「わからない」だから「かわらない」そんなあなたの人権意識、「かわりたい」だから「わかりたい」へチェンジしませんか?あなたの「わかりたい」を応援したい。人権施策推進課では、そんな思いで毎月1日に「じんけん通信」を発行しています。
ブラウザの「お気に入り」に入れていただければ感激です。
これまでに発行した「じんけん通信」は、バックナンバーからご覧いただけます。
令和元年(2019年)12月(第140号)
毎年12月4日から10日は「人権週間」です。人権とはすべての人が生まれながらに持っている、幸せに生きていくための権利です。同週間中は、県内の各地で啓発活動が実施されます。この機会に一人ひとりの個性が尊重され、みんなが明るく暮らせる社会をつくるために、身近なことから人権について考えてみませんか。
今回のじんけん通信は、今年の4月1日に施行(10月1日から全部施行)した「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」に関連して、障害の有無に関わらず誰もが暮らしやすい社会を築くために大切なことについてお伝えします。
また、県広報誌「滋賀プラスワン」11-12月号に掲載した特集記事「性のあり方は人それぞれ」でお話を伺った龍谷大学とひこね繊維協同組合の取り組みや思いについて、記事ではお伝えしきれなかった内容を含めてご紹介します。
平成28年4月に施行された障害者差別解消法の実効性の補完などを目的に、本県では「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」を制定しました。この条例のポイントは3つあります。
1.「障害の社会モデル」の考え方を定義
日常生活や社会生活で、障害のある人にとって何がバリア(障壁)になっているかを周囲の人が理解し、配慮することで、バリアを取り除くことができます。
この考え方を「障害の社会モデル」といいます。
障害のある人は、日常生活や社会生活を送る上で例えば次のようなバリアによって生活がしにくくなっています。まずは私たち一人ひとりができるところからバリアをなくしていけるといいですね。
2.「合理的配慮の提供等」を義務化
障害者差別解消法では、民間事業者の「合理的配慮の提供」は努力義務ですが、条例では、差別解消の取組をより進めるため、義務としました。
また、条例では個人に対しても「差別の禁止」と「合理的配慮の提供」を義務としています。
「合理的配慮の提供」とは、障害のある人が困っているときに、負担が重くない範囲で工夫や配慮を行うことです。すぐにできないと判断するのではなく、まずはどうすれば対応できるか考えてみましょう。
どのような合理的配慮が必要かは、障害の特性や状況などによってさまざまです。以下のページに合理的配慮の例が掲載されていますので参考にしてください。
3.相談・解決の仕組みを整備
さまざまな相談に幅広く対応できる専門性を持つ「障害者差別解消相談員」と、自分で相談することが難しい障害のある人の代弁者となる「地域アドボケーター」が設置されました。さらに、相談では解決しない場合はあっせん・勧告・公表を行うことができる仕組みが整備されました。
障害を理由とする差別を受けたり、合理的配慮の提供が受けられなかったときは、「障害者差別解消相談員」に相談してください。
【障害者差別解消相談員】
電話077-521-1175 / FAX077-528-4853
「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」についてさらに詳しく知りたい方は、以下のホームページをご覧ください。
●滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例について(滋賀県HPへリンク)
本県では、さまざまな人権に関する悩みに対して解決のお手伝いができるよう、国、県、市町などの53の関係機関で「滋賀県人権相談ネットワーク協議会」を組織しています。この協議会では参加機関相互の連携を深め、相談対応実務のスキルアップを図るため、合同研修の機会を設けており、今年度第2回目の講座を11月1日に開催しました。
滋賀県発達障害者支援センターの桜井さんと大津市発達障害者支援センターかほんの小﨑さんを講師に迎え、発達障害の特性などについてご説明いただいた後、参加者が実際に発達障害の人の物の見え方を体験したりしました。
講座は主に以下のような内容でした。
<発達障害の特性>
以下のことが不自然に多い・強い傾向がある。
・自閉症関係:社会性、コミュニケーションの苦手さ、音やにおいなどの感覚の独特さ(過敏など)、こだわり
・ADHD(注意欠如多動症):不注意、多動、衝動性
・LD(学習障害):聞く、話す、読むなど、特定のものの習得と使用への困難
・一点に集中する、部分的にはよく見るが、全体を見るのは苦手。
<コミュニケーションのポイント>
・ゆっくりと端的な言葉で話す。
・紙に書いたり、画像を使ったりして、目に見える形で表しながら話す。
・暗黙の了解になっているようなことを、しっかりと分かりやすく説明する。
※今回ご紹介している特性やコミュニケーションのポイントはほんの一部です。特性のあらわれ方や程度は人によりさまざまなので、その人にあったコミュニケーションが必要です。
発達障害は目に見えない障害であり気付きにくいため、もしかすると身近に生きづらさを感じている人がいるかもしれません。
誰もが生きやすい社会になるよう、まずは障害を知るところから始めてみませんか?
