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淡海の人

このコーナーでは首都圏でご活躍中の滋賀県ゆかりの人、滋賀県出身有名人にインタビューしています。

JX日鉱日石エネルギー株式会社 常務執行役員新エネルギーシステム事業本部長 荒木 康次さん

「第1回NPB12球団ジュニアトーナメントENEOS CUP」
(2005年12月福岡Yahoo!Japanドームにて)

あらき やすじさん

  • JX日鉱日石エネルギー株式会社常務執行役員新エネルギーシステム事業本部長
  • 彦根市城町(旧内船町)生まれ。
  • 彦根市立城西小学校、彦根市立西中学校、滋賀県立彦根東高校卒業
  • 早稲田大学政治経済学部卒業
  • 1978年 日本石油株式会社入社
  • 2003年 広報部長
  • 2007年 執行役員潤滑油事業本部潤滑油総括部長
  • 2010年から現職

◇出身地としての滋賀県~就職まで

子どもの頃は彦根城のお城の中や堀が遊び場でした。夏はセミやトンボを捕ったり魚釣り、冬は堀に張った氷の上で遊んだり、雪合戦に明け暮れました。中学では野球に打ち込み、県大会でベスト8まで進出しました。ポジションは投手でしたが、やはり投手は人一倍努力が必要だと思い、ライバルの打出中学校に勝利するため、練習に明け暮れたのを覚えています。

彦根東高校に入学し、全国大会出場を目指しボート部に入部しました。県内高校のボート部のレベルは高く、特にライバルであった膳所高校や瀬田工業高校などの強豪と競り合いながら、全国大会には届かなかったものの近畿大会に進出するなど実績を残すことができました。そのために必要なのは厳しい練習でした。4人でオールを漕ぐナックルフォアという種目でしたが、松原港湾から多景島や竹生島まで往復してフラフラになる部員が出ましたし、アップ・ダウンの厳しい彦根城の天守閣を登り下りする5周のランニング(今は禁止されているそうですが)、試験期間中は練習が禁止となるため昼休みのわずかな時間を利用した集中筋力トレーニングで酸欠状態になるなど思い出はたくさんあります。その頃につけた体力のおかげで、小学校4年生から今日まで、仕事や学校を病気で休んだことが一日もないのが自慢です。大学は一転、邦楽に興味を持ち、尺八のサークルに入って、無の境地について考えたものです。

◇日本石油に入社してから

当時の入社試験にあった体力検査では、肺活量は6,000CCを超え、握力75kg強、背筋力300kg弱を出すなどダントツで1番でした。最初の配属は、第2の故郷となる北海道の室蘭です。労務管理の事務ワークでしたが、同じ事業所の500人を相手に腕相撲を挑み、負けたのは1人だけです。亡くなられた室蘭出身の大関・北天佑関ともお手合わせしたことがあります。開拓者精神豊かでフレンドリーな人たちと大自然に囲まれた楽しい4年間でした。

その後は首都圏での勤務が中心でしたが、横浜の根岸製油所に勤務していた頃、事業所のレクレーションで20kgの土嚢(どのう)を長時間持ち上げ続ける力比べ大会があり、準優勝しました。賞品としてお米をもらい、応援に来ていた子供に「こうやって稼ぐんだぞ!」と自慢できたことを覚えています。

現在の勤務先であるJX日鉱日石エネルギーは、入社以来13社が合併・統合してできた会社ですが、最初は1999年の日本石油と三菱石油との合併でした。当時、本社で人事課長をしていましたが、とても多忙で、合併の準備がはじまった1998年秋からの1年間、350日以上出勤し、30日くらい会社に泊まり込みました。新会社発足時には、「全ての社員に適材適所を確実に準備し、即日から業務が滞りなく速やかにできるようにしておかなければならない」との思いで全社員の人員配置に全力を傾注しました。人事は最も長く11年間担当しました。

