滋賀県経済振興特別区域認定審査・評価委員会(第2回)議事録

滋賀県経済振興特別区域認定審査・評価委員会(第2回)の会議概要

1.滋賀県経済振興特別区域計画の認定審査について

日時:平成17年5月17日(火曜日)午後3時〜午後5時

場所:龍谷大学瀬田学舎RECホール210会議室

■ 湖西里山エコツーリズム特区

<特区計画の意義とポイント>

  • 高島市は平成17年1月に高島郡6町村が合併し、県下最大の面積になった。森林面積が369.68k平方メートルあり、里や湖も含めた自然の恵みと固有の歴史風土を持つ湖西地域の特性を活かし、エコツーリズムによる地域振興や雇用創出を計画している。
  • 平成16年6月、環境省よりエコツーリズム普及のモデル事業実施地区に選定された。観光客参画による里山維持・管理の仕組みとして里山文化と観光客が共存するルール作りを目指しており、最近では自然と融合した琵琶湖岸の暮らしが多くの人の共感を呼び、観光客も徐々に増えつつある。

<推進協議会の設立と今後の取り組み>

  • 平成16年度はエコツーリズム普及のための仕組みづくりを行い、17年度はエコツーリズム推進のための協議会を設立してモデル的な事業に取り組み、18年度は事業化に取り組む。
  • 里山を自然体験の場として、ボランティアガイドの育成を図るとともに、ヨシ群落やかばた(川端)の保全の一環としてヨシ笛作り体験等をエコツアーのメニューにする。
  • 湖国百選に指定されている市内7ヵ所の名勝のルート化と誘客に努める。
  • 環境に配慮した農林漁業体験や菜の花の観光利用等により、資源循環サイクルを推進する。また、雑穀生産農家と都市住民との交流により、食文化の育成、元気のある農業の発展に努める。

[質疑応答]

●具体的な事業内容と期待する効果

委員:高島市が特区として行う具体的な事業は何か。

申請者:湖国百選に選ばれた7ヵ所、歴史文化遺跡等を具体的にルート化する。地域通貨の活用によって観光振興による経済的効果を目に見える形にしたい。現在、年間280万人の観光客が訪れ、50〜60億円の収入があるが、特区によって300〜350万人を集客したい。里山文化と観光の共存は、たとえば、棚田オーナー制度を広げて、多くの人に自然の循環を体験してもらいながら自然を守ることの大事さを知ってもらい、湖西の自然そのものも保全する。

委員:特区でなければならないポイントは何か。

申請者:国や県の転作制度で菜の花が増え、「菜の花祭り」を開催したが、今年度で制度がなくなるので、高島地域の観光産業における菜の花の必要性を経済振興特区として制度的に認めて欲しい。ヨシの保全についても財政的な支援が欲しい。エコツアーのルートを開発できる人材も派遣して欲しい。

●経済振興特区計画としての問題点と課題

委員:経済振興特区申請の計画書としては、事業経営という視点が不足している。

申請者:その点については、いろいろなルートをマップ化した中で経済的な部分にも取り組み、地域特産の食事・土産など付加価値的なものを作りたいと考えている。

委員:「標榜する里山エコツーリズムを創出するにはどのような人の手がどのくらい必要か」という大事なエッセンスがない。それが明確になれば、具体的な戦術の重点化が図れると思う。

委員:ヨシをヨシ細工の産業に結び付ける、「菜の花観光」をイベントにする等、経済振興の計画を具体的に示して、特例や予算や人材を求める形にすると経済振興特区に乗りやすいと思うので、皆さんの思いをビジネスに翻訳できるプランナーやプロデューサーを導入した方がよい。

■ 小舟木エコ村特区

<計画の背景>

  • 小舟木は近江八幡市のキーワードである「環境・情報・協働・文化」を実践するステージであり、県の中央に位置し、圏域内の経済の波及効果の優位性が高く、ポテンシャルがある。そのため、小舟木エコ村では産官学民協働による新しいまちづくりの形態を模索し、地域資源を活かした新しい産業基盤の創出を図り、新たな経済振興、社会システムの構築を目指す。