発達障害については、県広報誌「滋賀プラスワン」平成31年(2019年)3・4月号でも特集しています。ぜひご覧ください。
11月1日に発行しました県広報誌「滋賀プラスワン」11-12月号では、「性のあり方は人それぞれ」と題して、多様な性のあり方についての理解を深めていただくための記事を掲載しました。
今回の記事では、多様な性が尊重される社会の実現に向けた県内の取組事例として、龍谷大学とひこね繊維協同組合の2つの事例を取材しました。以下では、「滋賀プラスワン」には記載しきれなかった内容も含め、それぞれの取組についてご紹介します。
●ケース1 龍谷大学(龍谷大学宗教部課長 安食 真城(あんじき しんじょう)さん)
◆悩みを抱えた人がいることを知る、それが第一歩
数年前、学内で学生・教職員を対象としたアンケートを実施した結果、性のあり方で悩んでいる人が実際にいること、また性の多様性についての学内の理解が必ずしも十分ではないことが分かりました。そのため、平成29年に「性のあり方の多様性に関する基本指針」を策定し、誰もが安心して過ごせるキャンパスの実現を目指すこととしました。
まず、学生・教職員を対象に、性の多様性をテーマとした講演会や研修会を開催し、学生名簿や証明書などへの性別の記載も取り止めました。また、性別にかかわらず誰でも利用できる「だれでもトイレ」も整備しています。
これ以外にも、当事者である卒業生の協力を得て、体験談集「大学生のためのLGBTQサバイバルブック」を作成していますし、性のあり方について悩みを抱えた人が誰でも気軽に参加できる茶話会「SOGIカフェ」(そじかふぇ)も開催しています。
※SOGI=性的指向・性自認(Sexual Orientation、Gender Identity)
今行っている様々な取組を続けることが必ずしも正解であるとは思っていません。まだまだ課題はありますが、学生や教職員の意見も聞きながら、相談しやすい雰囲気づくりを心掛け、気付いたことから変えていくことで、誰もが安心できるキャンパスにしていきたいと考えています。
※龍谷大学さんの取組の詳細については、下記ホームページをご覧ください。
龍谷大学HP「性的指向、性自認等に関する本学の対応について」(外部リンク)
●ケース2 ひこね繊維協同組合
(理事長 宮脇 國雄(みやわき くにお)さん)
(事務局長 野村 和行(のむら かずゆき)さん)
◆本当に悩んでいる人たちに寄り添っていきたい
彦根の地場産業である女性下着の製造ノウハウを生かして、新たにトランスジェンダー向けの下着を開発し、今年8月から販売を開始しました。
開発にあたっては、身体の性に違和感があって悩みを抱えている方の意見を聞きました。一人ひとり異なる悩みにできる限り対応できるよう、試作を何度も繰り返し、試行錯誤を重ねながら、締め付け過ぎで苦しくならない、着け心地の良さを実現しました。
◆開発したインナー(FTM向け)
胸の膨らみが目立たないよう、胸以外の箇所にパットを足すなど工夫。他にMTF向けのショーツも開発されている。
※FTM=「身体の性」が女性で「心の性」が男性の人(Female To Male)
※MTF=「身体の性」が男性で「心の性」が女性の人(Male To Female)
現在、開発した下着の販路の開拓に取り組んでいますが、一般の小売店ではなかなか取り扱ってもらうことができず、苦労しています。では、通信販売であればよいかというとそうでもなく、購入を希望されている方からは「自分がトランスジェンダーであることは家族にも言っていないので、自宅では受け取りたくない」といった声も聞いており、難しさを感じながら取り組んでいます。