◇エネルギー問題の解決に向けて

昨年3.11の大震災は、石油業界にいる私にとって忘れられない日です。ガソリンや灯油が不足しましたが、全社をあげて供給を円滑にできるように前線部隊をサポートしました。今、エネルギー問題が日本の大きな課題となりました。私は新エネルギーシステム本部長として、震災を契機にこれまでのエネルギー政策の基本理念である3E(安定供給・経済性・環境適合性)に、S(安全性確保)を加えた『S+3E』に取り組んでいます。

そのためには、環境保全、地域の雇用などのメリットもある自立(=大規模停電時でもエネルギー供給が可能)・分散(エネルギーは使うところで作る)型のエネルギーシステムにシフトする必要があると考えています。また、再生可能エネルギーの普及促進にも貢献できます。電力の消費地から遠く離れた場所で発電し、長距離を送電する従来の大規模集中型のシステムでは、エネルギーのロスが大きいのです。

具体的には、家庭用のエネルギーを「燃料電池」・「太陽電池」・「蓄電池(リチウムイオン電池)」の電池3点セットでシステム化することによって、個人の家を電気と熱が100%自給自足でき、カーボンフリーとなる『創エネハウス』とすることです。わが家で発電し、熱と電気を有効に活用すれば「家庭用ベース電源」をこれまでの原子力発電などから代替することができます。昼間しか発電できず、天候に左右される太陽光発電だけでは、24時間必要となるベース電源にはならないのです。

さらに、余剰電力を、ICT技術を活用しつつ地域内で融通しあうことで、地域全体の電力を自給自足できる新しいエコタウンが実現します。宮城県の震災復興計画では、電池3点セットを活用したエコタウンづくりを目指して、自立・分散型エネルギーの普及を促進することになっています。

家庭用と工業用のエネルギーは別の解決策が必要です。エネルギー問題は、大規模発電と分散型発電の最も適切な組み合わせを考えるベストミックスを追求することが重要なのです。これらの取り組みによって、電力需給を自律的に調整し、省エネルギーやコスト削減を目指す「スマートグリッド」の世界は、2030年あたりに実現すると考えていましたが、大震災でエネルギーのパラダイムシフトが起こり、もっと早く到来するようになるだろうと考えています。

◇滋賀県の将来像と提言

北九州水素タウンや横浜スマートシティープロジェクトなどで「スマートコミュニティ(エネルギーを自給自足する街区)」の実証実験が始まっています。また、お隣の岐阜県では、災害時に孤立が不安視される「中山間地の古民家」や中心部から離れた商業施設としての「道の駅」に自立・分散型のエネルギーシステムを導入するなど様々な取り組みが各地で始まっています。

滋賀県は、家庭用太陽光発電の普及率では全国でも上位に位置しています。琵琶湖を県民の知恵と工夫と努力で汚染から守った、進取の精神に富んだ環境意識の高い県民ですから、エネルギー問題に取り組む先進県として頑張ってもらいたいですね。小水力発電など「水資源」をエネルギーに転換する技術も進んでいます。行政にお願いしたいのは、小水力発電、太陽光発電、燃料電池、蓄電池などを装備した、エネルギーの地産地消を実践する創エネモデルハウスや創エネモデルタウンを率先して作り、地域の皆様に環境にやさしい家庭用のエネルギーシステムの理解をしていただけるような環境づくりです。環境意識の高い県民自らが、新しい家庭用エネルギーシステムの普及に取り組むような流れを作っていただければ、琵琶湖と共に生きる滋賀県が世界最先端の環境エリアになっていくだろうと夢見ています。「燃料電池」・「太陽電池」・「蓄電池」の組み合わせが、エコカー1台分くらいの価格になる時期もそう遠くはなく、一気に普及する日がまもなくやってくるでしょう。


今回は、JX日鉱日石エネルギー株式会社 常務執行役員新エネルギーシステム事業本部長 荒木康次さんにお話を伺いました。(2012年4月) 

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