経過、病状、遺伝関係等といったその余の情報については、(1)アで述べたとおり、条例第6条第1号前段該当性を検討したところ、特定の個人を識別することができない部分が存在し、当該部分について、(1)イで述べたとおり、条例第6条第1号後段該当性を検討したところ、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるとは認められなかった。したがって、別表1のとおり公開することが妥当である。

 ウ 申請医師に関する情報

 当審議会が対象公文書を見分したところ、旧優生保護法第4条または第12条に基づき、滋賀県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請した医師(以下「申請医師」という。)について、氏名、住所および印影といった情報が非公開とされていることが認められる。(住所については諮問第146号、第147号のみ。)

 現在、医療法(昭和23年法律第205号)第14条の2第1項では、診療に従事する医師の氏名は当該病院または診療所内に見やすいように掲示しなければならないが、申請医師の氏名という個人情報は、同項が掲示を義務付けている単なる特定の医師の氏名という個人情報だけではなく、特定の医師が「優生手術を行うことの適否に関する審査を申請した」という個人情報を含んでいる。申請医師による申請は後述の指定医師による優生手術の端緒となるものではあるけれども、公権力の行使に類比すべき優生手術そのものではない。したがって、条例第6条第1号ただし書アの情報には該当せず、条例第6条第1号前段に該当するものと認められるので、非公開とすることが妥当である。

 エ 指定医師に関する情報

 当審議会が対象公文書を見分したところ、旧優生保護法第5条第2項に基づき、滋賀県優生保護審査会が優生手術を行うべき者として指定する医師(以下「指定医師」という。)についての氏名の情報を非公開としていることが認められる。

 ウと同様に、指定医師の氏名についても、通常の医師の氏名の公開および非公開の検討とは別の検討を要する。ここで、旧優生保護法第10条によれば、「優生手術を行うことが適当である旨の決定に異議がないとき又はその決定若しくはこれに関する判決が確定したときは、第5条第2項の医師が優生手術を行う。」とされており、滋賀県優生保護審査会に指定された指定医師には、この規定に基づき、生殖を不能にする手術を行う権限が付与されることとなる。この権限は、人の身体への医的侵襲を正当化するものであり、しかも正当化される医的侵襲の内容は、生殖を不能にするという身体への不可逆的な重大な侵襲であって、その権利侵害の程度は、公務員が行う一般的な公権力の行使と比較しても甚だしいものがあるといわざるをえない。
 ところで、公務員の氏名は一般に慣行として公にされている情報であり、本県についても同様であることから、条例第6条第1号ただし書アにより公開することが妥当であるが、とりわけ公務員が公権力の行使として事実上の行為により実力行使を行う場合については、行政代執行法(昭和23年法律第43号)第4条や警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)第6条が当該公務員に証票の携帯、呈示を義務付けるように、実力行使を行う公務員の氏名を公にすることが、日本国憲法第31条に規定される適正手続の保障の趣旨からも要請されるものと考えられる。そうすると、行政代執行法第4条や警察官職務執行法第6条の場合以上に権利侵害の程度が甚だしいともいえる旧優生保護法第5条第2項の指定行為を行う指定医師については、公権力の行使を行う公務員と同じく、その氏名が公開されることも是認され得ると考えられる。それゆえ指定医師の氏名については、慣行として公にされている情報であると解し、条例第6条第1号ただし書アにより公開することが妥当である。

 オ 申請医師および指定医師が所属する医療機関に関する情報

 当審議会が対象公文書を見分したところ、ウおよびエで述べた申請医師および指定医師の所属していた医療機関について、名称、所在地、代表者氏名および印影といった情報が非公開とされていることが認められる。

 これらの情報について、実施機関は手術対象者に関する個人情報として条例第6条第1号に該当すると主張しているところ、その点についての判断はイにおいて行ったとおりである。しかしながら、これら医療機関に関する情報については、条例第6条第2号アの該当性についても検討を行う必要があることから、以下、この点について検討を行う。

 これらの情報は、申請医師および指定医師が所属していた医療機関であることを示す情報であるが、旧優生保護法に基づく優生手術については、現在の価値判断からすると、人権侵害行為であったという評価もなされており、当該医療機関の社会的評価への影響が全くないとは言い切れない。しかしながら、条例第6条第2号アの正当な利益の判断に当たっては、県民の知る権利や社会の関心等の公益との比較衡量において法的保護に値する利益であるかを判断すべきである。そうすると、現在、旧優生保護法に関する社会的関心が非常に大きく、事実解明が待たれているという状況にあること、優生手術が行われた当時は当該手術は法律に基づき行われていたことからしても、当該医療機関の正当な利益を害するおそれがあるとまではいえず、条例第6条第2号アに該当するものとは認められない。したがって、公開とすることが妥当である。