<計画の概要と期待される効果>

  • 地域経済振興、環境ビジネス創出、環境共生を目指し、暮らしを背景に、環境産業、農林業、コミュニティビジネス等の振興を図る持続可能なまちづくりを目指す。<1>「小舟木エコ村整備事業」は県産材を使った363戸の環境共生住宅を建設し、林業の振興や森林管理の健全化を図る。また、太陽光パネル等を設置して自然エネルギー関連産業を振興し、地元のヨシ等を使い地場の匠の技術を結集した住宅産業も構築する。<2>「研究研修施設整備・運営事業」は研究研修施設に先駆的な環境技術を導入したモデル設備を設置し、その効果を住民が体感できるように整備する。<3>「コミュニティビジネス事業」は農
  • 2003年4月に「小舟木エコ村推進協議会」を設立し、今年度から用地取得等に着手して約5年で「エコ村」の造成、整備を進める。そのために、経済振興特区制度により、新しい環境産業、コミュニティビジネスの創出、起業家の育成、地場の素材を活かした産業の振興等に向けた税制、財政の特例措置を期待している。

[質疑応答]

●研究施設と住宅の関係

委員:住宅、研究施設、コミュニティビジネスという三つのポイントの関連を明確にすべき。

申請者:「エコ村」は新しい環境共生型のライフスタイルを実践する場であり、その中で新しい環境ビジネスの技術を生み出す。中央に整備する研究施設(ECI)において、世界の優秀な研究者とも連携をとって、成長産業の研究をする。それを活かしたライフスタイルを実践する場として363戸の住宅がある。

委員:「エコ村に住む人が実験に参加する」という契約書を結ぶ等の手法を取り入れないと、普通の地域開発との違いが分からない。

申請者:具体的なプロジェクト毎に、実験に参加してもらう居住者と契約する形になると思う。

委員:エコ村に住むメリットは何になるのか。

申請者:実験で最先端の技術を使うとことによって生活コストが下がる可能性がある。

●経済特区にする理由付けについて

委員:ここを特区にする理由は何か。「必ず実験に参加する」という協定があって、300戸が一斉に協力してくれる実験場になるという計画であればおもしろいと思う。

委員:経済振興の側面が見えにくい。エビデンスが見えない。滋賀県の経済に貢献する数字が見える計画にしてほしい。

申請者:多くの人が望む環境との共生を具体的に新しいマーケットとして生み出すことが経済振興にとって重要と考えているが、ますは、ここで実験的に成り立つことを示すことが経済振興につながり、より広い地域に経済的効果を及ぼしていくと考えている。新しいマーケットなので、その規模を具体的に算定することはできない。

■ 滋賀統合物流センター(SILC)特区

<米原市の立地と鉄道輸送へのモーダルシフト>

  • 米原市は日本のほぼ中央に位置し、近畿・東海・北陸はもちろん関東以北や中国地方以西にも移動しやすい立地状況にある。また、米原駅、高速道路の米原インターチェンジもあり、敦賀港、四日市港、名古屋港、大阪港にも近いなど、物流事業が展開しやすい。さらに、JR貨物ターミナルの建設が決定しており、米原市の物流ポテンシャルはますます高まりつつある。
  • 物流効率化を目指す滋賀統合物流センター(SILC)は、環境負荷削減の観点からJR貨物による鉄道輸送を重視しているので、米原ターミナルに隣接した地区に立地する。

<SILCの事業内容と効果>

  • 従来の物流システムは、倉庫・流通加工場・荷捌き用上屋等が分散し、積載効率の低いトラックを使う非効率なものなので、これを改善するため、各機能を集約した高効率の物流施設を立地する。
  • 物流系教育機関の講座開講によって物流人材を育成、供給し、若者の地域定着化を図る。
  • 物流の保管機能等を活かした防災備蓄事業の展開も予定している。
  • 効果としては、年間100万t超、操業開始15年後には年間320万t超の荷物が集まると予測。また、SILCによって20年間で約100億円の地方税が期待できる。また広域的なCO2の削減や交通渋滞の緩和、さらには、企業集積も期待できる。
  • 建物等の資産取得にはSPCが活用される。SILC推進コンソーシアムの民間企業を中心として、SPC及びSILC運営会社が数ヶ月のうちに立ち上げられ、法人化される。