今回の下着の開発にあたって、トランスジェンダーの方に様々な話を伺いましたが、性別適合手術やホルモン療法は体の負担が大きく、大変であるとの声も聞きました。
自分たちの開発した下着を身に付けることで、悩みを抱えた方の心が少しでも落ち着き、楽になってもらえればと思っています。これからも当事者の気持ちに寄り添いながら、デザインの工夫や対応サイズの拡大などにも取り組むことにより、より多くの人に身に付けてもらえる製品を開発していきたいと考えています。
●性の多様性に関するその他の啓発記事のご案内
「ふれあいプラスワン」や「じんけん通信」では、これまでも性の多様性に関する啓発記事を掲載しています。まだお読みでない方は、ぜひチェックしてみてください。
◆ふれあいプラスワン
ありのままのキミがいい!誰もが自分らしく生きるために多様な性について考えよう
宝塚大学看護学部教授 日高 庸晴さん(H29年3-4月号)
◆じんけん通信(H30年6月号、7月号)
多様な性について考えよう[前編] / 滋賀県人権相談ネットワーク協議会 講演録
多様な性について考えよう[後編] / 滋賀県人権相談ネットワーク協議会 講演録
明治大学文学部心理社会学科 准教授 佐々木 掌子さん、立命館大学学生サークル「color-free」
10月13日に大阪市内で開催された(12日は台風により中止)「レインボーフェスタ!2019」に龍谷大学のブースが出展されていました。
ブースには写真のようなボードが設置され、4つの「性の要素」が示されていました。ブースに来られたみなさんは、自分の性について考え、それぞれにシールを貼っておられました。
「性」と一言で言っても、「身体の性」だけでなく、「心の性」や「好きになる性」など、私たちの「性のあり方」はさまざまです。
性が多様であることは「性の構成要素」から見るとわかりやすくなります。要素の組み合わせはさまざまであり、また、要素一つひとつに濃淡があります。ここでは構成要素の内の4つをご紹介します。
◆身体の性(生物学的な性)
性染色体(XX、XYなど)、内・外性器の態様など、客観的な事実をもとに生物学的な性を決定します。(染色体や性腺、内・外性器の態様などには、様々な状態があります。)
◆心の性(性自認)
自分が自分の性をどのように認識しているのか、どのようなアイデンティティ(自己同一性)を自分の感覚として持っているか、ということです。
◆好きになる性(性的指向)
自分が恋愛・性愛の対象とするのは、男性なのか女性なのか、あるいは男性と女性の性別に関わりなく性的魅力を感じ、恋愛対象とするのかということです。
◆性別表現(性表現)
自分の性をどのように表現するかということです。性自認と性別表現が一致するとは限りません。外見(言葉づかいやしぐさ、服装など)からは性を判断することはできないのです。
「性は多様である」ことを知ることは、私たち一人ひとりが自分らしく生きていくためにとても大切なことなのです。
誰もが自分の性のあり方を尊重され、自分らしく生きることのできる社会に、みんなでしていきたいものです。
※参考:公益財団法人人権教育啓発推進センター発行 「みんなが自分らしく性の多様性を考える性的指向・性自認・性別表現」
ぼくのポスターは見てくれたかな!?
一人ひとりのいろんな個性、
お互いの大切な個性を認め合って、
みんなが笑顔で過ごせるまちにしていきたいのだー!