文字サイズ

淡海の人
このコーナーでは首都圏でご活躍中の滋賀県ゆかりの人、滋賀県出身有名人にインタビューしています。

D&DEPARTMENT PROJECT 代表取締役社長 相馬 夕輝さん

相馬 夕輝さん

あいま ゆうき さん

D&DEPARTMENT PROJECT 代表取締役社長。滋賀県野洲市出身。
「ロングライフデザイン」をテーマに、47都道府県に1か所ずつ、デザインの道の駅「D&DEPARTMENT」をつくりながら、観光ガイドブック『d design travel』刊行。ミュージアム・ストア・食堂を連動させた「d47」を渋谷ヒカリエに展開するなど、物販・飲食・出版・観光を通して、47の「個性」と「息の長い、その土地らしいデザイン」を見直し、発掘、紹介する活動を行う。 ’03年に同社に参加。大阪店・東京店店長を経て’09年より現職。

デザインに関わる働き方

私は高校卒業まで滋賀で、大学を大阪で過ごしました。大学は工学部だったので、特にデザインを専攻していたわけではないのですが、シェアハウスの友人が建築系の学部に通っていたこともあり、暮らしの中のデザインには興味を持っていました。

「D&DEPARTMENT」が大阪に店舗を構えたころ、創業者であるナガオカケンメイの、デザインとは形状や意匠のことだけではなく、物の作られ方、売られ方、伝え方といった環境にもデザインがある、という考えに刺激を受け、「デザイナーでない人でも“デザイン”に関わる働き方がここにあるかも」と感じたことをきっかけに、この会社へ参加しました。

「D&DEPARTMENT」は、「ロングライフデザイン」をテーマに時代や流行に左右されない息の長いものやことを紹介する店として世田谷区の奥沢からスタートしました。

大阪、北海道へと展開していく中で、日本各地にその土地ならではの「ロングライフデザイン」があるということに気づき、各地の個性を感じるデザインや、その魅力を発信する拠点として、47都道府県に1店舗ずつ実店舗を構えるというプロジェクトに発展しました。現在、国内外に11店舗あります。また、1県に1冊ずつ、デザイン目線で観光を案内するトラベルガイドブック『d design travel』を制作していますが、その編集部の活動拠点となる「d47」が渋谷ヒカリエにあります。ミュージアム、ストア、食堂を連動させ、47都道府県それぞれの、その土地らしさを感じることができるスペースとして展開しています。

『d design travel滋賀』の刊行

昨年度は、『d design travel』の17都道府県目として「滋賀号」を刊行し、併せて「d47」のミュージアムで展示、食堂では滋賀の食材を使った定食も提供しました。

全国各地をまわってきた編集部が、滋賀に暮らしていると、当たり前のものと見過ごしてしまいがちな、長く続くよいものたちを、デザインの視点で取り上げ、その土地の魅力として紹介した一冊になっています。

かつて自分が県内に住んでいた時は、琵琶湖はきれいな湖という印象はありませんでしたが、滋賀号の制作を機に改めて見てみると、琵琶湖の環境改善への取り組みが積極的に行われてきていることもあり、湖の水の美しさと豊かさに驚きました。約2ヶ月間かけて滋賀に暮らすように県内をグルグルとまわって取材が行われたのですが、山から琵琶湖に水が注ぎ、その山と湖の間に人が住むという、自然の循環の中で暮らす環境は滋賀県ならではの素晴らしい特徴だと思います。

このトラベルガイドの制作は、地元の人たちに参加してもらう公開編集会議(ワークショップ)をまず開催し、そこで挙げられる取材候補地を、編集部でくまなく廻り、掲載地を厳選していく、という作り方なので、滋賀の人達の地元への思いを改めて感じることができました。特にこの滋賀号では、地元の魅力的なものを扱っている若い人たちが、自身のものづくりだけではなく、それを県の財産として、発信することにも意欲的になっていることを知り、今後の滋賀に対しても、期待が膨らんでいます。

これからの滋賀に求めること

滋賀にはいい素材はあるのですが、滞在時間が短い印象があります。夕飯を食べたり、泊まれる、デザイン感度の高い場所が充実すると、滞在時間も長くなり、滋賀の様々な側面を楽しんでもらえると思います。さらに滋賀に興味を持った人が次につながるアクションを起こせる仕組みがあれば、より県の魅力を体感してもらえる機会が広がるのではないでしょうか。

相馬 夕輝さん

滋賀号の発刊を機に、今後は『d design travel 滋賀』編集部によるツアーを企画し、本を読んで滋賀に行きたいと思った人が、その魅力を本に沿って体験できる、といったような道筋を作りたいと思っています。

また、この滋賀号の取材では出会えなかった魅力もまだたくさんあります。これからは、地元の人達が、自分たちの地域の魅力を再発掘・再発信するための一つの手段として、『d design travel 滋賀』を例に第2号、第3号を作ったりと、今回のノウハウを活用していってくださると嬉しいです。

滋賀県の暮らしや産業は琵琶湖と密接につながっています。これからは美しい琵琶湖を目指して、その産業自体にもっと光が当たり、産地に足を運んでみたいと思う人が増えてくると思います。しかし一方で、滋賀の伝統産業の担い手は減っているのも事実です。若い人たちの感覚で、その魅力を発信し、継続させていくには、それぞれの産地の取り組みをサポートする仕組みも必要になります。その中で、デザインという視点は重要であると考えています。

滋賀県は真ん中に琵琶湖があるので、他の県のように情報や人が集まりやすい”都心部”が中心にでき、活性していくというようなにぎわいの作り方は難しいかもしれません。その代わり、その土地柄を生かし、それぞれの地で滋賀らしさを発信している人や場所を巡っていき、その繋がりから熱気が伝播していくような広がり方が滋賀らしい発展の仕方なのではと思います。

* * *

インタビュー・対談 一覧