[質疑応答]

●特区のポイントとモーダルシフトの可能性について

委員:特区にする必要性は何か。

申請者:産学官民金(銀行)の連携強化、特区認定という対外的なアピールによる経済振興の推進、さらに県の助成を受けることでイニシャルコストを下げる等が挙げられる。また、用地が農地なので、県の協力がなければ手続きが進まないところがある。特区に認定されて、県の協力を得て手続きをできるだけ早くクリアしたい。

委員:既存の物流施設が小規模分散立地しているために非効率になるという課題を解消するのがこの計画であるとすると、この地域に物流施設が集約化され、物流の効率化が図られれば、特区として全県的にその効果が及ぶと思う。ただし、モーダルシフトはコンソーシアムでできるものなのか。

申請者:可能である。環境問題で先進的な企業ほど鉄道輸送を推進したいという背景がある。また、トラック業界は高速道路の90km/h規制で輸送が間に合わなくなり、ドライバーが過度な労働を強いられていることからもモーダルシフトが期待されている。米原は大阪や京都よりも低廉かつ効率的なモーダルシフトが推進できる。さらに、薬事法が改正されて大企業から北陸地方の製薬メーカーに製造委託が進むと、雪の問題から鉄道輸送が重要になり、中京・名古屋、大阪圏を狙える拠点として米原にモーダルシフトを推進できるようなバックグラウンドが整うと感じている。

委員:SILCへの集約後の既存施設の跡地利用で、地域に還元するプランがあるとさらに見えやすい。

2.滋賀県経済振興特別区域計画の実施状況評価について

■ びわ湖南部エリア新産業創出特区

<大学の知的資源の活用>

  • 昨年度、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業に採択された3大学連携によるマイクロ体内ロボット開発事業の開発成果をもとに、ユーザー会議を開催したところ、新事業展開を希望する26社から申し込みがあった。今後の産学連携促進による新産業創出のモデルケースとして期待される。
  • 昨年8月、立命館大学びわ湖草津キャンパス内に立命館大学BKCインキュベータがオープンし、全30室中28室が入居したが、入居企業20社のうちの半数以上が、将来特区エリア内での立地意向を持っている。
  • 大津市と草津市では、産学連携コーディネーターが地元企業と大学の連携の掘り起こしや技術的課題解決のための相談事業を実施している。昨年度は141社を訪問し、2社が産学連携を実現した。
  • びわ湖南部エリア大学発新産業創出推進協議会では、11月に大阪で産業展を実施するなど、販路開拓支援のための展示会や産学交流を促進するためのフォーラムを開催した。
  • インキュベーション施設入居企業や起業家育成のために、平成16年10月から毎週木曜日に立命館大学でウィークリーセミナーを実施している。

<特区事業の実施状況と平成17年度の事業計画>

  • 昨年度、新産業創出促進のための支援メニューを用意し、2社がA大学と産学連携で研究開発を行い、1社がB大学と産学連携で試作品開発を実施した。
  • 企業創業数は5年間の目標33社に対して、昨年度9社が創業したが、企業立地や、新規雇用者の増加はこれからであり、今後の課題となっている。
  • 平成17年度も産学連携による研究開発費や、中小企業の展示会等の出展費用を補助する。また、立地の補助制度を広く周知し、将来特区エリアで立地意欲のある企業を掘り起こして産業クラスターの形成を図る。これに合わせて、ウィークリーセミナーを支援し、将来の起業家を育成する。このように、企業の成長段階に応じた支援を重点的かつ集中的に講じ、ベンチャー企業を生み出し、発展させ、市の資源を活用した新産業を創出していく。

[質疑応答]