 ただし、印影については当該医療機関の内部管理に関する情報であり、公にすることで当該医療機関の適切な事業運営が損なわれると考えられるため、その点において条例第6条第2号アに該当するものと認められ、公立医療機関のものを除き、非公開とすることが妥当である。(公立医療機関の印影については諮問第149号のみ。)

 なお、代表者氏名については、通常、法人登記の登記事項となり、公にされている情報であるから、条例第6条第1号ただし書アに該当するものと認められ、公開とすることが妥当である。

(3) 条例第8条について(諮問第146号、第149号のみ)

 審査請求人は手術対象者と保護義務者の氏名、住所および生年月日以外に、条例の非公開情報に該当するものがある場合においても、それらの情報について同条に基づき公開すべきであるとしている。
 同条の規定は、条例第6条各号(第6条第4号に該当する情報を除く。)の非公開情報に該当する情報であっても、公益上特に必要があると認めるときは当該情報を公開できるとするものである。当審議会では条例第6条各号の非公開情報該当性の有無を検討するにあたり、非公開部分が個人の権利利益の保護のため必要な最小限度のものとなるよう、本件処分において非公開とされた個々の情報について公開すべき公益上の必要性と非公開とすべき個人の権利利益の保護の必要性を比較衡量した上で、以上のとおり判断したところである。そうすると、本件情報公開請求に公益性があるとの審査請求人の主張は首肯し得る面があるものの、先に公益上の必要性をも考慮した上で条例第6条各号の非公開情報に該当するとした個々の情報につき、条例第8条に基づきなお公開とすべき公益上特別の必要があるかを検討したところ、そのような特別の必要は見当たらなかった。それゆえ条例第6条各号の非公開情報に該当せず公開が妥当とした情報に加えて、さらに条例第8条に基づき公開すべきと考えられる情報はないといえる。

7 経過

 (1) 諮問第146

 ・平成2912月5日 公文書公開請求

 ・平成2912月8日 決定期間延長

 ・平成30年1月11日 公文書一部公開決定

 ・平成30年2月27日 審査請求

 ・平成30年4月12日 情報公開審査会に諮問

 ・令和元年8月28日 答申

 (2) 諮問第147

 ・平成30年1月26日 公文書公開請求

 ・平成30年2月7日 公文書一部公開決定

 ・平成30年3月2日 審査請求

 ・平成30年4月12日 情報公開審査会に諮問

 ・令和元年8月28日 答申

 (3) 諮問第149

 ・平成2912月5日 公文書公開請求

 ・平成2912月8日 決定期間延長

 ・平成30年1月11日 公文書一部公開決定(初回処分)

 ・平成30年4月25日 公文書一部公開決定(本件処分)

 ・平成30年5月16日 審査請求

 ・平成30年6月8日 情報公開審査会に諮問

 ・令和元年8月28日 答申

※審議会の審議経過は、別添答申の「審議会(審査会)の経過」のとおりです。

※本件答申を受け、今後、実施機関が審査請求に対する裁決を行うこととなります。

 

8 審議会審査部会特別分科会委員(令和元年8月28日現在)

委員名簿
氏名 役職名等 備考
青山知子 滋賀県商工会議所女性会連合会理事
井上 理砂子 元京都新聞論説委員
高木 啓子 公募委員
中井 陽一 弁護士
中山 茂樹 京都産業大学法学部教授
山田 文 京都大学大学院法学研究科教授
横田 光平 同志社大学大学院司法研究科教授 会長

【参考】滋賀県情報公開条例(抜粋)

(公文書の公開義務)

第6条 実施機関は、公開請求があったときは、公開請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、公開請求者に対し、当該公文書を公開しなければならない。

(1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)または特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
ア 法令もしくは条例(以下「法令等」という。)の規定によりまたは慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報
イ(略)
ウ 当該個人が公務員等
(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人の役員および職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員および職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員ならびに地方独立行政法人の役員および職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職および当該職務遂行の内容に係る部分
(2) 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体および地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報または事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
ア 公にすることにより、当該法人等または当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
イ(略)
(3)(6)(略)

(公益上の理由による裁量的公開)

第8条 実施機関は、公開請求に係る公文書に非公開情報(第6条第4号に該当する情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、公開請求者に対し、当該公文書を公開することができる。

 

お問い合わせ

総合企画部 県民活動生活課 県民情報室
電話番号:077-528-3122
FAX番号:077-528-4813
メールアドレス:kenmin-j@pref.shiga.lg.jp
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