●企業立地における問題点について

委員:立地企業0は何が問題なのか。

申請者:これから本格的に育っていくと考えている。また、立地場所として適地を結びつけることが大事だと思っている。

●企業誘致の取り組みの必要性について

委員:経済振興特区は企業の誕生と発展を内発的な形で考えがちだが、4〜5年のタームで一定の企業に立地してもらうため、海外企業の誘致も必要だと思う。琵琶湖などいろいろな資源があるので、それを活かした誘致の取り組みも検討してほしい。

委員:滋賀県の1人当たりの所得は大阪を抜いている。新しい滋賀のイメージ転換も必要である。

■ 長浜バイオ・ライフサイエンス特区

<全体の実施状況と平成17年度特区計画事業>

  • 昨年12月に長浜市バイオ産業振興協議会が設立され、協議会や各組織の運営委員会を開催して、特区計画全般やインキュベーション施設について協議していただいた。長浜バイオ大学大学院設立については、学内に検討委員会が設置され、今年度にも文部科学省と調整される。併せて大学では学部の増員の申請も行われると聞いている。さらにバイオビジネス創出支援機関の立地促進については、市として具体的な支援を検討する。
  • 今年度、国や県の支援でインキュベーション施設を整備することになり、現在、実施設計中で、来年3月に完成予定である。全17室だが、予備調査では20数社から関心が寄せられており、10社程度は高い確度で入室すると考えている。
  • 長浜バイオ大学から大学発ベンチャーが3社起業する予定であり、長浜バイオ大と企業が連携して行う研究開発事業を支援する。このベンチャー3社はインキュベーション施設に入居予定である。
  • バイオ関連企業立地促進事業では、アンケート調査、テレマーケティング調査を実施し、まだ立地の確約はないが、46社から反応があった。今年度はその中から企業をピックアップして積極的な企業訪問とセミナー等を行い、企業立地を目指す。
  • バイオ関連公的研究機関の立地促進事業はまだ立地がないので、国や県に立地の要望を行う。
  • 今後の展開として、長浜バイオ大学がアジア圏の大学と行っている学術交流事業を産業交流につなげたい。

[質疑応答]

●長浜バイオ大学の状況

委員:今、長浜バイオ大学の学生はどのくらいか。

申請者:今年度は700名を超えており、学部の増員も考えられている。35〜36%が地域に居住し、残りの約7割は近隣から通学している。

委員:学生にとっての利便性等居住環境を高めることも大事。

委員:大学に続くバイオのシンボル的なものがつくれるとよい。

申請者:今は、大学の3回生が再来年卒業する時点で大学院をつくれるように尽力している。

●企業立地における問題点

委員:立地企業がないことの要因をどのように考えているのか。

申請者:大学のシーズが地元の企業に十分に周知できていないことが考えられる。学内の産学連携事業センターに人材を1人配置し、企業回りをしてもらう体制が整備された。ネットワークを早くつくりたい。

3.経済振興特別区域計画の認定審査

委員:ヒアリング審査の結果を踏まえると、「滋賀統合物流センター(SILC)特区」は推薦できる。

委員:「湖西里山エコツーリズム特区」は中身を具体的にすれば実るものがあると期待する。そのためには、優れたプロデューサーを入れると良くなると思う。観光開発は、遠くから来る人にとっての魅力が必要である。日本中で行われている「観光開発」があまり成功していないのは、地元の人が見て良いものを外の人に押し付けようとするためである。つまり、全国から「その地域のそれ」が好きな人を集めるようなプロジェクトにしなければならない。そういうものをしっかりと創れるプロデューサーを1人雇って、三つくらいの魅力を取り上げるべきである。里山は日本中にあるので、たとえば「菜の花畑の月見」など、イベント化も考えなければならない。

委員:「小舟木エコ村特区」は、住む人と実験協力協定を結んで、このエリアを一つの実験場にするとおもしろいと思うが、人が来て、住むメリットをどう位置付けるかが課題である。場合によっては、東京や大阪に家を持っている人と家を交換して団塊の世代を呼ぶことも考えられる。

委員:それでは、今回は「滋賀統合物流センター(SILC)特区」を特区として推薦する。

キャッチコピー「母なる湖・琵琶湖。-あずかっているのは、滋賀県です。」